見出し画像

孫子の兵法を卓球にフル活用しよう! ⑩「地形」篇 ~位置関係を知れ~【前編】

地形篇では、

「相手との位置関係を知れ!」

「自滅するな!」

といったことが語られています。



位置関係のパターンを知ることで、どんな位置でも的確に戦えるようになります。

あらゆるパターンに対してどう戦うのか、知っておきましょう!



6種の位置関係を知れ!

「地形には通ずる者有り、挂かる者有り、支るる者有り、隘き者有り、険しき者有り、遠き者有り。」

戦場の地形には、四方に通じ開けたものがあり、途中に障害があるものがあり、脇道が分岐しているものがあり、道幅が急に狭まるものがあり、高く険しいものがあり、両軍が遠く離れているものがある。

卓球における、自分と相手の位置関係で、特に頻繁に出てくるものを6つ紹介します。

それぞれの位置関係でどう戦うか、覚えておきましょう。


「我以て往く可く、彼も以て来たる可きは、通と曰う。」

自軍からも行き易く、敵軍からも来易い土地は、「通」と言う。

お互いの得意が重なると、そこでのラリーが多くなります。



・お互いにバック対バックが得意
・お互いにフォアクロスの打ち合いが得意
・お互いに下回転の展開が得意
・お互いに上回転の展開が得意



こういった場合、お互いにそのラリーをやりたがるでしょう。



このときに、まず考えるべきは、

「先手を取ること」

です。



フォアクロスで打ち合いたい場合、先にドライブを打った方、あるいは、持ち上げさせて上から叩いた方が、有利になるでしょう。



お互いに得意である以上、有利な展開にできるかがめちゃくちゃ重要です。

なので、先手が取れるサーブレシーブを持っておくことは必須です。

例えば、逆横系のサーブを、フォア前かフォローハーフロングに出せると良いでしょう。



しかし、必ずしも先手が取れるわけではありません。

どうしても相手に攻められることもあるでしょう。

どうしても点が取れない場合は、もうバック側に行くしかありません。

「俺はフォアクロスが得意なんだから、いずれ勝てるはずだ!」

と、意地を張っていても、望みは薄いです。

無駄なプライドは捨てて、作戦を変えることも必要です。


「以て往く可きも、以て返り難きは、挂と曰う。」

進むのは容易であっても引き返すのが難しいような土地は、「挂」と言う。

特定のコースにしか強打ができない場合は、慎重に行かないといけません。



例えば、フォア側の浅いボールに対して、強く打つならクロスになります。

ストレートに強く打つのは激ムズです。



この場合、相手がフォア側で待っていなければ、フォア側に強打して大丈夫です。



しかし、相手もフォア側に来ることを理解していて、完全にフォア側で待っていることもあります。

この場合、ブロック、あるいはカウンターが返ってくるでしょう。



そこで、カウンターをされても返球する態勢が作れそうなら、カウンター覚悟でフォア側に強打をしましょう。

決まるかもしれませんし、カウンターを食らってもそこからラリーに持ち込めばオッケーです。



カウンターを食らったときに返球できそうになければ、威力を落としてでもバック側に打ちましょう。

相手もフォア側で待っているので、遅くてもバック側に打てば、案外決まってくれます。

クロスに強く打つよりも賢明です。


「我出づるも不利、彼の出づるも不利なるは、支と曰う。」

自軍が進撃しても不利となり、敵軍が進撃してきても不利となる場所を、「支」と言う。

お互いの弱点が重なって、そこを突き合うことがあります。

・お互いにバック対バックが苦手
・お互いにフォアクロスの打ち合いが苦手
・お互いに下回転の展開が苦手
・お互いに上回転の展開が苦手

こういった場合、お互いに弱点を突こうとして、そこでのラリーが多くなることがあります。



このときに考えるべきは、

「無理はせず、相手にミスをしてもらう」

ことです。



弱点で戦っているので、点が欲しいからといって無理に攻めると、ミスをします。

むしろ甘めに繋いで、相手の打ち気を誘います。

相手の打ちミスで得点を稼ぐのです。



バック対バックがお互いに苦手であれば、バックハンドを甘めに打って、相手にバックハンド強打をしてもらいます。

ツッツキ打ちがお互いに苦手であれば、ツッツキを甘めに打って、相手にツッツキ打ちをしてもらいます。



このように、自分は甘めに打つことで、相手に苦手なことをさせましょう。



苦手ゾーンで戦うコツは、

「自分は無理せず、相手に無理をさせる」

ということです。


「隘き形には、我先に之に居らば、必ず之を盈たして以て敵を待て。」

谷間の道幅が狭まったような土地では、こちらが先にそこを占拠していれば、自軍でその場を満たして敵軍が来るのを待ち受けるようにする。

相手のドライブのコースが分かっているなら、ブロックで戦ってみましょう。



・クロスに打ってくる
・バック側に打ってくる
・回り込みはストレートに打ってくる
・フォア側の短めのボールはクロスに打ってくる
・下回転打ちはクロスにくる

など、何かしら相手の癖があるはずです。

まずはそれを見つけましょう。



そして、コース取りの癖を見つけて、実際にしっかりブロックができるのであれば、もうどんどん打たせちゃいましょう。

そのコースをブロックで占拠して、ガチガチに固めておけば、好きなように振り回せます。

自分から打たずに勝てるなんて、こんなに楽なことはありません。



さて、ブロックができれば最高なんですが、上手くいかないこともあります。



「思ったよりドライブが速い!」

など、タイミングが合わないこともあります。



「思ったより回転が強い!」

など、回転が合わないこともあります。



このように、コースが分かっていても、それでもブロックができないこともあります。



このとき、すぐにその球質に慣れそうなのであれば、そのまま打たせ続けてみましょう。

それでブロックができるようになれば、こっちのものです。



しかし、慣れるのに時間がかかることもあります。

そして、一試合はあっという間に終わります。

自信が無いのであれば、打たせない作戦に切り替えた方が良いでしょう。


「険しき形には、我先に之に居らば、必ず高陽に居りて、以て敵を待て。」

起伏の激しい土地では、先に自軍が布陣しているなら、高地の日当りの良い場所を押さえて、敵を待ち受けよ。

戦いは、高地を陣取った方が有利になります。

卓球も、高い打点で打った方が有利になります。

特にチャンスボールに対して、高い打点でしっかり捉えられるかはめちゃくちゃ重要です。



そのためには、浮いたボールが来ることを予測して、先にドライブの態勢を整えておく必要があります。



短い横上のサーブを出して、相手がツッツキのラケット面を見せたら、浮いたツッツキが想定できます。

ラリー中に、相手が逆を突かれたような動きを見せたら、なんとか繋いでくると想定できます。



このように、甘いボールが来ることを想定できれば、相手が打つ前に態勢を作ることができ、高い打点でしっかりと叩くことができます。



逆にこれができないと、甘いボールに対して打点が落ちてしまいます。

「あっ!甘いボールが来た!」

と、相手が打ってから動き出していると、もう間に合いません。

打点が落ちてしまい、もう優位性は失われます。

こうなったらもう、繋ぐしかありません。



「甘いボールだから、打たなきゃ!」

と、既に打点が落ちているのに、もったいないと思って無理に打ってしまうのが最悪です。

強打は潔く諦めて、繋ぎましょう。


「遠き形には、勢い均しければ以て戦いを挑み難く、戦えば而ち不利なり。 」

双方の軍が遠く離れている場合に、軍勢、兵力が互角であれば、自軍から戦いを仕掛けるのは難しく、無理に戦いを仕掛けようとすると不利となる。

片方が下がっているときは、互角な状況であればお互いに無理は禁物です。



片方は下がって繋ぎのドライブ、片方は前陣でブロックをしているとき、状況は互角なので無理は禁物です。

下がっている人は、無理にドライブを強く打つと、さすがにミスをする確率が高くなります。

前陣の人も、しびれを切らせてカウンターで決めに行くのは、リスクが高すぎます。

お互いに、コースを突くことで相手の態勢を崩し、優位な状況になってから攻める必要があります。



前陣にいる人の場合、相手がフィッシュで繋いでくるまで待ちます。

基本的にはバック側に打っておけば良いでしょう。

相手がドライブを諦めて、繋いできたところで攻撃に移ります。



下がっている人の場合、相手のブロックが甘くなるまで、ひたすらドライブで繋ぎます。

相手のブロックが甘くなるか、コースが読めたときに、前に出て攻撃に転じます。

逆に、相手に攻められて劣勢のときに、ダメ元で攻撃に転じるのもアリでしょう。



前陣にいるからといって、優勢とは限りません。

中陣にいるからといって、劣勢とは限りません。

どちらの状況になったとしても、落ち着いたラリーで優位に立ち、それから攻めるようにしましょう。


「凡そ此の六者は、地の道なり。将の至任にして、察せざる可からざるなり。」

 これら6つのポイントは、地形についての原理である。これを知ることは、将軍の最も重要な責務であるから、明察しなければならない。

終盤の重要な場面で、このいずれかの位置関係になることも多いでしょう。

そのときに、この6つのパターンに気づかずに、攻めてしまったり、守ってしまったりすれば、それは致命的な失点に繋がります。



6つのパターンに気づくかどうかが、勝敗に直結することも少なくありません。

いつでもすぐに気づけるように、6つのパターンをよく覚えておきましょう。


⑨「行軍」篇 ~敵情を知れ~
⑩「地形」篇 ~位置関係を知れ~【後編】
その0「孫子の兵法とは」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?