見出し画像

未来(1)

 僕が通院するデイケアは僕が病気を発症した26年前から、別の場所にある建物を利用してプログラムを行っていた。その当時はデイケアが無くなってもおかしくない状況もあったけど、現在ではデイナイトケアも作られて、宿泊施設まで作られている。デイケアの職員は5名が参加している、全員何らかの国家資格を有する、福祉のプロである。僕はこの病院に本格的にお世話になったのは2回目である。1回目は30代の前半に、社会で馴染めずに無理をして働けなくなり、病院にお世話になった。2回目は40代になってから、仕事を辞めて数年自宅にいると、何をして良いか分からなくなり、病院を受診、Mさんに相談するとデイケアを勧められた。デイケアに通院しだすと、病状は安定して、社会生活を自然に送れる様に回復した。僕も通院し出して4年目になる、もしこの度幻聴が鎮ったら当分の間、ここでお世話になろうと決めていた。幻聴が騒ぎだす社会には戻りたくなかったのだ。

 Egさんは、朝デイケアルームを訪れると、朝の薬を飲んで体重計に乗る。朝の体調を職員と話すとプログラムの出席表を一生懸命に丁寧に記入する。

 僕は「Egさん、プログラム始まってないのにもう感想書くの?」

 Egさん「うん」

 「小さい字で几帳面に書くね」

 「毎日の事だから、丁寧に書きたいんだ」

 僕は「Egさん、もうデイケアに通い出してから長いよね」と伝えると

 Egさん「しばらく入院してたんだ」と答えた。

 Egさんは、家族と自宅で過ごされていたけど、体調を崩されて、病院に入院。僕がデイケアに再び通院を始める同時期に退院されてデイケアに通いはじめた。習字や裁縫が得意で雑巾を塗ったり、風船バレー等のプログラムに積極的に参加されている。昼食後にはEgさんと体力維持の為に踏み台昇降を両足、20回ずつ行う。昼食後、13時になると受付に一緒に行きお金を支払う。

 僕は「13時なるね、受付にお金支払いに行こうか」

 Egさん「明細書の受け取りだけで良いから」

 「双子のおねいさんと妹さん、元気」と話しかけると、

 「妹が旅行に行くから、お母さんの面倒を見ないと」

 「お母さん認知症なの」と答えた。

 「Egさんの言う事分かる?」と聞くと

 「よく分からないことが多い」と答えた。

 Egさんには、双子のおねいさんがいて、おねいさんも同じ病気である。先日も入院されていたけど、デイケアには通われていない。双子だからよく似ていて、職員も見間違えるほどだ、3歳年下の妹さんは健常者で、Egさんをはじめとするご家族の面倒を見られている。

 踏み台昇降を一緒にするメンバーにKdさんがいる。kdさんはまだ若い28才である、朝から僕にも、Kdさんの方から挨拶してくれる。デイケアルームで静かに待機しているとスマホを見せてくれて、この動画面白いよと見せてくれる。周囲の人にフランクで積極的に話しかけてくれる。昼休みにはEgさんを誘ってトランプをしている。僕も彼女がデイケアにいると明るく過ごすことが出来る。とても助かっている。

 kdさんが「30になるまでに結婚したいんだ」と僕に言う、

 僕が「仕事はしないの」と尋ねると

 「保育の仕事がしたいんだ」と答えた。

 僕は「若い時に色々な経験をした方が良い」

 Kdさん「モデルの仕事も考えている」

 「伊勢谷友介さんに会ってみたいんだ」と話すと

 僕は「ファンクラブに入れば、逢えるし写真も撮れるよ」と答えた。

「一ヶ月、550円だから」

 Kdさん「保育の仕事どうしよう?」

 僕は「スマホ貸して」

 「市内で調べればすぐ出るよ」

 山口中央幼稚園で保育補助を探してる、無資格・未経験でも大丈夫みたいだよ、此処に連絡先があるみたいだから電話してみると良いみたいだよ。以前同じような事話してたから資料持ってきたから見てみてね。Kdさんも嬉しそうだった。Kdさんがインスタで知り合った彼氏と今週末、USJに遊びに行っている。プライベートも充実しているようだ。彼女の目標が一つでも叶って欲しい、僕らは病気で人生のやりたい事を思ったように取り組めずに我慢するケースもある。僕も振り返れば若い頃から積極的に動いていれば良かったと思う事もよくあった。Kdさんもよくその事を理解している。28才で1番綺麗な時だ、何でも取り組める筈だ。Kdさんの夢を応援している、自分を信じて欲しい。

 僕は、仲間を見ていて、毎日出席表を一生懸命書く姿が目に浮かぶ。彼女達が病気に負けない為に思っていることが、出席表には書いてある。デイケアの皆んなが感じる想いを職員の方が実現してくれる。皆んなが頑張れる事に声かけしてくれる職員にとても感謝している。いつもありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?