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なみだ恋

 SくんとYさんが新宿にお世話になり始めたのは1ヶ月前大阪から逃げるようにこの街に来た。Yさんは新宿に誰も頼りになる人はいなかった。Sくんは仕事が見つからず友人の家に待ちぼうけ。YさんはSくんを支えるために夜の仕事を探す。新宿の裏通りを歩く2人。

 Sくんがスナックを訪れYさんのまかないをいただく。Yさんがママさんにありがとうって言う。外は雨が降っている。朝には雪になるかもしれない、寒い夜だ。SくんとYさん肩を寄せ合う、大阪のことを思い出す。

 Yさんは誰を恨めばいいのだろうって感じていた。Sくんはスナックの入り口の雨どいの下でタバコに火をつけた。Yさんは濡れているSくんの背中をハンカチで拭いてあげた。

 Sくんと会えたのは5日ぶり恋しくて今度はいつ会えるのかわからない。SくんとYさんは別れがつらい。2人でいる為に大阪からでてきたはずなのにとYさんは想う。SくんとYさんは耐えている。Yさんは明日が明るくなるように涙を流す夜もある。

 夜の新宿の片隅でひたむきに咲く花のようなSくんとYさん。

 SくんとYさんは一緒に暮らす幸せを一度は夢に描いたけど冷たい風のようにSくんとYさんを攻めるものが存在する。それって何?SくんとYさんを傷つけるものは何もないはずなのになぜだろう。

 Sくんが一緒に住もうか?ってYさんに言う。Yさんは一緒にいたいけど今は離れていましょうとSくんに話す。SくんはどうしてってYさんに聞く。Yさんは許してくれる人がいないでしょうってSくんに言うと、Sくんは2人のことは2人で決めればいいとYさんに伝える。Yさんは新宿を離れるのはつらくなるからとSくんに話した。

 SくんとYさんは耐えていた。Sくんは不甲斐ない自分に涙を流す。

 SくんとYさんは夜の新宿を歩いた。裏通りには同じ境遇の人がいてSくんとYさんを許してくれる優しい街だった。

 SくんとYさんが咲き続けることができたのはわずかの間だった。冬の冷たい雨に花が散ってしまった。Sくんには親の作った借金があった。借金から逃げる為に新宿に来るしかなかった、Yさんも支えたかったけどどうにもならない額だった。

 SくんとYさんは悲しい別れが近づいている事を感じていた。Sくんは借金を返す為に友人と外国で働くことにした。Sくんは借金を返す為に数年間韓国で働くことをYさんに伝えた。YさんもわかってるとSくんにつぶやいた。

 SくんとYさんは夜の新宿を歩いていた。行くあてもなかったけどSくんはYさんを今夜は返したくなかった。朝まで2人でいたかった、お互いのことをもっと深く理解したかったのだ。

 SくんとYさんは耐えていた。SくんとYさんの別れにSくんの友人もYさんの勤めるスナックのママさんも2人が肩を寄せ合った新宿も一緒に泣いてくれた。

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