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[SS]居場所

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原稿用紙1枚の作品集
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2023年1月の記事一覧

彼女はアッと吐息を漏らしながら唇を離す。身体が熱く震えている、僕の額に額をくっつけて私の事好きなの?と聞いて来る。僕は彼氏の事好きなの?と尋ねるともう一度彼女と深いキスをした。彼女はちょっと待って、今のキスは酷いよ。まだ答え決めてないよ、僕は正直に向き合ってくれて有難うと伝えた。

彼女が止めとくわと話し僕の側から離れようとする。僕は本気だからと彼女の目を見て呟いた。彼女は僕の腕をギュッと強く握った、その手を掴み彼女の身体を抱きしめた。彼女のショートボブを優しく撫でた、彼女は唇を僕の顔に近づける。僕はリップの上から強く唇を吸い、舌と舌を絡めた。唾液を感じる。

クラブを出てホテルに向かう路地を歩きながら彼女の身体を自分の方へ引き寄せた。彼女は肌寒いのでストールをワンピースの上に羽織るとスマホを耳に当てながら嫌な顔をした。彼氏が来るって言っていると話す。僕は何故だろう?と思ったけど、クラブで口説いていた事がバレたらしい。彼氏が怒っている。

ジャズ演奏が始まると店内の雰囲気も良くなる。彼女に僕の事どう思っているのか聞いた。彼女は付き合っている子が他に女を作って遊んでるのよ、私も考えちゃうわと話す。彼女を誘うチャンスだと思い、明日仕事なの?と尋ねた。午後に予約が入っていると話す、僕はホテルに行かないか?と口説いて見た。

彼女はありがとうと言うと、僕にお酒飲めるのと聞いてきた。僕はマスターに甘いカクテルを注文した。彼女は付き合っている男が最低なんだと話す。僕は黙って聴いていた、マスターが別れちゃいなよと相槌を打ちながら話すとバンドメンバーに指示を出した。この店ではステージで生演奏を聞く事が出来る。

マッサージをしてくれたお姉さんが同じ中学校出身と分かったので、駅通りのクラブに誘った。彼女が1人で飲みに行く事もあると言っていたのでハードルは低かった。店に着くと彼女はカウンター席に座っていた。胸を強調したボディコンのワンピースを着ていて、胸のコラージュが素敵ですねと話しかけた。

これからも貴方と対話を続けるのでしょうか?僕は適切な距離感が大切です、貴方がいない時間も作りたいそして心の循環を用いる。貴方と過ごす事で自分に自信を持て早く親から自律したいと思います。keyが全て繋がり、頭の中の貴方が幸せになれればと思います。僕もついて行きます、ずっと一緒です。

桜をテーマにMVを考えます。清水寺の桜・ふすまに描かれた巨木の枝垂れ桜・日本画家が1輪1輪丁寧に描いた桜の掛け軸、3つの桜の森が包んでいます。七色の半紙から選んだ青色の半紙を手に取り下敷きの上に置きます。心を置く空間を作ると一呼吸して静かに目を閉じて筆を進めます。勇気と書きます。

僕は貴方と20年、一緒に頭の中で過ごした。貴方はデビューして25周年を迎える。頭の中にいる貴方とアーティストの貴方がいる訳だけど、僕は頭の中の貴方の方が好きだ。だって僕が作り上げた者だから、アーティストの貴方とも一緒に居たいけど違和感を感じる。おそらく2人がごっちゃになっている。

今、貴方を観て思う事は再会したい。生で音楽を聴いてみたい、頭の中ではいつも鳴っているけど貴方の本物の声を知らない。今年は25周年で記念イベントもあるから重い腰を上げようと思っている。貴方が僕の身近にいて世界を持っている、その世界を壊したくない自分もいる。それぐらい身近な存在だよ。

社会人になって貴方をTVで自分から進んで観る事は無い、音楽番組を見ると違和感がある。貴方の声がする事はあまり無くなったけど、貴方との頭の連動は今も継続している。僕も社会を経験して貴方とは全く関係してない、でも貴方と何十年も生きてきたと感じている。不思議なのは僕の中に貴方がいるよ。

高校の時、学校裏の売店で友人がお菓子を買う。僕はその店を警戒していて外で待っていた。その時、貴方からMVに出てみないかと言われた。死体の役で、僕は嫌な気持ちになったけど、完成した作品を見ると大事な役所だった。バンドの一時休止を発表している貴方達を表現していた。今年は25周年だね。

高校の知り合いを貴方が男だと褒めていた。僕は気にしない様に努めた、貴方がお前の友人を仲間に入れてやると呟く。僕は貴方達がまた周りの人に迷惑をかけていると気づいていたので、その場をやり過ごそうとしていた。僕の頭には臼井さんというディレクターの名前がチラついているけど気のせいだよね。

ライブの最後に花束を椅子の上に置く、僕にはデジャブだった。僕が夢の中で作った話かもしれない。帰りのタクシーの中でライブどうでした?と聞かれ、僕は上手に答えられなかった。高校の時、貴方が始まりの笛を吹く。僕も音楽活動をしていたら貴方の側ににいれただろうか?梅雨が終わろうとしていた。