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「君たちはどう生きるか」を見て思ったこと。(本編に関するネタバレは無し。)

トトロって優しかったよな。


子供の頃、「となりのトトロ」を何度も見た。
テープが擦り切れるほど何度も見た。
振り返ると、あの映画は子供の味方をしてくれてたのだなと思う。
私にとってトトロは、「大人は子供の事を全然わかってくれないよね?」という消極的な共感ではなく、「子供にしか見えない世界があるのだ!」という積極的な肯定をしてくれた。
大人に軽くあしらわれがちな子供は、
この映画を見る度、優しく励まされるような気持ちになったはずである。

子供は、自分が触れるコンテンツを能動的に選べない。


自分が親になった今思うのだが、幼少期に浴びるコンテンツがYouTubeで見るゲーム配信とかになりつつある現代に比べると、今の大人はある意味とても贅沢な子供時代を過ごしたような気がする。
子供向けのコンテンツは子供が喜ぶように、かつ子供のためになるように作られているが、実際そのコンテンツにお金を払うのは大人である。
商業的に成功させながら、真に子供のためになるコンテンツを作るのは想像を絶する難しさがあるだろう。
大人達も、何が子供のためになるのかよくわかっていないのだから。

ファンタジーは心のストレッチ


私は「君たちはどう生きるか」は、
子供のためを思って作られた映画だと感じた。

ファンタジーは、一つの完成された閉鎖世界である。
そこには固有のルールやカタルシスがあり、それは人間が問題に直面した際の心理的な安全地帯であり、精神の成長の場である。

誰もが生きる上で問題は避けられない。
問題には様々なパターンがあり、あらかじめ解決策など用意できない。
変えられぬ現実の中で、変えられるのはそれと向き合う自分の心である。
この映画は、問題と葛藤を乗り越えるまでの少年の心理的変化の映像化のように思えた。
つまり、心のストレッチのお手本である。

「エルマーの冒険」という本の翻訳者の言葉らしいが、
「実在しない生き物が子どもの心に椅子を作り、それらが去った後に実在する大切な人を座らせることができる。」という言葉を時々思い出す。
この映画は、いや、ジブリ映画はいつもこのような役割を担って来たような気がするのだ。

宮崎駿はネテロ会長くらいすごい。


「宮崎駿氏の説教2時間コース」を期待して映画館まで足を運んだ私は、
あえて広告を打たないという高度な広告手法にまんまとハマり、
結果的に「いい加減大人なんだから、コンテンツから何か学ぶとかじゃなくて未来とか子供のために自分が何ができるか考えなよ。」というメッセージを勝手に受け取りつつ家路についたのであった。

まあ一番のファンタジーは、82歳のおじいちゃんが長編アニメ映画の監督やってる事ですよ。
これだけの実績と功績を持ちながら、余りあるタフネスと才能を活かし続け第一線で戦い続けてるのは、ハンターXハンターのネテロ会長くらいしか思いつかないよ。
人生100年時代のマスコットキャラになれるよ。

俺もまだまだがんばらないとなぁ。



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