「はこのブックス」オープンのお知らせを経て

一昨日、「出版点」のホームページとSNSで「はこのブックス」オープンのお知らせをして、なんだか不思議と気持ちが楽になりました。

今日はここに至るまでの思いを少し書きたいと思います。

開点当初から店の売り場の一部をシェアスタイルにすることを考えてはいて、一部をお貸ししたりしていたものの、本格的な展開はどうしても思い切ることができませんでした。
「何を売るか」というのは、オーナーのアイデンティティに関わることでもありますし、またいちばん楽しい部分でもあると思います。それを人に委ねてしまうことに少し抵抗があったのです。

さらに、売れても売れなくても、あるひと区画を人に貸すことで固定的な売り上げ(収入)が確保できる。
それは新たな取り組みの立ち上げ期には何よりもありがたいことだと分かっているのですが、どこか罪悪感のようなものがあって、それをずっと振り払うことができなかったのです。

先日、不意に鈴木賀津彦さんが初めてお店を訪ねてこられました。
おそらく、わたしの最近の会社と店の状況を知ってのことなのだと思います。
鈴木さんは元東京新聞の記者。長年活躍された新聞社を昨年卒業されましたが、記者時代にずっと追いかけていたさまざまな地域のハブとなる拠点づくりに興味を持ち、より精力的に活動をされています。
その中で、近年めざましい成果をあげているシェア本屋についての可能性について話をしてくださったのでした。

先日刊行された『地域でつくる・地域をつくる メディアとアーカイブ』(松本靖幸 編/大月書店刊)では、全国のシェア本棚と地域メディアの動向などについて1章分の原稿を寄稿されています。
また、横浜の関内にある「ローカルブックストアーkita.」では「つたえびと書店」の棚主として情報を発信されています。

これまでの経験を踏まえた鈴木さんからさまざまなお話を伺ううちに、棚主の求めているのは本を売ることではなくて、自分の思いをリアルな形で伝えること、それをきっかけにさまざまな人とつながることなんだと、今さらながらに目からうろこが落ちるような思いがしたのです。

わたしはこれまで、どうしたら本や作品が売れるのか、そればかり考えていました。それが「出発点」が目指した〝さまざまな人が出会い、語らいながら新しい明日が始まる場所づくり〟につながると思っていたからです。

でも、第一にわたしのやるべきことは、それをもっと直接的な形でつながる場所づくりをめざすことだったのだ――鈴木さんと別れた後、そんな思いがこみ上げてきました。

それから店の今後の在り方についてずっと考えて出した結論が「はこのブックス」を始めることだったのです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?