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「旅をする木」を読んで星野道夫さんに惹かれた。

2022年12月。

妻を迎えに行った福岡空港の本屋で、この本を見つけた。

「星野道夫」さん。
・・・知らない方だった。

この本が発売されたのは1995年。今から20年以上も前だ。

Amazonで表示される表紙はトナカイの絵が描かれている表紙だが、本屋で並んでいた本の表紙は、星野さんが「カメラ」を構えている姿が載っていた。

綺麗に並べられた本棚の、目線の少し下。他にも本はたくさんあったのだが、この本だけが目に留まった。

この表紙の星野さんの姿がとても気になったのだ。いや「気になった」という軽い感覚ではない。この表紙の星野さんに「惹かれた」のだ。

名前も知らなかった、顔も知らなかった、この星野さんに「惹かれた」。

すぐに空港内にあるカフェで本を読み始めた。最初の1ページ、2ページと読み進めると、一気にアラスカの風景が目の前に広がった。

「星野道夫さん」はアラスカで活動した写真家であること。
アラスカが好きでアラスカに住み着いたこと。
アラスカの自然や動物を撮っていたこと。

そして、星野さんが既に亡くなっていることも知った。。。

この本を読むと、星野さんが見てきたアラスカの風景をリアルタイムで見ているかのよう感覚に陥る。

星野さんの文章はとても静かで、読むと心がとても穏やかになり、晴れ晴れとし、そして少し寂しくなる。

当時は不可能だったであろうが、現在であればYouTubeやInstagramなどのライブでリアルタイムに風景を伝えることができるだろう。映像の情報量は凄まじい。しかも手軽だ。

だが映像で、ここまでの気持ちにさせられたことはない。

この本を読んでいると「写真」とは何なのかを考えさせられる。この本には一切「写真」は出てこない。

でも私の頭の中には「アラスカの風景」が広がっている。

星野さんの「写真」はほとんど見たことがないのに、その光景が広がっている。

私は「写真」が好きだ。
綺麗な景色を見て、その風景を残せる「写真」が好きだ。

「写真」が好きだから、会社を辞めてまで観光地の魅力を伝えるサイト『旅々PHOTO』を運営している。

最近は「写真」を撮ることがとても簡単になった。ポケットからスマートフォンを取り出し画面にタッチするだけ。

目の前の風景を手元にいくつも残せておける。その風景を伝えようと思うと、すぐに送ることもできる。

ただ、星野さんの本を読んで、観光地の魅力を伝える方法として「写真」に甘えているような気がした。

「写真」の情報量は凄いが、本当に伝えなくてはならないのは、その風景を見て感じた気持ち、湧き上がる感情、自分の目にはどう映ったのか、ではないだろうか。それを言語化する必要があるのではないかと感じた。

最近では、SNSやYouTubeなどで世界中の絶景を手軽に見られるようになった。最初は楽しかったが、インターネットには絶景写真が溢れかえり、もう見慣れてしまったのか、写真に惹かれることは少なくなってしまった気がする。

ただ私は、まだ見ていない星野さんの「写真」に惹かれたのだ。

不思議な感覚。
「写真」を見た気持ちだ。

まだ、星野さんの本は1冊しか読んでいない。星野さんの写真集も見ていない。星野さんのことは、まだまだわからない。

ただ、どうしても今の気持ちを書き残して置きたかった。

本を読んで初めてだった。こんなにも幸せな気持ちになったのは。

本の最後の解説で「池澤夏樹」さんが話していたことがとてもしっくりきた。

『旅をする木』で星野が書いたのは、結局のところ、ゆく先々で一つの風景の中に立って、あるいは誰かに会って、いかによい時間、満ち足りた時間を過ごしたかという報告である。実際にはなし、この本にはそれ以外のことは書いていない。

星野道夫「旅をする木」

私は「写真」が好きだ。

ただ星野道夫さんの本を読んで、少し考えが変わりそうだ。

「写真」とは何なのか。

ただただ人に伝えるツールなのか。

いまはまだわからない。

自分なりの答えは出したいと思う。
私が「写真」を撮る意味はなんなのか。

将来「この本に出会えたことで人生が変わった」と思える本に出会えた気がする。

それほどまでに「星野道夫さん」に惹かれた。

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