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「ジャック・ケルアック的に旅を語ろう in ドイツ 」

世界一周434日目(9/5)

※この日記には漫画家特有のフィクションも含まれております。

今日は友達が日本からやって来る日だ。

だが!しかぁ~~~しっっ!!!
僕にはやることがある。

昨日、魔が差してやってしまった
電車のタダ乗り。

チケットを買い忘れたがために
喰らってしまった40ユーロの罰金。
日本円にしておよそ6,000円。

だが僕は昨日お会いした
写真家のたまごのメグミさんから、
使用済みのチケットを入手することに
成功したのだ!

これを持って、自分がチケットを
持っていたことを証明できれば、
罰金を払わずに済む!
もしくは減額してもらえるはずぅ!!

だからこそ僕が野宿したのは、
その手の罰金の支払いに対する
抗議を受け付けているであろう、
動物園近くの駅だった。



目が覚めたら、
周りにホームレスがいた。

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あぁ~~~…なるほどね。

昨日夜中にすげー人の気配がすると思ったら
そういうことでしたかぁ。

僕も立派なホームレスの一員というわけだ。

テントも持っているホームレスもいた。

僕はテントをたたみ、
「ハーイ」と彼らに軽く挨拶をする。

ちょっとアンモニア臭い寝床だったから、
もうここで寝ることはないだろう!



「しゃーーーッ!
行くぞぉ!」

バックパックを背負うと気合いを入れた。

40ユーロの罰金だなんてマジでシャレにならない。

今まで野宿して節約して、

って、そのお金もバックパックが盗まれたから
装備品を集め直すので相殺され、

その上さらに!
このカツアゲ的な罰金って、

チクショウッ!


とりあえずは駅の交番で
どこで罰金に対する抗議ができるのか
訊いておいた。

英語の喋れるおまわりさんが
僕の事情を聞くとこう言った。



「これ、打刻してないよね?
もう無理なんじゃないか?」

はっ…???



ドイツの電車には買ったチケットを
必ず打刻しなければいけない
システムになっている。

調べた情報によると、
これがしてないだけでも、
いくらかの罰金を課せられるのだとか…。

ってー、メグミねえさん…。


いやいや!諦めてたまるもんかぁ!
40ユーロだぞ!40ユーロ!

ちなみに僕にはまだ勝算があった。

以前イタリアのフィレンツェでお会いした
バスカーのヤッケンにいさんも、
人からもらったチケットの
有効期限が切れていたらしく、

駅のオフィスに抗議して、
その罰金を40ユーロから
7ユーロに減らしてもらったと
ブログに書いてあった。

だって、今回が初めてのことだし、
そんな外国人から大金を巻き上げるような
真似はしないだろう!



オフィスの開く時間は8時だったので、
駅のベンチに座って時間を待った。

オフィスが開くのと同時に、
僕は受付に駆け込み、
自分が罰金屋にチケットを
提示できなかったことを話した。

受付のおばさんは
超絶めんどくさそうな顔をしてこう言った。

「そんな話ここでもしてもらっても困るわ。
上のオフィスに行きなさいよ」

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はっ???

ここで抗議するんじゃねーのかよ?

イライラしながらも、
駅のプラットフォームでオフィスを探したが、
そんなオフィスどこにもないじゃないか!

たまたま奇跡的に発見した駅員のおっちゃんに
(ドイツにはほっとんど駅員がいないのだ!)、
どこで罰金の抗議ができるのかを訊いた。


「何言ってるんだい?
ここで罰金の話なんてされても困るよ。
ここに住所が書いてあるだろ。
ここに行かなくちゃ」

って!なんだよ!

なんで僕がこの駅(動物園の近くの駅だ)で
駆けずりまわっていると思っているんだ!

(昨日メグミねーさんが泊まっていた
ホテルのスタッフが教えてくれたからだよ!)



罰金支払いが命じられた時に渡された紙に
オフィスの住所が書いてあった。

駅員のおっちゃんにそこまでの
チケットの買い方を教えてもらい、
僕はそこへ向かった。

ベルリン市内を移動するだけで、
どんどんお金が減っていく…

そして無賃乗車のリスクは
計り知れないほどデカい…。



駅にたどり着いた僕は、
駅構内にあるオフィスに急ぎ足で駆け込んだ。

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「す、すいません!
こうこうこういうわけで
罰金払えって言われたんですけど!
チケットは持ってたんでー」

「あぁ、これね。
ここに受付時間14時からって
書いてあるだろ?14時にまた来な」

はーーーーあ???



現在9時過ぎ。
あと5時間もあるじゃねえか。

友達がドイツのテゲル空港に到着するのは
18時40分。

時間はあることにはある。

仕方なしに、スターバックスからの
Wi-Fiの入るダンキンドーナッツで
僕は時間をつぶした。

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盗難が怖いのでトイレに荷物一式を持っていくの図。

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日記も書いてなかったし、
こういう時間が必要っちゃ必要なんだけどね。
ま、前向きにならないと!



14時前になって、僕は荷物をまとめた。

オフィスの前に行くと、
すでに7人くらいが列をなしていた。

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何人かは罰金支払い用紙を手に持っている。

若いヤツらもいれば、おばあさんの姿もあった。
みんな罰金屋からカツアゲされたのだろうか?

すぐに僕の後ろに人が並び始めた。

ってかこんなに罰金支払いを
抗議(?)するヤツがいるんだな。

僕のすぐ後ろには高校生くらいの男の子がいた。


「君も罰金支払いに抗議しにきたの?」

「そうだよ。
定期が切れてたんだ。一日だけね」


正当な理由があれば、
減額できるのはほんとうみたいだ。
僕がいつも参考にしている「Hitchwiki」にも
そんなことが書いてあった。

14時になり、罰金の支払いに
抗議する時間が始まった。

40ユーロなんて払ってたまるか!


自分の順番になって、
堅っ苦しそうな大柄のメガネをかけた駅員に
僕は抗議した。

チケットはここある!
この請求はあまりにひどい!


「君、これ打刻してないじゃないか?
このチケットが君のだという証拠はあるのか?」

「そんな!
ベルリンに来たばかりで知らなかったんです!
チケットは買ったんですよ?
それにオフィサー(罰金屋)に
見せられなかっただけです!」

「君は40ユーロを払いなさい。
はい次の人!」

「いや待って下さいよ!
僕はチケットを持っています!」

「警察を呼ぶぞ」

「ちょっと待って下さい!!」

「警察を呼ぶぞ!」

ぐっ…。


僕の後ろに並んでいた男の子は
「ドイツの電車のヤツラは
ファッキン・クレイジーさ」と言った。





残された手段は
日本大使館に駆け込むしかなかった。

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罰金の支払いが初めての場合、
レターを書いてもらえば減額できるらしいと
「Hitchwiki」には書いてあった。

なんだよ?レターって?

正直自分でも格好悪いけど、
今回はアドバイスをもらうなり、
助けてもらうしかない。


電車に乗って日本大使館の近くで降りた。

ベルリンに来た初日に野宿した
大きな公園を突っ切った。

汗をじんわりかいた。
2kmくらいがやけに長く感じた。

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日本大使館へ行くと
僕は窓口のドイツ人スタッフに英語で説明した。

スタッフに言われた通り、
別室に荷物を置き、罰金の紙だけ持って、
日本人のスタッフがいる窓口で事情を説明した。

受付の初老の女性は、
僕の話を聞いて少し困ったようにしていた。

すると横から別に女性スタッフが出て来て

「こういうのは私の専門ですから」
と言って受付を交代した。


「それでー、
チケットは打刻してなかったんですよね?」

「は、はい。
ベルリンに来たばかりで
よく分からなかったんです…」

「それ、もう無理ですね。
言われた通りに払った方がいいですよ」

「え…!
な、なんとかなりませんか?
"レター"といものを書いてもらえば
少しは減額できるそうなのですが…」

「そういうのは
弁護士とかに頼んだ方がいいですよ。
こちらでは対応できません」

「そ、そんな…」

「罰金はすぐに払った方がいいですよ。
もし払わないでいると
日本まで追いかけてくるそうですから。
支払いに応じなかった分、
支払額もどんどん増えていくそうですよ」



うなだれて
日本大使館を後にした。

僕がとるべき行動は
今から支払いのできる郵便局に行って、
40ユーロ(5,598yen)を支払うほかなかった。

シンジランネェ…。

マップアプリで郵便局を探し出して、
現金で40ユーロを支払った。

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自分は何に対して
40ユーロ支払ったのか全然分からなかった。

町は夕日に染まっていった。

僕はタバコ屋でオーガニック煙草の
プエブロの巻きたばこを買った。

ケバブ屋がいくつも並ぶ
トルコ人通りみたいなところで
バックパックを降ろすとタバコを吹かした。

痛みを知ってワルガキは
大人になるのかなぁとそんなことを思った。




「あ!」

「あ、さっきの...」

目の前を子供二人を連れて
通りすぎようとする女性の方と目が合った。

さっき日本大使館で僕の対応をした人だった。


「さっきは、すいません。
ちょっと強く言い過ぎたかもしれません」

「はは..、いや、いいんですよ。
強く言ってもらったほうが。
おかげですぐに40ユーロ支払う決意が
できましたから...」

「よかったらうち来ますか?」


日本から来る友達を
待っているのだとその人に言うと、
その人は時間までうちで
ゆっくりしていってくださいと、
僕を家に招待いてくれた。

息子さん二人は日本人の顔をしていたが、
名前はドイツの名前だった。
旦那さんがドイツ人らいしい。

マンションの5階にある事務員さんの家は、
かなりお洒落な家だった。

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本棚にはドイツ語から日本語まで、
沢山の本がずらりと並んでいた。
僕の好きな村上春樹も何冊かおいてあった。

「レキシントンの幽霊」ってどんな話だっけ?
確か村上春樹が実際に経験したり、
聞いた話が短編集みたいに詰まっているんだっけ?

マンションに囲まれ、
ベランダから見下ろすと、
斜め下に子供たちの遊び場が見えた。

息子さん二人は日本製のランドセルを置くと
さっさと遊びに行ってしまった。


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案内してもらった屋上からは
ベルリンの街が見渡せた。

部屋に戻ると日本茶と茶菓子をいただき、
なんで僕がここにいるんだろうと、
どこか不思議な気持ちになった。


「よかったら、
ここでご飯食べていってもいいですよ?
シャワー浴びたければどうぞ?」

事務員さんはそう申し出てくれたが、
僕も相棒との待ち合わせがあったので、
お断りさせていただたいた。

事務員さんとお話させてもらったが、
時々日本大使館に僕みたいなヤツが来るそうだ。

きっと僕がほんとうはどういうヤツかも
見抜いていたはずだ。


帰り際に事務員さんは
赤ワインを一本僕にくれた。

旅とは、ほんとうに不思議なものだ。

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僕は歩いた。

友達との待ち合わせ場所は
ブランンブルグ門の前。

正確な待ち合わせ時間は決めていない。

18時40分到着だから
20時前には来るだろう。

門の近くのベンチでタバコを吹かした。
周りには観光客の姿が何人も見えた。



18時45分に僕は腰を上げた。

ブランデンブルグ門のど真ん中に立った。
バックパックを背負いながら。

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これならきっと人ごみの中からでも
僕を見つけられるはず。

彼はまだ現れなかった。

19時をまわり、19時半をすぎて、
あと少しで20時がやって来るのが分かった。

きっとどうやってここまで来るか
戸惑っているのだろう。
初めてのヨーロッパだしな。



時間になっても友達は現れなかった。

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僕はどんな顔でアイツと
再会すればいいんだろう?

頻繁にやり取りはしてるけど、
実際に顔を会わすのは1年と2ヶ月ぶりだ。

近くでダンスの路上パフォーマンスが行われていたが、
かけられている音楽を3回リピートして聞いた。


友達はなかなか現れなかった。

これってギャグかなんかだろうか?
「本当は来ない」的な。


20時を過ぎ、
20時半も過ぎていった。

観光客はなんで僕が
ブランデンブルグ門の前に突っ立っているのか
不思議そうに見ていた。
なんせ直立不動で
一時間半もここにいるのだから。

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思えば日本にいる時から僕は
アイツのことを待っていた。

よく駅で待ち合わせすると
決まって僕の方が早く着いて、
アイツは30分とか平気で遅刻してきた。

21時はもうすぐそこ。

ってかどうすんだよ!

今日の23時のバスで
デンマークのコペンハーゲンに行くんだぞ!

もしかしてヤツも
反対側で直立不動で待っているとかいう
ギャグかなんかか??

僕はブランデンブルグ門の周りを
友達の名前を大声で叫んでウロウロしたが、
そこに彼らしき人間の姿はなかった。



ソワソワしていると後ろから声がした。

「シミ~~~~!!!」

「ったく!遅い!
感動の再会が台無しじゃねーかよ!」

「いや〜、時間通りに着いたんだけど、
飛行機の中で一時間待たせられてさ」

お互いハグで再会を祝い。

僕が世界を旅していた1年2ヶ月の間に、
日本で頑張って来たのは知ってる。

大学生の時の
「やんちゃな若さ」は
彼からは消えていた。



調べておいた駅に向かい、
すぐにバスターミナルまで向かおうとした

が、

調べておいた
電車の乗り場が
見つからない!

えっ!ちょっと!
あと2時間で出発なんですけど!


「旅の恥はかき捨てだ〜〜!」と
手当たり次第に駅にいる人に聞いた。

もちろん駅員はこんなとこにはいない。
まったくクソったれだ!

そして、僕たちが
バスターミナル付近の駅名前を告げても、
ほとんどのドイツ人がそこまでのアクセスの仕方を
「分からない」と言うのだ。

中にはツーリストもいた。
彼らも同じように「アイ・ドン・ノー」と言った。

なぁ、まったく信じられるかい?

ドイツ人ですら、
電車の乗り方を
知らないんだぜ?

何人かは路線図を指で走らせて
調べてくれたものの、
やっぱり「分からない」と言うのだ。

しかも言ってることもひっちゃかめっちゃか。

あそこに行けばいいだの
(そこはさっき僕たちがいた)、

違うメトロに乗ればいいだの、
(ここじゃねえのかよ!)

手に入れた情報を照らし合わせ、
駅の隣りにある地下鉄乗り場に
行けばいいことが分かった。

行き先を確認し、券売機の前で迷う。

どの切符を買ったらいいのか分からないからだ。

ってかどこからABCが切り替わるんだ?
分かりやすいようで全然わかんねー!

さっきと同じように何人かに聞いたが、
5人中4人が「分からな」かった。


忘れないように買ったチケットを打刻して、
僕らはメトロに乗り込んだ。

カイザーダムだか言う駅が
バスターミナルの最寄りの駅だった。

それでも50分前には
バスターミナルに着くことができた。

近くのケバブ屋さんで瓶ビールと
3.5ユーロのケバブを買って
バスターミナルで友達の退職と就職を祝った。

コペンハーゲン行きのバスが23時にやって来た。

さぁ、二人旅の始まりだ。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。