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「いざグルジアへ!」
世界一周319日目(5/13)
出発の時だ。
朝7時に起きた。同じドミトリーで寝ているお姉さんを起こさないように、薄暗い部屋の中でパッキングを済ませる。前日の夜にある程度パッキングを済ませておいたので、あとは延長コードとか最後まで出しているものをしまうだけだった。バックパックに全ての物を詰め込み、忘れ物がないかiPhoneのLEDライトでベッドの下までチェックする。うん。大丈夫だ。部屋の中でPenny Boardとギターをバックパックに取り付けるのは面倒だったので、一旦部屋の外にバックパックを持って行った。ベッドの中からお姉さんが「それじゃ、気をつけて」と眠そうにして僕に声をかけてくれた。
リダさんに最後のアルメニアコーヒーをいただいて、お別れを言った。
リダさんは僕の頬優しく撫でた。おばあちゃんのもつ優しい儚さを持つ手だった。いつからだろう?リダさんが僕のほっぺをスリスリなでてくれるのは?確かバスキングで稼いだコインで宿代を支払うようになってからだと思う(笑)。
リダさんはムツゴロウさんのようにとまではいかないまでも皮肉をこめて「おぉ、でかしたぞ。ちゃんとお釣りなく払えたな」って僕の頬をスリスリしてくれたんだと思う。みんなに見送られて僕は宿を出た。誰かに見送られるのってちょっと好きだ。
いっつも朝ご飯を買っていた市場で、パンとリンゴを2つ買っておく。いくらかお金が残っちゃったけど、どこかで使う機会があるだろう。別の国に行く時、お金がなくてお菓子ですら我慢しなくちゃいけないこともある。使い切らなくても、アルメニアに来る予定の誰かと交換できるだろう。
ジョージアに向かう上でまず一番先にやらなければいけないことは駅前でマルシェルートカ(乗合のバン)を探すことだった。
「ジョージア」ってのは缶コーヒーのメーカーを指すのだと思っていた。ねえ、なんで日本の缶コーヒーのCMのほとんどが男の人向けなのか知ってる?それはね、日本で缶コーヒーを飲む人のほとんどが男の人だからだよ。まぁ当然っちゃ当然なんだけどさ、特に肉体労働する人は缶コーヒーを飲みたがるらしい。僕も大学受験の時に缶コーヒーの美味しさに気づいてからは、カフェイン中毒者の仲間入りをしてしまった。
ふと疑問に思うんだけど、缶コーヒー好きな女の子っているのだろうか?
「やっぱり私はエメラルドマウンテン派だなぁ~!」
「そう?わたしはマックス・コーヒーの甘さがたまらないなぁ~」
「ウチは寒い冬の日に飲む「まろやかミルクのカフェラッテ」が好きやな~♪」
どんな女子だ!!!
だがそんな娘がいたら僕は2秒で惚れる自身がある!
そんなジョージだが、アルメニアで「グルジアに行きたいんだけど」って言っても通じない。みんな「ジョージア!ジョージア」と言うのだ。グルジアからアルメニア来た日本人の方では「ジョージアってさぁ」とすっかり言い方が変わっていた。Wikipediaで調べたら、グルジア政府は日本に対して「ジョージア」と呼ぶようにお願いしているらしい。それでも「グルジア」と表記を変えない日本。きっとこれは日本コカ・コーラ社が裏で圧力をかけているに違いない!
「「ジョージア」しちゃったらウチとかぶるじゃないですか!」
って。いやぁ、どっちでもいいんじゃない?
でも、これは日本人の僕が世界を旅する航海日誌だからね。航海してないけど、心はONE PIECEさ。だから航海日誌ってしばらく言わせてくれ。だからグルジアって書くことにするよ。それでいいね?
僕はエレバン駅の前でグルジア、首都のトビリシ行きのマルシェルートカ(乗り合いタクシー)を探した。てか本当はここ「エレバン駅」って名前じゃないんだけどね。
駅の前には何台も車が停まっていた。運転手たちに何人も訊いて見つけたトビリシ行きのマルシェ。値段は7,000ドラム(1,716yen)だった。時刻は朝の8時。乗客は僕一人。
おっちゃんはバックパックを一番後ろのスペースに置くと「ほら乗った!」と僕をマルシェの後部座席に乗せた。やることがないので、昨日iTunesのクレジット払いで買ったthe HIATUSの4枚目のアルバム「Keeper Of The Flame 」をiPhoneに移す。ついにクレジットで音楽を買うようになっちまったよ。
CDの持つあのリアルな手触りや歌詞カードが好きだったのに、データだけ買ってしまった。そこまで今回のアルバムには動かされた。リード曲の「Thirst」のMVを見た時、なんだか漫画を描くモチベーションを上げてもらったのを覚えている。だって今、細美さんは41歳だよ!マジありえねえくらいパワーに満ちあふれた人だ。衰えるどころか、ますます勢いに乗っている。体づくりもしっかりやっていて、やっぱり何か物を生み出すのには体力が必要なんだなと考えさせられる。イヤホンで音楽を聴きながら、外の風景を眺める。
いつの間にか雨が降り出した。市場のみんなは商売上がったりだと思っているだろう。アルバムの曲がそんな雨のアルメニアに溶け込んでいった。
それにしてもー、いつになったら車が動きだすのだろう?
1時間過ぎても乗客は僕一人。
2時間過ぎても僕一人。
2時間半ほど過ぎた時にチラホラと他の乗客がやってきた。
「な、何時に車出るんですか?」
腕時計の文字盤を指でさしてジェスチャーで尋ねる。
「11時だ」
まーじーかー….。
これならリダさんちでもっとゆっくりできたじゃないか!
てかトビリシまで6時間かかるって情報ノートに書いてあったぞ?ということは着くのは17時?それなら朝に到着する5ドルくらい高い夜行列車で行った方がよかったかも…。
11時を回っても車は動きださなかった。きっと最後の駆け込みの乗客を待っているのかもしれない。15分のロスタイムをもってようやくマルシェは動き出した。結局僕はマルシェの中で3時間も待機していた。時々外に出ることはあったけど、ほとんど何もせず音楽を聴いていた。
こ、こういう時間も大切だよね…。日記を書くのはいつもパソコンだ。車の中でパソコンを開いて日記を書く気にはならない。しかも日記を書く環境も大事だ。気分が乗らないと文章が書けない。こりゃあいつか盗難にあった時なんかに大変だな。
それでも車の中ではインストールしていたevernoteで日記をつけてみた。気泡の入りまくった保護シールのせいでフリッカーがうまくできないし、なんだかいつもとは違った気分になる。長ったらしい文書を書くにはやっぱりキーボードだよなぁ。いまだにブラインドタッチすると打ちミスするけどさ。
隣りに座っていたガッシリした体格のお兄さんが僕に日本人か?と尋ねてきた。
「そうだ」と応えると、「おれは日本が大好きだぜ!」と言う。
極真空手を習っているんだか、先生なのかしらないけど、僕に「〇〇は知っているか?」と空手家の名前をいくつか尋ねて来た。残念だけど空手家の名前なんて知らないや。
前の席に座っていた別の人が「おい!コニャックはいるか!」と僕に訊いてくる。僕は日記書いていたのを中断してコニャックをいただいた。
飲むとアルコール度数の高いお酒特有の辛さを感じた。お酒が強くない僕にはなかなかパンチの強いお酒だ。僕以外の乗客たちは各々にコニャックを飲んだり、ビールを飲んだり。おいおいすげえな。こんな昼間っから。国境越えの宴だ。
ガタガタと揺れるマルシェ。いつの間にか眠ってしまっていた。
一度どこかの街で休憩を挟み、16時にはグルジアとの国境に着いた。ほんとうにあっと今の出来事。ハプニングと言えばマルシェの中にバックパックを置いたまま入国審査に向かったため、ドライバーのおっちゃんから怒られたとかそんなことくらい。そのまま同じマルシェでグルジアを突っ走る。他の人が言っていた通りに、グルジアの方が道路が整っているような気がした。それ以外はそこまで変わらないかな?グルジアの方がいくらか町っぽい。
太陽がどんどん西に沈んでいく。
「僕は一体どこで降ろされるのだろうか?」とちょっと不安だった。ガイドブックも持っていなければ、情報も調べていない。何があるんだ?
マップアプリでグルジアをダウンロードしていなかったので、頼りはアルメニアでiPhoneで写真に撮った宿の名刺のみ。グルジアにはマクドナルドがあるらしく、そこでWi-Fiが使えるそうだが、どこにマクドナルドがあるのか分からない。
グルジアに入ると、乗客たちは一人、また一人と途中で降りていった。みんな最後まで行くわけじゃないのだ。田舎っぽい風景が、いつの間にか首都の町並みになり、僕はサムソンと大きく書かれた建物の前で降ろされた。
運転手のおっちゃんに「ほら!降りた!」と急かされ、どこに行くかも分からずにバックパックを背負う。「どこだよ…、ここ」と思わず口に出してしまう。エレバンのメトロのようにWi-Fiがそこいらで拾える物かとiPhoneでチェックしたが、フリーのWi-Fiは流れていない。
ふっふっふっふ…、面白くなって来たぜ。
太陽が沈むまで残り3時間。タイムリミットのついた宿探し。
もしかしてメトロに乗るんじゃないかなぁ?となるとお金が必要だ。ATMは比較的すぐに見つかった。
他の人が言っていた通りにドルでおろすか、グルジア・ラリでおろすか選択肢が出てきた。てかそこいらじゅうにある「PAYBOX」ってのはなんなんだろう?とりあえず200ラリ(11,605yen)を引き下ろす。そして宿の場所を知っていそうな人にかたっぱしから近くの通りの名前を尋ねていった。
マルシェのドライバーたちはピンポイントで通りの名前を知っているはずはなかった。
「え?Tianeti通りだって?知らないなぁ」
そこまで英語が通じなので、iPhoneの写真と筆談で道を訊く。
だが、すぐに目当ての通りの場所を知っている子連れのおっちゃんに僕は巡り会うことができた。
「〇〇駅まで行ってそこから歩けばいいさ」
よしっ!有益な譲歩ゲットォォォ!!!やっぱ人に訊くことっすよ!一応、現地の言葉でも駅名と通りの名前を書いてもらう。メトロに乗ればそこまで行けるらしい。
2.5ラリ(145yen)払ってチャージされたメトロのカードを手に入れた。
手には目的地の名前が書かれた紙とボールペン。それと今買ったメトロのカード。
路線図を見ると、教えてもらった駅は終点らしい。けっこう遠くに宿があるんだな…。
係員さんに訊いて、どちらの路線に乗れば目的地まで辿り着けるのか訊いた。それに地下まで降りるとフリーのWi-Fiにありつくことができた。すかさずFacebookなどに安否確認のメッセージを送り、マップアプリのグルジアをダウンロードする。思っていたよりもWi-Fiの速度が速い。
ダウンロードが完了し、目的地の名前を入力して調べる。二重チェックは大事だ。だが、マップアプリに表示されたのはもっと近くだった。4駅先という近さ!うん。やっぱりネットだよね!てか、そんなピンポイントで通りの名前知ってるわけないもんね。うんうん!いやぁ~マジ危なかった。危うく郊外に強制送還されるとこだったよ!
メトロはどこか薄暗かった。人々の顔もどこか無表情だ。日本にいた時を思い出す。
降りてしまったのは、目的地の一コ手前。
同じ名前の通りがいくつもあり、ひとつもふたつも前の通りの名前まで調べて宿への距離を詰めていく。
だが、ほんとの直前になって、見つからない。
一体「111a」ってどこにあるんだよ!
番号が112から通りを挟んで「109」「107」となっていた。
107と書かれた家の門が開いていたので、おばちゃんにiPhoneの画面を見せながら道を尋ねようとした。
「あ~、分かんないから。分からないわからない!」
超絶めんどくさそうに、僕の言葉になんて一切耳を傾けずに門から閉め出される。もはやギャグだ。外国人に拒否反応を示しているとしか思えない。いやぁ~聞いていた通り、グルジアの人が冷たく感じたよ。
近くで遊んでいた子供たちに、同じようにして道を尋ねると、彼らは僕と一緒に宿の場所を探してくれた。
通りをひとつ曲がった場所。てか、ここ「Tianetiストリート」じゃないよね?でも、看板にはしっかりと「Comfort Plus」と書かれていた。
かなり清潔感溢れるう宿。笑顔のキュートなスタッフさんが僕を案内してくれた。
「コーヒーにする?それともワイン?」
まさかこんな時間から、っていってももう8時だけど、ワインを勧められるとは思わなかった。
「あ、コーヒーで」
お湯を沸かす音が聞こえる。
「コーヒーは時間がかかっちゃうのよ。ごめんなさいね」
「じゃあワインで」
と応えてしまう日本人(笑)。コーヒーとワインの両方が出て来た。
「ご飯もできてるからね。レンジで温めて食べてね」グルジアの宿にはご飯がついてくるのだ。パスタ…。うめえ。ドミトリーで10ラリ(581yen)。ん~~~~…安い!
そんな風にして僕のグルジアの旅は幕を開けた。
現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。