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「チェコのおじいちゃんの家」

世界一周427日目(8/29)

「う…、」

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「あっ、」

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「おっ...、」

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「おはよ〜ございま〜す...」

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今日はヴィセットじいちゃんとの
約束の日。

7時には教会脇に立てたテントをたたんだ。
朝日がまだここまで届かず、空気はひんやりと冷たい。

ここはチェコ、ヤヴロニツ。
ガラスボタンが有名な町。

昨日会ったバイオリン弾きの
ヴィセットじいちゃんとセッションする約束をした。
今日の15時に今いる公園で会う約束だ。

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撤収を終え、昨日買っておいた
パンとトマトを胃袋に収めると、
僕はギターを取り出した。

静かな場所でこのギターを弾くと、
音がよく聴こえる。

アルペジオにもなっていない
「なんちゃってアルペジオ」でも
さまになっている。

どこからともなくお姉さんが現れて
ギターケースにコインを入れて行った。
20コロナ。約100円。


バスキングにはギターの音も
レスポンスに関係すると思った。

今まで使っていたトラベルギター、
Martin Backpackerは小ぶりで音も小さく、
一回壊しているため低音が響かなかったけど、

買ったばかりのアコースティックギターの
サウンドの力強さには自分でも驚いてしまう。
ギターってこんなに音でかかったんだって。


スカスカのバックパックを背負って
僕は昨日のカフェに向かった。

町のバー以外のお店は平日は
19時には閉店してしまうが、
その分オープンする時間もそれなりに早い。

コンセントの確保できる席で
ブログの投稿をしようとしたのだが、
Wi-Fiの調子が本当に悪い。

うーむ…。
ここはドイツで修理に出すしかないなぁ。

パソコンがネットが使えなくても
iPhoneで調べ物はできる。手帳に絵を描いたり、

パソコンで日記を書いたり、
お昼過ぎまではそんな風にして過ごした。

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昼飯は昨日と同じバーガー屋で済ませた。

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また、
ここで雑貨を仕入れることも忘れない。

ここにはガラス美術館がある。
もしかしたらそこで雑貨が手に入るかもしれない。

場所を調べてそこまで向かった。

ガラス美術館はそこまで大きくない、
ビルの3フロアを使った美術館だった。

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フロントでチケットを買って、
バックパックとギターをクロークに預けた。

コーヒーの自販機でコーヒーをすすると、
僕は館内を足早に見た。

そこにはまさに自分の探している
ガラスボタンが展示してあった。

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ヤヴロニツのどこを探しても
僕にはこんなかわいいガラスボタンを
見つけ出すことができなかった。

『どうして今、これと同じような
ガラスボタンを作らないのだろう?』
と思ってしまう。

需要がないのかもしれない。

僕がガラスボタンが仕入れられる
お店を知らないだけかもしれないが、
町の中心地では手に入れることができなかった。

今、ガラスボタンを手に入れるためには
アンティークショップに行かなければ
手に入らないのだと思う。

雑貨の本を見て
この町にやって来たわけだけれども、
あれは本職の雑貨屋さんだからこそ
手に入れられたんだなと思う。

僕はガラスボタンが
手に入れられなかった代わりに、
ガラスの熊の文鎮とアクセサリーを仕入れておいた。

これもここでしか手に入らないものだ。

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日本の誰かにて渡っても、
その人の生活に馴染んでいってくれそうな雑貨だ。


美術館を出てプラプラ歩いていると
途中で見つけた小さな店で
気色の悪い不思議な雑貨を見つけた。
これは一体…、なんなのだろう?

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また、美術館のお姉さんに他にも
ガラス製品の売っている場所を訊いて、
実際にそこへ足を運んでみたが、

今のヤヴロニツは需要のある
アクセサリーのような製品しか作っていないようだった。

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そろそろ約束の時間だ。
待ち合わせ場所の公園に行こう。

公園にはヴィセッツじいちゃんの姿は見られなかった。

昨日じいちゃんに出会った時のように
ギターを弾こうと思った。

きっとじいちゃんもギターの音を聞けば、
僕がここにいることが分かるだろうと考えたのだ。

チューナーを取り出そうと
ギターのサイドポケットのジッパーを開けー、
開けー、



「あれ…?開いてる」



サイドポケットに手を突っ込み
中を探ってみるがチューナーを
見つけることはできなかった。

そんな!おかしいぞ!
こんな買ったばかりのケースのポケットを
締め忘れるだなんて!

しかもおかしいことに二つあるサイドポケットの
どちらとも全開で開いていたのだ。

不自然過ぎる…。

さっきいたカフェでトイレに行っている間に
盗られたに違いない。

サブバッグはもちろん
肌身離さずトイレに持っていた。

僕に背を向けるように座っていた
地元の若者(一人)は
僕がトイレから戻って来た時には
いなくなっていたのを思い出した。

たぶんあの時だ…。


買って3日くらいしか経っていないチューナーが
そっこーで盗まれた。

二日連続で盗難にあっている僕から言わせてもらえば、
ここではチャンスがあれば
何を盗ったって許されるのだ。

てかチューナーなんて盗ってどうすんだよ…。


一応、サブバッグを整理して
チューナーを探している時に
ひょっこりヴィセットじいちゃんが現れた。

昨日の朝に会った時よりも綺麗な格好をしている。

「これ、よかったら食べなさい」
と僕にパンをくれた。

ここでテンションを下げていても仕方が無い。

今日はじいちゃんとセッションするために
ここに残ったのだから。

じいちゃんが言うには
ヤヴロニツからバスでどこかに向かうらしい。

バス代はじいちゃんが払ってくれた。


町の中心地から
15分くらい行ったところにあったのは
バーだった。

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周りは冬になるとスキー場になるらしく、
ゲレンデやコテージの看板が見えた。

バーの中には、スタイルの良い
ママさんみたいな人が一人で切り盛りしていた。

15時のバーには地元のおちゃんたちが
4~5人くらいしかいなかった。

ヴィセットじいちゃんは
僕にビールをごちそうしてくれた。

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チェコのビールだなんて初めてだよ…。
ちょっと甘みを感じた。

こちらもお返しに久々の名刺を描いた。

おじいちゃんには
線が細か過ぎる絵かなぁ?

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出来きもイマイチだし
個人的には納得のいかない名刺だったが、
ヴィセットじいちゃんはそれをすごく喜んで、
僕にハグをしてくれた。

てか、僕、お酒飲むと
声出なくなっちゃうんだよね…。


チビチビとビールをすすり、
コンディションを崩さないように注意する。

「じゃあそろそろやろうか?」

とじいちゃんのタイミングで
僕は店内でギターを弾いた。

ヴィセットじいちゃんは僕の歌に会わせて
バイオリンを弾いてくれる。

部屋の隅っこのテーブルに座った
おっちゃんグループは全く僕たちのことを
気にしていなかったが
(それもそれでちょっと寂しいんだけど)、

一人でやって来ていたおっちゃんは
僕にジョッキのビールを一杯
プレゼントしてくれた。

まだ、このグラスビールですら
全部飲めてないのに…。

サラダもごちそうになりました。

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そうこうするうちにやって来たのは
じいちゃんの友達たちだった。

一人は英語を喋れ、
僕とヴィセットじいちゃんの通訳をしてくれる。

夫婦で来た二人はギターを持って来ていた。
英語のカントリーソングを僕に聴かせてくれた。

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「でー、シミは今晩はどうするんだい?」
と旦那さんが僕に尋ねた。


「また公園でキャンプっすかね?」

「パヴロ(ヴィセットはニックネームらしい)は、
『うちに来ないか?』って言ってるよ?」

「え??!!いいんですか?」

「もちろん!」と満面の笑みで
頭を縦に振るパヴロじいちゃん。

ここまで車で来ていた友達に送ってもらい
パウロじいちゃんの家まで送ってもらった。





パヴロじいちゃんの家は
なんと公園のすぐ隣りだった。

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大家さんもこの家に住んでいるらしい。

小さな黒い犬が僕の臭いをクンクンと嗅いでいる。
大人しいいい犬だった。

初めて入ったチェコのお宅。

見るもの全てがまさに
自分のイメージしていたチェコだった。

置いているなんてことないものまで、
僕にはセンスがあるとしか言えなかった。

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じいちゃんの借りている二階のリビングルームには
古いターンテーブルや
ヴィンテージのピアノが置いてあり、
部屋の中心には丸いテーブルが置かれている。


「コーヒーでも飲むかい?」

とじいちゃんは僕にコーヒーを淹れてくれた。

他の部屋にはじいちゃんのアトリエのようなものがあり、
じいちゃんの描いた絵や写真が貼ってあった。

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僕は飾ってある写真をじっと眺めた。

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カラーの物から白黒のものまで、
そこにはパヴロじいちゃんの歴史が詰まっていた。

たぶん横にいるのは奥さんなのかな?
これは息子さんだろうか?と
じいちゃんと一緒に写っている人が
誰なのかを想像する。

だけどー、今ここに住んでいるのは
じいちゃんだけだ。



リビングの脇の小さな部屋で
パヴロじいちゃんの作ってくれた
晩ご飯をいただいた。

キッチンにもパヴロじいちゃんの
10年以上前の写真が貼られていた。

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自分で作った料理を自慢げに見せるじいちゃんの顔。


「そうだよな。人生ってさ、こうあるべきだよな」

もちろん戦争も経験して、
いくつもの別れも経験してきたのだろう。

じいちゃんからは
とても温かいものを感じた。

僕もじいちゃんのように
歳を重ねて行くことができるのだろうか?


夕食後、大家さんを交えて、
僕とパヴロじいちゃんはワインを飲みながら
再びセッションした。

もちろん、ジャズみたいな即興ではなく、
僕の歌に合わせてじいちゃんが
合わせてくれるわけなんだけど、
それでも今までにないこの音楽体験に
僕は始終頬を緩めっぱなしだった。

お酒に酔っていたってものある。

屋根もシャワーもソファもある。

心が満たされれば、僕は幸せだ。

それは間違いないよ。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。