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「リンゴの木の村 in チェコ」

世界一周426日目(8/27)

斜面にテントを立てたため
上手く寝れなかった。

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気づいたら自分の体が
テントのはしの方に移動してるし、
マット代わりの段ボールから体がずれると、
背中に地面から寒さが伝わってきた。

気温もプラハよりぐっと下がった。

春夏様の寝袋だと心もとないので、
ここ数日は新しく買ったイマージェンシーシートを
布団のようにかけて寝ている。
寒さは大分しのげるようになった。

あとは平面にテントを設営することだな。


テント越しに空が
明るくなってきたのが分かる。

もう少し寝よう…。

テントの中からは見えないが、
外を人が歩くのが分かる。

だけど、こんなところに突如出現したテントを
誰も気にしてないようだ。

足音はそのまま素通りしていく。

ここは野宿しやすい町だな♪

そんな風にして二度寝をキメようと思っていた矢先、
飼い主から放られた犬用のボールが
テントに当たって、ビックリして飛び起きた。

近所の悪ガキから石が投げられたのかと思ったよ!

テントから顔を出し。状況を確認する。

テントを不思議そうに覗きこむ犬。
僕の姿を見ても吠えはしなかった。いい犬だ♪

飼い主さんに軽く会釈すると
向こうも手を振り替えしてくれた。

ここはチェコ、
ヤヴロニツ・ナド・ニソウという町。

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「ヤヴロニツ」というのは
「リンゴの木の村」という意味らしい。

ちなみに「ナド・ニソウ」は
「ナイセ川沿いの河畔」と言う意味なんだとか。

僕はここに雑貨を仕入れに来たのだ。


いくつかの国々で仕入れた雑貨は
盗まれてしまったけど
(っていうかバックパック丸ごととギターも盗られたけど)
ここでしか手に入らない物だったら
仕入れてもいいかもしれない。

ヤヴロニツの存在を大阪にある
北欧雑貨屋「チャルカ」の出版している本で知った。

ここはガラスボタンが有名らしい。

ドイツの近くにあるこのヤヴロニツの町は、
何百年も前にドイツからガラス職人がやって来て、
その技術を伝えたというのだ。

ガラスボタンて一体どんなんだろう?

ガラス職人ってどこにいるんだろう?

そんなことを考えながら
テントをたたんで、残っていた食糧をほおばった。



8時になるとだんだんと温かくなってきた。

ベンチに着いた朝露に濡れないように
ビニール袋を敷いて座った。

朝の公園はまさにギターを弾くのに
ぴったしのシチュエーションだった。

朝日を木々の葉が受け、
風に揺れているのを見ると、
なんだかフレッシュな気持ちになれる。


朝の公園が好きだ。

チューナーで音を合わせて、
適当にコードや弦を弾いていく。

歌詞はない。

買ったばかりのギターの音が心地いい。


一曲、
というかひと呼吸おくと、
おじいさんがやって来て

「ワシもヴァイリンを持っているんだよ!」
と僕に自慢げに話してくれた。

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年期の入った迷彩柄のジャケットに黄色の靴下とサンダル。

パッと見、ホームレスかと思ったが、
そうではなさそうだ。
自分が言うのもなんだけどね(笑)。

おじいさんは自分の家から
本当にヴァイオリンを持ち出して、
「さあ一緒にセッションしよう!」と
僕を誘ってくれた。

英語はまるきり話せないおじいさんだったけど、
そこに音楽があれば言葉はいらない。


おじいさんは見かけよりも
ずっとヴァイオリンが上手かった。

しわくちゃになった指で
僕の曲に合わせて弾いてくれる。

簡単な"Stand by me"と
"Let it be""の二曲を合わせた。

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「いいね」

犬の飼い主さんが僕たちに拍手して言ってくれた。

「普段だったらこんなところで
朝からギターなんか弾かれたら
注意するけどね。いいね♪」

犬の飼い主さんは英語が喋れた。


ヴァイオリンおじさんが
ここでの滞在期間を僕に尋ねているようだった。

「もし明日もヤヴロニツにいるなら
友達の前でセッションしよう!」

なんか楽しそうだ…。


これだよ。これだよ!
楽器持っていることのいいことって!

だって朝の公園でたかだか
10分ギター弾いてただけで、
チェコのおじいさんと仲良くなれちゃうんだから!

明日もこの町に滞在することを僕は決めた。



おじいさんと別れた後、
軽くなったバックパックを背負って
町をブラっと歩いた。

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町のちいさなファストフード店は
プラハに比べ値段が安かった。

立った一人でお店をまわしている店長は
陽気に口笛を吹きながらテキパキと仕事をこなしている。

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いつもパンとトマトとプラムばかりじゃ物足りない。
こういうのも食べておかなくちゃいけない!

ふかふかしたバンズに分厚いハム。
シャキシャキのレタス。

かぶりつくとバンズから
ケチャップとマスタードがはみ出た。

はみでたソースが残らないように
うまくハンバーガーを食べるのはちょっと大変だった。
そして美味しい物を食べると元気になれた。

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さてと、腹ごしらえも済んだし、
そうだな。まずは情報収集からといこう。

僕はバスターミナルに向かって、
この町からドイツへ向かう方法を訊いておいた。

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次ぼ目的地はよいよドイツだ。

ヨーロッパに住む人全員が
英語が話せるわけではない。

バスのチケット売り場にたまたま
英語の話せるお姉さんがいたからよかったけど、
最初に声をかけたおばさんは
マジで困った顔をしていた。


「英語なんて話せないからあっち行って!」
みたいなリアクションをされた時は

「ちょちょちょちょちょっっ!
ちょっと待って!」
って慌てたよね。

旅をしていると、
相手が英語を喋れて当然のように
錯覚してしまうようになる。

日本語なんて伝わらないのは当然だし、
頼るのは英語しかないのだから。


分かったことはここから直通の
ドイツ行きのバスは出ているらしいのだが、
3日後。

そうなると余分にここに滞在しなきゃならない。

一瞬、

『おじいさんとの
約束なんてすっぽかして、
明日出発しようか?』

とゲスな考えが浮かんだのだが、
自分がなんのためにギターを
手に入れたのかを思い出した。

バスターミナルでコーヒーを一杯飲むと、
再びバックパックを背負って、
今度は駅へと向かった。

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途中にあったアンティークショップを覗いてみると、
そこにはガラスボタンが
あったことにはあったのだが、
僕が買えるような値段ではなかった。

100年以上昔のものを「アンティーク」、
それより新しいものを「ヴィンテージ」と呼ぶらしい。

やっぱりチャルカが仕入れてる雑貨たちって
素人には手が出せないようなものなんだなと
改めて感じた。


駅に着いた僕は盗まれていない
数少ない所持品のメモ帳で
窓口の駅員さんとやり取りする。

日付と国境の町の名前を書いて
チケットを手に入れた。

次に進むための手段だけ確保してしまうと、
僕はようやく雑貨探しへと繰り出した。

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ヤブロニツの町自体はそんなに大きな町じゃない。

町の中心地には薬局や服屋、
スーパーなんかある程度のお店が密集しているのだが、
そんなところにガラスボタンを扱うお店なんて
あるのだろうか?

もっと町の端っこにあるんじゃないか?

そう狙いをつけて、ヤヴロニツの町を
ぐるっと回るようにしてガラスボタンを探したのだが、
町の中心地から離れれば離れるほど、
辺りは静かな住宅地へと変わっていたった。

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雑貨を仕入れることについて考える。

工場に直接発注をかける人もいれば、
現地のコネクションみたいなのもあるんだろうな。

一番簡単なのは観光地で売られている
お土産を買うことだけど…

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結局僕は町の中心地へと戻って来た。

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見つけたガラクタ市や周辺の小さなお店で
ベタな雑貨とも言えなくもないチェコの雑貨を仕入れ、
さっきは行っていない方向へ歩いて行った。

面白そうなお店を見つけると
僕は足を止めた。

ディスプレイに展示された味のある置物に、
一見そこが雑貨屋のように思えたのだが、
そこはこじんまりとしたカフェだった。

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店内に入るとコーヒー豆のいい匂いが香った。

理科の実験で見たフラスコみたいな
ガラスの容器でコーヒーを淹れている。

僕はこのお店をすぐに気に入った。

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お店のオーナーはハンドメイドの
自分の雑貨も売っていた。

カーテンの隙間から奥の部屋が
作業場になっていることが分かった。



『雑貨を仕入れるならここだな』

そう僕は思った。

その町でしか手に入らない、オリジナルの雑貨。

僕はカラスの絵がプリントされた
マグカップとアクセサリーを仕入れた。

そしてお店にたったふたつしかない椅子に座って、
サイフォンで淹れたコーヒーをゆっくりと味わった。

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雑貨を仕入れる他にも
やりたいことはあった。

買ったばかりのギターをこの町で弾いてみたい。

一番人通りのありそうな通りで
ギターを構えたが、ここは小さな町だ。

人通りもまばらでレスポンスがありそうな
シチュエーションではなかった。

それでもよかった。

まず第一に自分が楽しむことが大事。

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通りはほんとうに静かで
ギターと自分の声がよく響いた。

気持ちよく唄っていると、
通りかかった人たちがニコニコしながら
コインをギターケースに入れてくられた。

最後の方にやってきたガキんちょたちは、
こんなところで唄っているアジア人が
たいそう珍しいようだった。

ケースに入ったお金を見て
信じられないような顔をしている。

一番小さな坊主頭のガキんちょが
おぼつかない英語で僕に言った。

「give me money!(お金くれ!)」

はははは。

君もギターを買ったらいいんじゃない?

笑顔で断る僕。

こんな小さな町でレスポンスが
あるなんて思わなかったのに。
良いバスキングだったぜ♪

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この町のお店は早い時間に閉まる。

Wi-Fiの入るカフェでジュースを注文して、
一時間だけネットに繋いだ。

お店の閉店後はお店の外で
タバコを吸いながら弱いWi-Fiを使った。

そろそろ今日を終わりにしよう。


日が暮れた町を昨日の公園へと向かう。

教会の脇に目立たないようにテントを立てた。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。