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「雨の中のヒッチハイカー in ジョージア」

世界一周325日目(5/19)

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なんだかんだで、「Comfort Place」に6日間滞在した。そして今日僕はここを発つ。

とかかっこつけといてスヌーズ5回くらいかけなおしたかな?起きたのは9時半。サクサク動かないと!

ここから向かう先はShatili(シャティーリ)という町だか村だか。同じ宿に泊まっているお喋りおじさん、マイクの一押しの場所だった。何年か前にこの場所を訪れているマイクは、ここでアーティストの家族と仲良くなったらしい。「君のギターがあればきっと安く泊めてもらえるよ」という言葉を信じて、その家族の電話番号を教えてもらったり、どうやってそこへアクセスするのかをマイクおじさんからしっかり聞いておいた。

だが、バスは夕方の4時だか5時にならないとシャティーリ行きはないと言う。いや、その途中までなのか?いずれにせよ、シャティーリに到着するのは夜中になってしまいそうだ…。

「ヒッチハイク…、とかできないっすかね?」

「ワーオ!ヒッチハイク?アドベンチャーじゃないか!時間もまだあるしね。それも面白そうだ!是非やってみるといいよ!僕ならそうするね!それならうんたらかんたらぺちゃくちゃぺちゃくちゃ〜...」

ひとつの質問に対して5~6の情報でもって応えてくれるマイクおじさん(笑)。

分かったことはトビリシからZhinvali(ジンバリ)という場所までマルシュルートカで向かって、そっからヒッチハイクするということだ。マルシュにはメトロでディドゥベという駅に向かい、そこからマルシェに乗りこむ。先日待ち歩きでディドゥベには行ったことがあるから楽勝だぜ!

久々に重たいバックパックを背負ってマルシェのターミナルへと向かった。

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どこからジンバリ行きのマルシェが出ているのか分からない。そのくらいターミナルには沢山のマルシェが溢れている。

向こうには英語は通じないので「ジンバリ!ジンバリ?」なんてiPhoneで撮影したマップを見せたり、ノートを見せたり、とりあえずおっちゃんたちに訊きまくる。

「あぁ、ジンバリだろ?こっちだ!」

「あ!サンキュー!」

「で、ジンバリの次はどこに行くんだ?」

「え?シャティーリだけど?」

「なら300ラリ(17,323yen)だ」

ん?待て待てまてまて、まてよ。んなバカなことあるかい!だって、ジンバリまで2ラリで行けるんだぞ!念のためレートアプリで計算する。あからさまなボリ。や、きっと彼らはタクシードライバーかなんかだ。あるいは「30.0」ってことなのだろうか?それでも1700円。こういう時は他の人にも訊きまくることだ。もともと僕はヒッチハイクするるもりだった。ジンバリ行きのマルシェを発見し、値段を訊くと2ラリ(115yen)。ですよね。

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マルシェの中では外の景色を見るでもなく、ただただウトウトしていた。

「寝過ぎて眠い」

そんな経験がないだろうか?睡眠障害なのか?グルジアに来てから睡眠時間がやたらに長いし、日中眠くなることが多い。

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気がついたらドライバーに起こされた。辺りには何もない。タクシー乗り場のようで、何台かタクシーがお客を待っている。僕も声をかけられたが、笑顔で勧誘を断った。


次の目的地はBarisakho(バリサコ)という場所。そこまで行けばローカルバスに乗れるらしい。

僕はやって来た方向に向けて親指を立てた。

アルメニアでも大丈夫だったんだ。お隣の国でもヒッチハイクができるに違いない!グルジア大好きのマイクおじさんが言ってたんだ。きっと大丈夫だろう。そんな期待も甘く、車は止まる気配を見せずに全速力で僕の前を過ぎ去っていく。ハンドルに手を当てて、ヒラヒラと手を振ってくれればまだいいものだ。僕のことなんて目に入っていないのかもしれない。ちょっと寂しいぜ…。

回りのタクシードライバーたちは「何をバカなことやっているんだ?」と僕のことを面白おかしく見ている。目的地を聞くと、僕に張り紙を見せてくれた。

「シャティーリ PM9:00」

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いやいやいやいや!そんな待てないって!おれには親指を立て続けることしかできないんだぁ~~~~!!!

何でもそうだと思う。長期戦は最初の30分~1時間が長く感じられる。羊の群れが僕の前を横切っていった。ヨボヨボの牧羊犬が足をびっこで引きずりながら群れの後ろをついていった。空には薄い雲がかかっていた。そういえば宿の誰かが「今日明日は雨」って言ってたっけ…。降らなきゃいいんだけど…。

僕は何も親指を馬鹿の一つ覚えみたいに立て続けているわけじゃない。ちゃんとフリーハンドを100%活用する。満面の笑みでドライバーに向けて手を振ってるわけなんだけど…、

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止まらない…。

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止まらないよぉ~~~!!!

それでも躍起になって、口角ひきつりながらヒッチハイクを続けているとなんとか一台の車が止まってくれた。

「ほら!止まったぞ!」

周りのタクシードライバーたちが僕に教えてくれる。ダッシュで車に駆け寄る僕。

「えっと!バリサコまで行きますか!」

「あぁ、悪いんだけど、カズベキ方面なんだよ」

「か、カズベキ!」

僕のプランではシャティーリの次に向かおうとしていた場所だ。

これは…、「カズベキに行け」っていうことかっっっ!!!

「大丈夫っす!カズベキ方面で!」

「おい!そっちはシャティーリ方面じゃないぞ!」

タクシーのおっちゃんたちが僕に言う。

「いや!やっぱカズベキで!」

時に旅人には柔軟性も求められる。



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車はTOYOTAのワゴン車だった。おっちゃんの名前はショータさんという。なんだか日本にもいそうだ名前だな。同い年くらいのヤツらで。

ショータさんの目的地はカズベキ方面のPasanauri(パサノウリ)という町。60kmほどでカズベキに着くらしい。なんだけっこう近いところだな。じゃあ次のヒッチも楽勝だろう。

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車は時速100km以上で道路を飛ばす。
僕たち以外の車は見当たらない。
車内にはロシアのポップミュージックがかかっていた。

いつの間にか雨が振り出した。ワイパーがフロントガラスに落ちた雨水を払うため、なんども僕の前を行ったり来たりした。


パサノウリは森の中にある小さな町だった。

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窓ガラス越しに外を見ると、雨に濡れた野良犬たちがごみ箱の周りをトボトボと歩いていた。野良犬の存在が僕を少し不安にさせた。

「ここがレストランだから」

そう言ってショータさんは僕を降ろしてくれた。僕は車の外で一礼し、ショータさんの車を見送った。ショータさんの車はまたパサノウリの町に引き返していった。わざわざここまで僕を運んで来てくれたことがわかった。いい人に乗せてもらったな…。

ヒッチハイクを続けようとしたが雨は止むどころか激しさを増した。僕は一時中断してレストランの方を覗いてみることにした。その一部は工事中でむっつりした作業員たちが内装工事をしている。レストランの前には肉を焼くBBQのようなコンロがあり、その前にある丸太の椅子にスタッフのおっちゃんが何をするでもなく座っていた。手招きするので行ってみると、グルジアの言葉で一方的に喋ってきた。「ここはヒッチハイクなんてやっても無駄だぞ」みないなことを言っているのだろうか?

「うん。でもやるしかないんだよ」

こんなところで足止めなんてシャレにならない。

雨の当たらない所にバックパックを置かせてもらい、サブバッグだけ背負って僕は親指を立てた。

ただでさえ車の数が少ないのに、雨の中ヒッチハイクをするヤツを果たして車に乗せるだろうか?僕だったらちょっと躊躇しちゃうな。


レストランの入り口は人一人分のスペースだけ雨がしのげるようになっていた。

車が来ない間はそこで待機し、車の姿が見えると僕は親指を立て、ドライバーに向けて手を振った。だが、ここでも車は止まる気配を見せなかった。雨がしのげるレストランの入り口で突っ立っていると体温が下がる。体温の低下は体力の低下につながる。僕はその場で軽く足踏みし、出来るだけ体を冷やさないように心がけた。車が止まったかと思えばレストランに入ってくる車がほとんどだ。そういう時には少しがっかりして、また雨のしげるポジションで体を動かした。手がかじかんでうまく握りこぶしを作ることができないほどだ。

マップアプリで確認するとStepantsminda(ステファンツミンダ)という村をカズベキと呼んでいるようだった。カズベキは山の名前らしい。そうか。ロシアに近いのか…。どうりで寒いわけだ。

外のコンロで肉を焼いているおっちゃんが再び僕を呼ぶ。行ってみると、またよく分からないことを言ってくる。別に怒っているわけでも、ここから出て行けと言っているわけでもない。きっと「タクシーを使え」とかアドバイス的なことなんだろうけど、やっぱりよく分からない。おっちゃんと話していると、数少ない車が通り過ぎていった。もしかしたらあれに乗れたかもしれないな…。ついついそう考えてしまう。

雨の中のヒッチハイクがここまで心細いものだとは分からなかった。天気予報をちゃんと考慮して行動すべきだったな…。雨の中のヒッチハイクは遭難者が彼方に浮かぶ船に向かって手を振るようなものだ。止まってくれる車はあるのだろうか?



一台の車が止まった。
レストランを少し過ぎたあたりで停車し、僕の存在に気づいていることを伝えるようにテールランプが数回点滅した。僕は全速力で駆け寄り、目的地を告げる。

ワゴン車よりも大きめの車で、車の中にはドライバーは他に男の人が3人乗っていた。僕は大急ぎでバックパックを取りに戻り、後部座席にバックパックを置いた。ヒッチハイクを開始してからジャスト一時時間。それの何倍にも長く感じた1時間だった。

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車の中は温かく、温度差を示すように窓ガラスは白く曇っていた。雨の中でヒッチハイクして冷えた僕の体は、車の中でじんわりと温められた。

景色がどんどん変わっていくのがわかる。
山の上には雪をかぶっているものさえあった。

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ここでも気づいたらウトウトし、声をかけられて目を覚ますとそこがカズベキだった。見た感じ何もない場所だ。

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なぜか村の中心地には観光客向けにだろう。カフェがいくつもあった。雨と寒さが余計に寂しさを演出していた。

僕は近くの自動販売機で1ラリのホワイトコーヒーをすすった。どういうわけだか、お釣りを吐き出さないポンコツで、そんなことを知らずに2ラリコインをいれてしまった僕は、目の前の両替屋の兄さんが僕に1ラリコインを渡してくれなかったら、おもいっきり蹴りを食らわせていたことだろう。


「さて宿探しか…」

グルジアの他の村では民泊が主流らしい。マルシェを降りるとおばあちゃんが「うちへいらっしゃい」と自宅に招いてくれるらしいが…。こんな雨では誰も僕を迎えに来ない。幸いマップアプリにはゲストハウスが示されていた。僕はバックパックを背負ってそのうちのひとつに向かった。

ひとつめは20ラリ(1,154yen)。ご飯つきで。食事なしだと15ラリ(866yen)らしい。一気に値段が上がった。

「ちょっと待ってね」と他の宿に当たろうとそこを離れた、するとすぐ近くにいたふくよかなおばさんが僕に営業をかけてきた。

「うちならWi-Fiもホットシャワーもあるわよ!」

ネット依存所の僕はこの殺し文句にやられてしまった。ご飯なしで15ラリなのは同じだ。

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招かれた家は大分綺麗な家だった。

ニノさんと名乗るふくよかなおばさんは、自宅の名刺まで持っていた。ツーリスト向けに宣伝しているのだろう。ステファンツミンダの村をプラプラと散策し、得られた食べ物は大きなパンとリンゴだけだった。

5ラリ多く払えばご飯にあるつけるのか…。
「この節約はなんなんだろう?」と考えてしまう。

荷物をベッドを脇に置き、Patagoniaのアウターを椅子にかけると僕はシャワーも浴びずにそのままベッドに横になった。
時刻は19時。そとは曇り空。
数時間の眠りから目覚めると外からは激しい雨音が聞こえた。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。