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「沈没者のカメラウーマンと in ジョージア」

世界一周331日目(5/25)

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僕はカメラの修理のためにここに滞在している。決して沈没してるわけじゃない。決して!

夜中の3時頃に友達からLINEでメッセージが来たのは覚えている。日本との時差は5時間。今日は僕が大学時代に在籍した「ごみゼロナビゲーション」の仲間の披露宴だ。幹事に抜擢された友達はこの三週間走り回っていた。どうやら寝てないらしい。今日でオール3日目らしい。果たして大丈夫なんだろうか?

LINEで送られて来たのはアルメニアから郵送した原稿用紙が新郎新婦にプレゼントするために額縁に入れられた写真だった。「寝過ごすなよ」と返信した僕が目覚めたのは10時過ぎ。うん…。寝過ぎた。幹事の君の分寝ておいたんだ…ぜ?


なんかナヤさん、勝手に耕し始めちゃったよ…(笑) 

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披露宴がうまくいってるのかすげぇ気になる。友達メッセージを送るが返事は返って来ない。もしかして寝過ごした!!??外に出れず、ベッドの中で泣いてるんじゃねえの…???次々にアップされる他の仲間の「披露宴楽しかった♪」のFacebookの投稿。うん!楽しかったのはいいんだけど、ヤツは幹事としてうまくやったのか!!??おれの爆笑間違いなしのビデオレターはどうなったんだ??!!うぐぅ…何も手に着かない…。

キーボードを叩いて日記をカタカタ描いたり、ウダウダ調べ物をして過ごした。完全なる沈没。

 お気に入りのnudie jeansも洗濯しておかなきゃね!

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そしてここにもう一人「沈没者」がいる。

カメラウーマンのお姉さん、メグミねえさんだ(つってもたった一コ上)。

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僕がカズベキからここに再び戻って来た時からここにいる。メグミさんは滞在して4日目くらいだろう。

初日に少しお話させてもらったが、僕が漫画を描き始めた日は一日中ベッドの上でドラマを見ていた(「半沢直樹」だったらしい)。次の日は共有スペースのソファに座って、打ち込み系の音楽からジャズまで幅広くかけ、外国人のお友達と2時間くらい英語で喋っていた(フランス人だったらしい)。夜になって韓国のキューやチャンソクとお喋りしてる時は、日本の友達とずっとスカイプで喋っていた。

漫画を描き終えた3日目は、昨日と同じように音楽をかけたり、近くにフラっと出かけて行ってまたすぐに帰ってきて、パソコンから音楽を流していた。僕に負けず劣らずのなかなかの沈没っぷり!同じ宿に泊まっていても、会話がほとんどない。てかしゃべりかけにくい…。

おれ、あのお姉さんと仲良くなれねだろうな~…だってコミュニケーション・バリアーはんぱないもん!や、おれのコミュニケーション能力がないのか…???まぁ、話してみるとそんなこたぁない。


メグミねーさんはすごく気さくなお姉さんだった。僕と同じく世界一周をしていて、東回り。カメラも本職と言うわけではなく、セミプロ(ってなんだ)らしい。プロ仕様のカメラを持っていた。シャッター音がいい。「カシャッ」ではなく、「カシュッ」。どこか重低音のある音。僕のカメラのシャッター音がおもちゃみたいに聞こえるくらいだ。
見せてもらった写真は、僕が日本にいた時、世界を旅することに憧れていたあの時の気持ちを思い出させた。南米の海の写真が印象的だった。世界はこんなにきれいなのか。そう思わせてくれる写真だった。

「よかったら、音楽とかいる?」

「えっ!!??マジっすか!ざっす!」

「いいのいいの。私も昨日カズさんから沢山もらって、今整理してるとこだから。どんなのが欲しい?」

「じゃあ、作業BGM的にサーフ系やジャズ入れてもらっていいですか?」

「はーい。じゃあインスト系ね」

こういう時に、何かお返しをしなくちゃと思ってしまうのが僕だ。思い浮かべるワードは「時給換算」だ笑。

お金か??食べ物か???

いや、名刺っしょー笑。

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「え~!わたしすっぴんなのに!いつもだけど。」

「顔出しNGなら今のうちにうっちゃってくださいね。Facebookのアルバムに載っけちゃいますから(笑)」

「や~、全然いいよ。ブログにも顔出ししてるし」


「何かを創る」それはお互い同じだ。

僕は漫画を描き、メグミさんは自分の世界を写真で表現する。メグミさんはカメラで写真を撮ることを「恣意的」と言った。そこにはシャッターを押す人間の意図が込められる。どういう構図でその瞬間をとらえるか。早起きして朝日を撮りに行ったをとしても、自分の思い描く様な写真はとれない時もある。

納得できる写真は100枚とって1枚くらいの割合らしい。撮れば撮るほど、写真を撮ることの難しさを感じる。自分の撮った写真を人に見られると緊張するとメグミさんは言っていた。クリエイターの言葉だ。本職のカメラをやっている人はものすごい知識量と経験量らしい。イリーガルなことまで詳しいそうだ。そういう人たちと話すと、自分の勉強の至らなさを感じる、とメグミさんは言った。

それは僕も一緒だ。時々自分のやっていることが、「旅漫画」を描くためのものなのか自信が持てなくなる時がある。もっと観光地に行って、ツアーに参加して、もっといろんな現地の料理を食べなくちゃダメなんじゃないのか?そんなことをメグミさんに打ち明けた。

「いいねん♪いんねん♪やりたい時にやればいいねん♪だって今は心の底から「やりたい!」って思わないでしょ?そう思った時にやればいいの「何でも自分の芸の肥やしにしろ」♪」

「なんすかそれ?」

「ん?自分で考えた」

「いいっすね♪それ」

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メグミさんは世界一周を終えたあとかいつかはわからないが、この後、ドイツのスタジオでワーキングホリデーの予定らしい。

「ドイツ語喋れるんすか??!!」

「いやぁ、全然。基本「なんとかなるさ~」って向こう見ずに行きてるから♪」

なんてユルいこともいいつつも、メグミさんはきっとカメラの仕事で食っていくだろう。その行動力には僕も見習いたいところがある。

「いつもはこんなにダラけてないから!ここへは「休暇をとりに」きたの!だからシミは私のダメ部分しか見てないからね!」

アクティヴにいろんなところを駆け回って写真を撮っていたメグミさんは、ここに来る前から「Comfort Plus」で沈没しようと決めていたらしい。次に向かう先はアルメニア、エレバンだ。

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降っていた雨はいつのまにか止んだ。いい旅立ちだ。

「それじゃあ!」

サイドスローのように横に振りかぶった腕。

お互いの健闘を祈るように手と手が「バシッ」と合わさる(ちょっとズレたけど笑)。

そうして雨上がりの涼しい空の下、カメラウーマンのメグミさんは次の目的地へと旅立っていった。

またどこかで。

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さてー、僕はー。

そう言えば、友達はどうなっただろうか。返ってきたメッセージには「ここどこだ?海老名にいるらしい」だった。一緒に送られてきた左手の写真にはひらがなで「えびなでおりる」と書かれていた。ちょっ…酔い過ぎ笑。

まぁ、披露宴が成功したみたいだ。よかった。よかった。

現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。