見出し画像

「ダージリンの郵便局員は不細工な枕を作るのか?」

世界一周248日目(3/3)

画像1

警戒心を抱くくらいにフレンドリーなネパール人のおっちゃんが「是非うちに泊まりに来てくれ!」と誘ってくれた。

外国人の僕に対して友好的に接してくれるのはとても嬉しいんだけど、タバコを何本もくれたり、チャイをごちそうしてくれて、一銭たりともお金を受け取ろうとしないこのフレンドリーさに僕はどうしても

あ、怪しい…!!!』と思ってしまうのだ。

そんなおっちゃんの名前はジャパンさんという。偽名なのだろうか…?テンジン・ロックという場所でロッククライミングの仕事をしているらしい。他にもツアーやトレッキングのガイドをしているのだとか。

なぜか朝しか使えないチョーラスタ広場のフリーのWi-Fiにありついたあと、僕はテンジン・ロックとやらに行ってみることにした。

山の上にあるダージリンからヒマラヤ山脈を見ることができた。

画像2

ここから見える一番高い山がエベレストというわけではない。どこから見るかによって表情を変えるヒマラヤ。青空と同化するように遠くの方にあるヒマラヤを見ると思わず足を止めてしまう。

途中、何人もの人に道を訊いてやって来たテンジン・ロック。どうやらロッククライミングもできる場所みたいだ。

画像3

画像4

画像5

山道の途中に「デンっ!」と急遽出現するこの岩。

ガードレールの下の方まで続いている。どれくらい大きな岩なのだろうか?てか誰が一番最初に登ろうとしたんだろうか?


僕が近くの売店でダージリン・ティーを飲んでいるとジャパンさんがやって来た。

正直言うと、ジャパンさんのことをそこまで信用していなかった。『どうせ来てもいないんじゃないだろうか?』なんて思っていたわけだ。

道具も何も着けずにスルスルと岩に登る姿を見た僕はこのおっちゃんのことをちょっとだけ信じてみることにした。

画像6

「今日うちに来るのかい?」
「いや、実は今日の分も宿代を払ちゃったんだ(これは本当だ)。だから、明日ホームステイさせてもらってもいいかな?」
「ああ。いいとも」
「それじゃ、明日のこの時間に来るよ」

インドで初のホームステイ。まぁダージリンは随分独特な雰囲気を持った場所だし、相手はネパール人だけどね。だけど、面白い体験になるかもしれない。いつもだったら警戒して適当な理由をつけて断っていた僕だけど、今回はいつもと違った環境に飛び込んでみよう!僕はジャパンさんと別れ告げ、宿に戻った。



画像7

午後はネパールから持ち込んだ雑貨をいよいよ日本に郵送することにした。

出発点は「ごっこ」だけど、仕入れを重ねる度にフリマのお店のストーリー(コンセプト)やどんな雑貨を仕入れていくのかが見えてきた気がする。今回仕入れたのはブランケットやタイダイTや僕たちの大好きなライトカバーetc…。手提げ袋×2で重さもハンパない。

なぜネパールで郵送しなかったのかと言うと、その評判の悪さからだった。日本に着くのに時間がかかるだとか、中の物が盗まれてしまうだとか、ネパールにいた日本人の方々も「郵送するならインドの方がいいよ」と言っていたからだ。

だけど、ここは山の上。ダージリン。郵送費どれくらいなんだろう…?

不安な気持ちを抱えて向かったポストオフィス。中はたくさんの人で混み合っていた。もう列なんてどこにあるのかも分からない。

週明けだからか?(今日は月曜日)大声でどこに行けばいいのか訊いて、言われた窓口に行くも、人がいない。

窓口の向こう側では郵便局員たちが忙しそうに仕事をしている。

「ほら、こっちだ」と机に座ったおっちゃんに呼ばれる。

画像8

あぁ、なんだ。おっちゃんが担当の人なんだね。よかったよ。一体いつになったら自分の番がまわってくるのか心配してたんだ。もしかしたら今日は一日郵送手続きで終わっちゃうかもって思ってたからさ。

おっちゃんは机に雑貨を広げ、ちょっと考えたのち「段ボールを持ってくる」と言ってどこかに行ってしまった。確かに仕入れの量は多いし、ライトカバーのフレームなどかさばる物も入っているけど、段ボールくらい置いておこうよ。

5分ほどして返ってきたおっちゃん。手ぶらだ。

「見つからなかった」と言う。さすがインド!期待を裏切らないぜ!

郵便局員のおっちゃんを見ていると、彼は雑貨をまとめだし、トウモロコシの絵が描かれた袋で雑貨をくるみ始めた。

「ちょっ!!!」

オイオイオイ!なんかストールにトウモロコシのカスがついちゃってるぞ!

画像9

「ポップコーン!」

や、ポップコーンだけどさ!無農薬だ。安心しろとでも言うのかい?違うよ!そういう問題じゃない!いつも郵送する時は段ボールに入れて送ってもらうんだけど、今回はこれか…。

描き終えた漫画の原稿用紙も入ってるから濡れるのだけはマジで勘弁なんだよね。雑貨は思うようにまとまらず、おっちゃんは何回も配置を変えて梱包しようとする。

画像10

いきなしストールを広げ始めるおっちゃん。

「ちょっ…!!!」
「ノープロブレム!安心しろ!」
イヤイヤイヤ、そういう問題じゃないって!

おっちゃんはストールを縦長に折り、紙素材のライトカバーや原稿用紙、小物類を包み込むようにしてストールで覆った。

そして形がまとまるとビニール紐で「これでもか!」というくらい念入りに、きっちしかっちし縛り上げる。

画像11

僕は空いた口が塞がらない。ひ、非効率だ…。後ろには順番を待つ人数人。ごめん…。

資源ゴミに出される新聞紙の10倍くらいの結び方でなんとか一つの形にまとまった雑貨。それに僕が持って来たビニール袋をかぶせる。極めつけにはシーツのような薄い布を切り、雑貨をくるんだかと思うと、その場で針と糸を使って縫い上げるではないか!!!

もはや僕に対する当てつけとしか思えない!

「そりゃいくらなんでも非効率でしょ?インドの他のとこだと段ボールに宛名書いておしまいだったよ?」
「これがダージリンのスタイルなんだ!」

完成したのは不格好な枕みたいなもの。

それに相棒の家の住所を書いた紙を張りつけ、赤いロウソクを溶かしてスタンプな様な物を押す。ここまでの行程、かかった時間は30分以上。

このおっちゃん、いちいち不細工な枕を作るのか?非効率過ぎる!!!
梱包にかかった費用は200ルピー(329yen)だった。

画像12

そして、今度はこの枕を抱えて窓口に並ぶのだ。

おっちゃんに言われた窓口には列は存在せず、みんな体を押し込むように自分の番を待っている。

「これって…列あるの?」
「さぁ?」
近くにいたお兄さんが言う。
やれやれ。

「おれはここに並んでいるぞ」とジェスチャーで自己主張し、僕は辛抱強く順番を待った。


みんな手にオレンジ色の封筒を持っている。次に順番がまわってくるであろう人に横から次々に書類がパスされていく。おいおい。なんだよそれ?

窓口の郵便局員のおばちゃんは忙しそうに書類にバーコードが書かれたテープを貼付けたりしている。

「これってなんなの?」
「求人に対する応募」
さしずめ、日本の就職活動で言うエントリー・シートのようなものか…。

「次にもう出しちゃいなよ」とお兄さんにアドバイスされ、ようやくまわってきた僕の番。いつものように荷物の重さを計り、お金を支払った。総量は6.81キロ。今までで一番重かった。こうして不格好な枕は日本の相棒の元へ送られることになったのだ。

画像13


レストランでチャイを飲んだ後、僕は気分転換するようにバスキングをした。

画像14

この日のバスキングはダージリンで一番の好感触だった♪

画像15


この日の夜、僕が宿の下の旅行代理店でWi-Fiを利用していると(ここに来ないとWi-Fiが使えないのだ)オーナーのおっちゃんが僕にこう言った。

「日本人がここに住んでいるんだが会いたいか?」
「えっ、あ、まぁ。会えるのであれば…」

この先の旅のルートに関してちょっと情報が欲しかった僕はオーナーの紹介のもと、ダージリンにお住まいの日本人の方に会うことになった。その人の名前は「コウジ」さんと言うらしい。オーナーとコウジさんは仲良しだとか。でも、こんな夜中にお伺いして迷惑じゃないだろうか?

寒空の下、コンコンとドアを2回ノックして中へ入れてもらう。

コウジさんは僕よりひとまわり年上の短髪に髭をはやした、物腰の低い方だった。お食事中だと言うのに、僕の質問に快く応えてくださった。

「この後、ウエスト・ベンガルを旅しようと思っているのですが、どこかオススメの場所などがあったら教えてください」

僕はガイドブックを持たない。だけど、出会った人から教えてもらった情報を頼りに旅をすることがある。人との出会いは偶然の重なり合い。ダージリンに来た時、客引きについて行ってチェックインしたのが宿で、その宿のオーナーがコウジさんと知り合いだった。

そして僕はコウジさんと奥さんから美味しいクッキーとレモンティーをごちそうになり、シッキムを旅するプランを手に入れたのだ。

旅って不思議だ。

画像16


現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。