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「クタイシの街でベンチ探し in ジョージア」

世界一周337日目(5/31)

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気分は社会復帰する元引きこもりだった。

今なら分かる!外出るの怖ぇぇぇ~~~!!!

同じ宿にずぅっといると、
『旅ってどんだったっけ?』とバックパック背負って
自分の知らない街へ行くことに対して
不安になってくる。

バックパックがどんな重さだったのかも
忘れてしまった。あれ?こんなに軽かったけ?

トータルで半月以上もお世話になった
「Hostel Comfort Place」。

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スタッフのリダさんとカズさんに
見送られて僕はメトロに乗って
バスターミナルのあるディドゥベまで向かった。

やっぱりあそこまで僕に沈没気分を
味合わせてくれたのは
宿の居心地があってこそだったんだろう。

最後の方なんて、
エリザさんに府抜けた自分の姿が
どう映っているのか気になって
けっこう気まずかったもんな笑。

カズさんもパチカ(アサラト)などの演奏、
面白かったです!
それと雑貨の情報ありがとうございました!


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ディドゥベに到着するとドライバーたちが目的地を告げてきた。

「クタイシに行きたいんだけど」と僕が言うと、
おっちゃんは「こっちだ!」と僕を連れて行く。

まさに今クタイシ行きの
マルシェルートカが出るところだった。
10ラリ(574yen)。ラッキー!ラッキー!順風満帆!

僕のバックパックは後ろの荷物を
置くスペースには入らなかったので、
仕方なしに座席まで持っていく。


席に着くと僕をマルシェ(現地だと「マーシェ」に聞こえる)まで
連れてきてくれたおっちゃんが車内に入ってきて、
僕からお金を徴収した。

隣りの席にはインド人っぽい2人の男性がいた。

これがインドだったらー、
インド?

はっ!

今、言われるままに案内役の
おっちゃんにお金を渡しちゃったけど、
これで運転手にお金を払うシステムだったら、
ボラれたことになるぞ…。

ふと疑心暗鬼になる。


となりに座っていたのは
サウジアラビアから来た人たちだった。

「やあ大変そうだね。
もっとこっちに座っていいよ」
とわざわざ補助席に移って
僕にスペースを作ってくれる。

僕は今100%見た目で彼らのことを判断した。

別に悪い見方じゃないけど
『インド人だろう』って。

そしてサウジアラビアと聞いて、
心の構えかたが変わった。

よく「チャイナ!」とか言われるけど、
きっとそういう風な先入観を持って接されているのが
自分もそれをやってみることで分かった。
うん。先入観よくないよ。

まぁ、インドのイメージが強烈なんだけどさ笑。

いまだに欧米人の違い、
いや、グルジア人かも区別がつかないけど、
区別がつかないだけあって、
そんな先入観なんてないものな。

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あんなに寝たのに、

マルシェの中でも僕はウトウトしていた。

今日だってギリギリまで二度寝してたのに、
ここへ来て寝れちゃうのはなんでだろう?

おかげで外の景色はそんな印象に残らなかった。

どっか途中の町で
やけにハンモックみたいな吊るタイプの
網ベッドみたいなのが
売っていたなぁと感じたくらいだ。

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クタイシには4時間もしないで到着した。

目の前にはマクドナルドがある。
そこそこの規模の町なんだろう。

一応クタイシがどんな町なのか
下調べもしておいた。ほんのちょこっとだけど。

まぁいくつか観光名所があるみたいなんだけど、
それといって見所がないのが
このクタイシという街らしい。


そしてここを訪れた人のほとんどは

「スリコ・メディコの家」という名物宿に足を運ぶ。
宿と言うかクチコミに近い。

韓国人のキューたちもクタイシに行ったときは
ここに泊まると行っていたから、
日本人以外にも有名なんだろう。

このスリコだかメディコだかの
じーさんがいるらしいんだけど、
そのじーさんが大の酒豪らしいのだ。

もう70歳を越えたってのに、
宿泊客がくると上機嫌になって
ガブガブ酒を飲むらしい。

しかもただ飲むだけじゃない。
じーさんの酒の飲みっぷりは
もはやエンターテイメントの域にさしかかっているらしく、

まぁ、調べるとトリッキーな飲み方で
お客さんを楽しませる
じーさんの写真が出てくるわけですよ。
ホストか!!!

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だけど、僕はここに泊まる気にはなれなかった。

いつのも貧乏性もあるんだけどさ、
このじーさん、酒の飲み過ぎで
ドクターストップがかかっているらしいのだ。

誰か他の人もブログで書いていたが、
宿泊客を喜ばせるためにお酒を飲むじーさんは、
もしかしてムリをしているんじゃないかと。

酒の飲みっぷりが評判になって、
ここを訪れる人が増えるようになり、
じーさんも後には退けなくなって
しまったんじゃないか?

僕自身はほとんどお酒が飲めない。

飲めないっていうか
すぐに酔っぱらってしまう。下戸だ。

飲みたくもないのにガブガブ酒を飲むのは、
なんだかすげー可哀想だ。

僕がもしここの宿を訪れたら、
またじーさんは自分の体を
痛めつけてしまうんじゃないか??

漫画家の妄想がどんどん膨らみ、
「結局は宿に泊まらない方がじーさんのため」
という自己完結の幸せの方程式を導きだした(笑)。

「好きな物を飲んで何が悪い?」
ってどっかの白髭も言ってたけどね。

ミッキーも成長するとこうなるんだね。

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僕はバックパックを背負ったまま、
クタイシの街を歩き回ることにした。

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ヨーロッパに入る前のいい予行練習だ。

とりあえず駅まで向かい、そこから中央にある公園まで向かった。

今日は土曜日。公園には特設ステージが設けられていた。
代々木公園を思い出す。

公園にはアクセサリーや
ポップコーンの露店が並び、
ピエロのおねーさんはすげえノリノリだった。

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そのままバックパックを背負ったまま
見所っぽさそうな教会を目指すことに。
うん。全然下調べしてないね笑。

でも、休憩を挟んだとはいえ、
2時間以上フル装備で歩くのはけっこうキツい。
水分がどんどん失われていく。

ありがたいと思ったのは
湧き水みたいな公共の水飲み場があることだ。

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最初は少しためらったが、
現地の人が飲んでいるのを見て、
僕も空のペッドボトルに水を補充した。


バックパックを背負ったまま
急な坂道を登るのが一番キツい。

汗だくで辿りついた教会。

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石造りの内部はひんやりと涼しい。

僕がはぁはぁ言っていると、
おばちゃんがベンチのスペースを僕に分けてくれた。

聖職者の祈りの文句に対して、
5人くらいが短いコーラスのようなものを当てていく。

こんなお祈りのしかた初めて見たよ。
国によって色々な祈り方があるんだなぁ。

てかスマートフォン操作しながら
コーラス当ててたのは
「オイオイ」って思ったけどね笑。


教会を後にして、フラフラと町歩きは続く。

「あっ…犬だ…」

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「犬が店の中に入って行くように見えるけど、
おれ…、疲れてんのかなぁ…??」

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小さな遊園地のようなところでは
フリーのWi-Fiにありつくことができた。

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だけど、ここでトビリシでの一日の様に
ネットに時間を割くのはもったいないな。

とすると、僕はこの街で
バスキングをしてみたくなったのだ。

だが、街をまわってみて思ったことは
人の集まる場所と言えば、
マルシェを降りたマクドナルド付近か、
さっき行った公園くらいだ。

首都から別の街に来てみると
その発展度合いの違いがよく分かる。
人の数が極端に減るよなぁ。

さっきの公園に戻ってみると、
ちょうどライブをやっている最中だった。

ドラムやベース音、アコギの音が聞こえる。

マルシェの中で聴かされる音楽と
比べると今っぽさを感じる。

時刻は18時過ぎ。

周辺をウロウロしてみたけど、
路上演奏できそうな場所は見つからなかった。

一日中外に出ていると
ついつい手持ちぶたさになってしまう。

まる一日行動だもんな。

カフェに逃げ込んでネットしようかと思ったけど、
それじゃあいつもと変わらないじゃないか!

やっぱりライブを見ようと公園に引き返したが、
舞台の撤収作業が始まっていた。

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どこからともなく
路上演奏者のドラムの音が聞こえた。

ははー。なるほどね。

イベントが終わってようやく彼らは
活動できるわけか。
今日はたまたまそういう日なんだろうけどね。

僕も公園の隅っこの方でギターを構えた。
人通りなんてないし、いいのさ。唄えれば。

そんなマスターベーション的な
バスキングを見て近くのベンチで
ぼうっとしていた世話好きのお兄さんが
「そんなところでやってても、誰も聞かないぞ!」
と僕をベストポジションまで連れて行ってくれた。

なんかよくあるなぁこのパターン。

だけど、ドラムの音が邪魔なんだよ。
ダカダカダカダカ、向こうはけっこう音がデカくてかぶる。

まぁ30分くらいやってみるかと
僕は公園のセンターでギターを弾いた。

人通りはなくてもチラホラと人が集まってくる。

ちっちゃい子が体でリズムをとっている姿は
微笑ましかった。

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小走りに僕の前までやって来て、
お母さんに言われた通りに
コインを入れてくれる。

聴いてくれる人がいることが嬉しくて
ノリノリでやってたら、
ドラムを持った2人組のパフォーマーもやって来た。

そして僕の真横で演奏しやがる。

ドラムの音はうるさくて、
僕の演奏なんてかき消されてしまった。

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苦笑いする僕。

あぁ、分かりますよ。

「よそ者がおれっちのテリトリーで
好き勝手やりやがって!」

ってことなんでしょうね。

だけど、僕の演奏に合わせるでもなく、
単なる妨害としか思えないドラムのリズムは、
上手からろうが下手かろうが、
耳障りな音でしかない。

僕は自分がよそ者であることを分かってるから、
「おい!あっちでやれよ!」なんてことは一切言わない。
「あはははは~」ってどこかの韓流スターばりの
おばちゃんたちを悩殺するほどの
スマイルを彼らに送る。

聴いていてくれた周りの人たちは
演奏ならあっちでやれよと
ドラムの2人組に言ってくれたこともあって、
しばらく僕のバスキングの妨害をすると
あっちの方に行ってしまった。

そこから22時くらいまで、
2時間くらいバスキングをやって終了。

たぶんクタイシは治安がいいんだろう。
公園にはライトがついてるし、女の人も外を出歩いてる。

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「さてとー、今夜はどこで寝ようかな?」

さっきチェックしていた公園に行ってみると、
ベンチは一様に埋め尽くされていた。

ぐぬぬ…。

街の治安の基準は
女性やお年寄りが遅くまで出歩いているかだ。

これはかなり参考になると思う。

その点ではクタイシは安全な街だと言えるだろう。

別の公園はばっちしライトアップされ、
子供たちが23時をまわっても、
高い声をあげて走り回っている。

ベンチに座って僕は公園にいる人間を観察した。

他のベンチには何をするでもなく、
座ってる人間が数組。

明日が日曜日だからだろうか?
別のベンチでは4人くらいが酒盛りをやっている。

そしてこの時間帯からのランニング。

体にじゃらじゃらと重しをつけて
ジョッグする女性二人。

僕の目の前を通り過ぎると必ず
「ハロー!」と声をかけてくるジョギング兄さん。

もう意味が分からない!

ていうかここじゃ寝れねえよ。次々。
僕は寝床探しをするために街をうろついた。

僕の目に異様に移ったのは
クタイシ中のベンチが
埋め尽くされているということだった。

目に入るベンチには
必ず2人以上の人間が腰をかけている。

若者たちはグダグダとお喋りし、
おっちゃんたちは酒を飲む。
深夜24時をまわってもだ。

ベンチの使用率70%はあるよ!

きっとこれは
「夏の風物詩」的な感じなんだろう。

夏前になるとみんな外に出て
ベンチに座ってくだらないことを喋り合う。

ここではベンチは
仲間や恋人との思い出の場所であり、
仕事仲間と一杯やる飲みの場でもあるのだ。

こんなにベンチの需要があるなんて!
現在24時!
どんだけベンチ愛しとんねん!



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ようやく僕が見つけたマイ・ベンチは
建物の脇にひっそりと置いてあった。

腰掛ける部分の板が一枚とれかけた
壊れかけの青いベンチ。

ベンチに対する目が肥えたクタイシの人たちだったら
使わないであろうシロモノだった。

目の前は電化製品点で防犯のために
ずっとライトがつけっぱなしになっている。

寝袋をベンチに敷いて僕は横になった。
腕を組むようにしないと、
腕がベンチから落ちてしまう。

よそ者の僕がありつけたベンチはそんなだった。

クタイシを吹き抜ける風は薄着では寒く感じ、
酔いを醒ますにはほどよく、
安物の寝袋の中で過ごすには丁度いい風だった。


現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。