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note88: パペーテ(2011.12.3)

【連載小説 88/100】

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Iaorana(イアオラナ)!ようこそ“NoaNoa(かぐわしい香り)の島”へ。
長旅のお疲れはございませんか?
いや、この美しい海と空につつまれた島に降り立ち、ティアレやジャスミン、ジンジャーなど甘い香りを放つ色とりどりの花をご覧になれば日本から背負ってきた疲れなど一気に消え去ってしまうでしょう。
この世に「楽園」と呼ばれる島は数あれど、100以上の小さな島々が星屑のごとく散らばるこの国こそが過密な文明社会に暮らす人々にとっての真の楽園ではないかと私は考えております。
これからの10日間、皆様をフレンチポリネシアの時空旅行へと誘う案内役を務めさせていただきますのは、私トラベルライターの真名哲也でございます…
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僕がスペシャルツアーのトラベルガイドを務めるとしたら、パペーテのファアア空港で出迎えたツーリストにこんな感じで語り始めるだろう。

一昨日、タヒチの首都パペーテに到着した。
事前予告なく現地レポートすることにした「SUGO6」の新たな訪問地は南太平洋を代表するリゾート国である。

一般に「タヒチ」として知られるこの島嶼国家の正式名称は「フランス領ポリネシア」。
フランスの海外領だから「ポリネジイ・フランセイズ」と発音したほうが雰囲気は出るかもしれない。

ポリネシアは、北のハワイ諸島、南東のイースター島、南西のニュージーランドを結ぶ“ポリネシアン・トラインアグル”と呼ばれるゾーンを指すが、地球儀や世界地図を見ればわかるようにタヒチはほぼその中心に位置する。

118の島々は行政上「ソシエテ諸島」「ツアモツ諸島」「マルケサス諸島」「オーストラル諸島」「ガンビエ諸島」の5諸島に分けられ、今滞在しているパペーテのあるタヒチ島はソシエテ諸島に含まれる。

国民の7割前後が暮らすこのタヒチ島に加えて、同じソシエテ諸島にあるボラボラ島やフアヒネ島、モーレア島がメジャーな観光地で、タヒチ向け旅行商品の大半がこれらの島々で構成されているといっていいだろう。

ただし、“偉大な人物の生涯を視座に世界や歴史を再見する”僕のスペシャルツアーに関しては訪れる島はここタヒチ島と北東に1300km離れたマルケサス諸島にあるヒバ・オア島の2島。

長期滞在なら個性豊かな島々を転々と巡るアイランド・ホッピングがお薦めだが、“あの”人物をテーマにタヒチを旅するならこの2島なのである。

その人物とは?

僕のガイドはこう続く…

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「タヒチは文明社会に暮らす人々にとっての真の楽園である」と申し上げましたが、それは言い換えると「恵まれた文明生活では決して得ることのできない“何か”がこの島々にある」ということになります。
もしかすると、皆様の中にも閉塞感溢れる現代文明からしばし距離をおき、取り戻したい“何か”があってこの旅に参加された方がおられるかもしれませんね。
そこで、今回のツアーで取り上げさせていただく人物がポール・ゴーギャンです。
フランスとタヒチを行き来し、文明と自然のはざまで葛藤しながら数々の作品を残し、最期はこの地で永眠した偉大な画家。
生涯をかけて楽園を追い求め続けたゴーギャンの壮絶な人生を追う旅へ出発しましょう…
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僕のタヒチ滞在は14日までだが、今日パペーテへ到着したツーリストが10日間かけてゴーギャンの軌跡を追うスペシャルツアーを想定してレポートを続ける。

読者の皆様もスペシャルツアーの参加者気分でお楽しみいただきたい。


>> to be continued

※この作品はネット小説として2011年12月3日にアップされたものです。


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