117.ラッフルズホテルから
2004.5.11
【連載小説117/260】
「日本に戻ったら世界が見えなくなる。自分の未来も見えなくなる。
林立する高層ビルの谷間で、おそらく1世紀前と変わらぬ静かな時間の流れるラッフルズホテル。
その中庭から不自然に切り抜かれたシンガポールの青空を見上げて私はそう確信した…」
この、ひとりの女性の独白は、僕がサマセット・モームの短編『エドワード・バーナードの転落』のトリビュート作品として創作を始めた短篇小説の出だしの一節。
シンガポールを旅した際に「nesia2」