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TRANS ISLAND 儚き島 回顧録

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2002年2月19日から5年間260週間をかけてオンライン配信された連載ネット小説『TRANS ISLAND 儚き島/真名哲也』。スマートフォン黎明期に掌上の端末で読む未来形の小…
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2024年1月の記事一覧

102.ポジティブな隣人

2004.1.27 【連載小説102/260】 隣家に面白い男が越してきた。 僕が暮らすNEヴィレッジは、現在村民51名。 男女比は約6対4。 主に文筆業に携わる人や読書家、出版関連のSOHOワーカーといった人々で構成されている。 「一旅一冊運動」の結果完成した世界中から集まる名著の図書小屋も着実に質量が増え、静かな読書目当てのツーリストも安定して迎えており、文学がテーマの村としては予想以上に知的で洗練されたな空間になっている。 (「一旅一冊運動」の詳細は第55話を)

101.大きくなり過ぎた島国

2004.1.20 【連載小説101/260】 少し大きめの地球儀が僕のデスク上にある。 多くを持たず可能な限りの身辺品をパソコン内のアプリケーションで代行させる僕も、こと辞書と地球儀に関してはリアルな実物を手放せないでいる。 革表紙の使い込んだ国語辞典は四半世紀の友人で、五十音別のページ頭なら目を瞑ってでも僅かな誤差で開くことができるし、無数にひかれたラインマーカーが「知の紀行録」のごとく私的思考と学習の痕跡を残している。 地球儀の方は10数年の付き合いになるだろう

100.文明という名の方舟

2004.1.13 【連載小説100/260】 僕たちの人生はまるで螺旋階段だ。 繰り返される日々を円を描くように巡りながら、気付くと徐々に元の場所から少しずつ高い場所へと到達している。 描く円とは時間的な循環のこと。 日・週・月・年の時間単位や季節の巡りはもちろんのこと、旅立ちと帰着、出会いと別れ、夢と現実、といった体験を繰り返す中でヒトは少しずつ成長していく。 連載の第100話。 『儚き島』という旅も循環の中に大きな節目を迎えることになった。 そして、それを誰より

099.トランスビジネス

2004.1.6 【連載小説99/260】 「トランスビジネス」なるタイトルで、2004年の『儚き島』をスタートさせよう。 5週にわたって重ねてきた2周年会議紹介の締めくくりとして、法律エージェントであり、島の経営的側面の多くを担うボブのビジネス構想をまとめておきたいからだ。 さて、ある種の理想郷を目指すトランスアイランドというプロジェクトに対して、「ビジネス」というワードを用いることに違和感を覚える人も多いのではないだろうか? ビジネスこそが、自然を破壊し、有限なる