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TRANS ISLAND 儚き島 回顧録

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2002年2月19日から5年間260週間をかけてオンライン配信された連載ネット小説『TRANS ISLAND 儚き島/真名哲也』。スマートフォン黎明期に掌上の端末で読む未来形の小…
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2023年1月の記事一覧

050.楽園を支える精神部分

2003.1.28 【連載小説50/260】 何故に南の島は「楽園」なのか? 最も汎用的な回答は、その気候と風土だろう。 世界中に観光地と呼ばれる場所は数あれど、極北の地では防寒対策が求められ、高地に行けば空気の薄さに行動が規制され、人の密集する街では犯罪や事故が隣り合わせで存在する。 また、同じ暑い「南」であっても、野生動物が主役の大陸や熱帯雨林の地に対しては、ある種の緊張感をもってアプローチしなければならないから、そこに「楽園」という言葉の持つ開放感はない。 暑い

049.ノンスモーキングアイランド

2003.1.21 【連載小説49/260】 自主、自由、自律。 独立心を持って既成概念に縛られることなく、全く新しい「個」が開放されるコミュニティを創造しよう… そんなトランスアイランドにも規制としてのルールが幾つか存在する。 理想の「楽園」を守るために、持つべき最低限の「掟」。 そのひとつが「禁煙」だ。 この島では、島民はもちろん、訪れるツーリストの全員が公私の場を問わず、島内における一切の禁煙を義務付けられている。 つまりは、ノンスモーキングアイランドなのだ。

048.島を取り巻く海

2003.1.14 【連載小説48/260】 低成長&循環型社会。 トランスアイランドの目指す社会構造だ。 西暦による人類史だけに着目しても、高度成長&大量消費社会は2000年強の歴史における最近の50年程度でしかない。 ある意味で我々は特殊な時代環境の中に暮らしているのであり、成長の鈍化イコール悪しきことと考える必要はないのだ。 長きにわたって人類史が維持してきた本来のゆったりしたリズムに戻ると考えれば、緩やかな成長も納得できるはず。 実際に日本という島国は、江戸時代

047.飛行艇に乗って

2003.1.7 【連載小説47/260】 行き過ぎた文明に対していつもどこかで疑問を感じている僕が、無条件でその成果に賞賛をおくるのが航空技術だ。 つまり、僕は飛行機が大好きなのである。 方々を旅する中に人生を重ねてきた僕にとって、飛行機はなくてはならない存在であった。 太平洋上の島々は船で訪れることも可能だが、限られた時間の中で様々な地を効率よく巡るのに飛行機に勝る輸送手段はない。 思い起こせば、子供の頃から青空へ飛び立っていく旅客機を見るのが好きで何度も空港へ通っ