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TRANS ISLAND 儚き島 回顧録

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2002年2月19日から5年間260週間をかけてオンライン配信された連載ネット小説『TRANS ISLAND 儚き島/真名哲也』。スマートフォン黎明期に掌上の端末で読む未来形の小…
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2022年2月の記事一覧

002.地図にない島

2002.2.26 【連載小説 2/260】 遥か彼方の水平線を見据えて進む豪華客船のクルーズもいいが、波をかきわけて進むトローリングボートや、穏やかな海に漕ぎ出すシーカヤックが好きだ。 なんといっても、海と自分の距離が近い。 近いがゆえに感じる地球の鼓動も違う。 同様のことは、地表を離れた空の上でも成り立つことを知った。 滑走路がなくても、そこに水辺がある限り、どこへでも行くことが可能なフロート付きの水陸両用セスナ。 「冒険」という鼓動があるなら、そのリズムを小さなプロ

001 儚き島

2002.2.19 【連載小説 1/260】「ニンベン」に「ユメ」と書いて「儚」という字が出来上がる。 そう「ハカナイ」という字だ。 人の見る夢が儚いのか? 夢見る人そのものが儚いのか? 椰子の木陰に座って海を見ながら、僕はそんなことを考えている。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ノースイースト・ヴィレッジの海岸に打ち寄せる波は今日も穏やか。 こうやって一日のかなりの時間を自然のリズムに身を任せて過ごしていると、この現実そのものが夢なんじゃないかと錯覚しそう

prologue

情報の海に溺れそうになったら 迷わずその島を訪れるといい世界をネットワークする情報網 個人レベルで自由に使える高性能情報端末 日々生み出される様々なコンテンツ… 20世紀文明の結実としての インターネット社会が本来目指したのは 自主・自由・自立をベースとする 個人主役の豊かな日常だった。 が、現実はどうだろう? 我々は日々、複雑なメカとの駆け引きに明け暮れ 効率を求めたはずのシステムに縛られ 溢れる情報は洪水のごとく目の前を流れ 手元に残るのはほんの僅かだ。 果たしてI