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流れとかたち

流れとかたち  エイドリアン・ベジャン&J・ペダー・ゼイン  2013年

「コンストラクタル法則(constructal law)」の定義
有限大の流動系が時の流れの中で存続するためには、その系の配置は、中を通過する流れを良くするように進化しなくてはならない。

生物・無生物の別なく、動くものは全て流動系である。流動系はみな、抵抗(たとえば摩擦)に満ちた地表を通過するこの動きを促進するために、時とともに形と構造を生み出す。自然界で目にするデザインは偶然の所産ではない。それは自然に自発的に現れる。そのデザインが時とともに流れを良くするからだ。

生命は動きであり、この動きのデザインをたえず変形させることなのだ。生きているとはすなわち、流れ続けること。形を変え続けることなのだ。系は流動と変形をやめれば死ぬ。

世界を動かすのは愛やお金ではなく、流れとデザインである。

もしコンストラクタル法則にひと言付け加えるとするなら、それは「自由を与えられれば」だろう。この世には制約が満ちあふれており、より効率的な形でものが自己組織化するのを阻んでいる。

自由さえ与えられれば、流動系はしだいに優れた配置を生み出し、流れやすくなる。

デザインは無秩序に現れるわけではない。ものが今のような外見を持つ理由を知るためには、まず何がそれを通って流れるかを認識し、次にその流れを促進するにはどんな形と構造が現れるはずかを考えることだ。

熱力学は二つの法則に基づいており、それはともに第一原理で、第一の法則はエネルギーの保存を定め、第二の法則は温度や圧力などが「高」から「低」へと向うという、あらゆる流れが持つ傾向を要約している。

コンストラクタル法則はその流れを促進する、進化を続ける配置を生み出す普遍的傾向を記述している。

不完全性は避けられない。それどころか、必要でさえある。不完全性(摩擦)がなければ、流動系は絶え間なく加速を続け、ついには制御不能に陥るだろう。したがって、不完全性(摩擦、熱の漏出など)は流れを駆り立てるエンジン(デザイン)に対するブレーキとして働く。

あらゆる流体は、運動量を拡散させるのに層状の動きのほうがふさわしいときには、「層流」と呼ばれるこの動きを見せることがわかっている。これは、流れが十分薄く/細く、速度も十分遅い時の流動のデザインだ。だが、流れが十分厚く/太く、速くなると、デザインは乱流に変わる。

樹木が「発生する」のは、そこに水があり(上方へ)流れなければならないからであって、「木は水を好む」からではない。同様に、河川流域が現れるのは、水があり、(下方へ)流れなければならない場所だ。どちらも、局地的な水の流動と全体的な水の流れを促進するために現れ、進化する生きた系だ。

コンストラクタル法則とはそういうものだから、私たちが森の中を歩くときに感じる統一性の圧倒的な感覚の科学的証拠提供してくれる。大地も、樹木も、大気も、私たち自身も、本当につながっている。いっさいのものは、同一の普遍的な力によって形作られ、創造の一大交響楽を奏でながら、それぞれが全体を支えているのだ。

コンストラクタル法則は何を予測するかというと、動くものは流れやすいデザインを生み出すという傾向の自然な帰結として階層性が現れるはずだということだ。コンストラクタル法則はまた、硬直した階層制は自由に形を変える階層制に、いずれ道を譲ることも予測する。だから独裁政体は比較的短命で、民主政体には持久力があるのだ。

私たちは人間と機械の一体化した種になった。この種は日々、目に見えて進化している。その進化は、科学や技術、個人の自由の歴史を含め、歴史と地理を調べ直せば、なおさらはっきりする。暮らしは、知識を持つ者にとっての方が途方もなく容易だ。


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