見出し画像

金沢の鮨屋にあった「むる」というメニュー

地域によって魚の呼び名は様々でSNSなど全国の人が閲覧するコミュニティで当たり前の様に地方名で話されても全く分からない。

最初は「こういう場ではもっと標準和名を意識しようよ!」なんて思っていたが最近はクイズを楽しんでいる様な感覚がある。そしてそのクイズに正解するためには勉強をする必要があり日本全国の釣り場や市場、飲食店に足を運ぶのが釣りに関連した楽しみとなっている。
 
出世魚の代表格と言えば鰤だがその呼び名は自由度が高い。

近江町市場

関東
ワカシ(40cm以下)→イナダ(41~60cm)→ワラサ(61~80cm)→ブリ(80cm以上)

関西
ツバス(40cm以下)→ハマチ(41~60cm)→メジロ(61~80cm)→ブリ(80cm以上)

北陸
コゾクラ(40cm以下)→フクラギ(41~60cm)→ガンド(61~80cm)→ブリ(80cm以上)
 
※大まかな分け方であってどのサイズを地域によって何と呼ぶかは正確には言えない。

稚加榮のアラカブ煮付け

この地方名について全く詳しくなかった時の話だ。福岡にある稚加榮という日本料理店のメニューに「アラカブ煮付け」というものがあり興味津々で注文してみるとカサゴの煮付けが出てきて思わず笑ってしまった。

私は九州にしかいない様な地魚だと勝手に思い込んでいたがそれは我々関東の人間にもお馴染みの大衆魚だったのだ。店員からは「もしかして分かっていなかったの?」という空気が洩れていたが旅の恥はかき捨てというアレだ。
 
この地方名に些か関連して大恥をかいた経験があってそれは金沢での出来事だった。
 
近江町市場で北陸の地方名を勉強するのが楽しくて仕方がなかったのだが、その晩、ごはんを食べに行ったひがし茶屋町の鮨屋のメニューも地方名で溢れていた。関東のメバルは北陸ではハチメと呼ぶらしく「茶八目の煮付け」はそそられた。他にも近江町市場で学んだ色んな地方名がメニューには点在しているが自分が全く知らない魚が一つだけあるのに気付いた。

謎メニュー「むる」とは?

「むる」という魚名?料理名?で勿論関東では聞いた事もないメニューだ。しかし福岡のアラカブの一件もあるので頼んでみたら自分がよく知る魚が運ばれてくるという事も考え得る。知ったかぶりをする必要もないので私は店の大将にこのメニューが一体なんなのか尋ねてみる事にした。
 


『大将すみません。ここに書いてある「むる」というメニューは何ですか?魚ですよね?』



『・・・「玉子」です。』


 
ずっと流れていたBGMがちょうどエンディングを向かえ店内が静寂に包まれた。旅の恥はかき捨てだがどうやら私は大将にも恥をかかせてしまったらしい。



【お便り募集】
 
ネットラヂオ『旅の鳴る木』では「私の失敗談」を募集しています。旅の失敗、日常の失敗、何でも構いませんのでお便りを下さい。「むる」程度の軽い失敗談はご紹介しやすいかも知れません。よろしくお願いします。

tabino.naruki@gmail.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?