[物怪と僕]
港沿いを歩きなよ
すぐに見えてくるだろう
やたらとプラスチックな
自然岩礁公園
ありがたがんだよ
せっかく生えた水色の苔も
石段石滑らせているだけの
吐き出しかけた澱のよう
なあ君だって世界を
見てきたんだろう
怠惰の証だったかな
それとも忍耐強さか
万年布団貫いたから
ルイヴィトンでも買えたのか
軽々とあしらっていたら
重みが手元から去るだけ
プラスチックな悲劇を
君はなんと呼ぶんだい?
喉元過ぎれど油断ならないな
君の不可視の消化器は
腹黒と称され始めなお
僕を食らう唇だけ
素直に見えた
ミイラ取りを気取っても
けして成れず仕舞の
僕ら違う場所へ行く
何故か違う場所へ行く
坊主の袈裟をはだけて
確かめてみればいい
プラスチックな嫌味で
君は宙を舞う
物怪よそう怒るなよ
拳をどうか降ろしてよ
鳥の名をした君の
鍵を黙って壊して
みたかっただけ
"私が髪を束ねてた
頃なんてとっくに忘れたわ
全部嘘だったみたいに"
壊れた戸に苦心しながら
強がるんだな
世界をまた見てきなよ
狭いこの街で君を
飼い殺しもできたけど
他の方法を見つけた
プラスチックを夢見て
君を飼っていた
プラスチックの夢見で
君はもういない
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