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(3/9)初の九州横断に狂喜乱舞し、広島まで足を伸ばす。 2015年11月28日(土)-12月2日(水)

秋田在住で旅の仲間たちのリーダーであり一番年上のイクヤさん、次に年上のツッチさんは盛岡在住で元々某有名企業でAIの研究に取り組んでいました。九州宮崎在住で本格焼酎をはじめ酒全般に精通するイグチさんは旅のコーディネーター、そして盛岡在住酒場と旅を愛するわたしの4人の一行の九州旅の記録です。年齢でいうと、イグチさんとわたしは同年代で、イクヤさんとツッチさんより少し年下です。


◾️中洲の朝は博多ラーメンで

高級カプセルホテル「ファーストキャビン」で目覚めます。設備も清潔さも申し分なかったです。どこでも熟睡できるという特技を持つわたしは、もちろん完全熟睡。
シャワーを浴びて外に出ましたが、まだ暗い朝6時過ぎの福岡中洲。岩手よりずっと西にあるから、当然のことながら朝の訪れが遅いのです。遠く遠くへと来たことを改めて実感しました。

博多ラーメン290円

「初福岡だなあ、初九州だなあ」と大きく深呼吸をし、街を歩きます。あたりの雰囲気はまだ夜で、客引きに「どうですか、もう一軒最後に!」と声をかけられる始末です。

それもそのはず、そこかしこで酔っ払いがふらふら歩き回っていて(夜通し呑んでいたのでしょう)、確かに「最後にもう一軒!」というエネルギーに満ち溢れています。

いやあ凄いなあ博多中洲、と素直に感心しつつ目についた24時間営業のラーメン店「はかたラーメンはかたや川端店」で、博多ラーメン290円也をいただくことにします。

先客には、黙々とゆで卵の殻を剥く中年男性、チューハイのツマミにラーメンをすする茶髪の若者、カウンターにつっぷしながら大声で独り言を言い続ける酔っ払いと、起きたてシャワー浴びたてのすっきりした顔のわたしも中洲の正しい朝(たぶん)を迎えたのです。

しかしアレですね、福岡のことがよくわからない人間からすると、博多・中洲・天神といったエリア名称の使い分けが難しいですね。なんとなく、博多駅から中洲までが博多エリア、中洲の西側にあるのが天神エリア、というふうに考えてますが、あっているのかどうなのか。

◾️天領日田を抜け阿蘇へ

クンチョウ(薫長)酒造

遅く福岡に到着し、それなりに遅く(午前2時近く)まで呑んだわれわれでしたから、出発はランチタイムかそのぐらいだろうかと考えていましたが、ドライバーで旅のコーディネーターのイグチさんが元気に起き出し、予定よりも早い10時には準備が整ったので、そのまま出発しました。

イグチさんのマイカーで、福岡県から高速道路で一回佐賀県に入り、再び福岡県に戻り、そして大分県へ向かいます。高速道路のルートの都合上のようでしたが、こんな風に小一時間あまりで県をいくつもまたぐなんて、岩手では考えられない芸当です。これだけで驚きです。
ちなみに九州の面積は岩手県の2個分くらいで、そこに7つの県があることになります。不思議な気分です。

さて、大分県といえば天領日田。江戸幕府直轄の領地であり、大分県内最古の商家や蔵屋敷が残存する豆田を通過していきます。
天領であるから随分と栄えたそうで、観光客も多く目につき、観光マップを見ると確かに見どころ満載の街のようです。時間をかけてじっくり訪れたいところですが、先を急ぐ旅ですので、この日は通過する程度となりました。

イグチさんが、途中「クンチョウ(薫長)酒造」に寄ってくれました。トイレ休憩を兼ね、1700年代1800年代に建てられた蔵などを見学しました。

実に立派な蔵でして、まさにそれが当時の裕福さを物語っているようです。

そこから熊本方面へ車を走らせます。阿蘇五岳を観ようと、「大観峰」に寄りますが、途中、熊本のブランド牛「くまもと あか牛」も見かけることになります。
阿蘇の地に育つ牛を旅の途中で食べることができようか、などと思いつつ真っ黒な牛を眺めました。

さて、阿蘇の大地です。車を降りて歩を進めると目の前にどどんと現れる雄大な阿蘇五岳は、雄々しくそして優しく、堂々と姿を見せてくれました。

 

あまりに広大なカルデラの大地と合わせ、見るものを圧倒してくるではありませんか。そのスケールの大きさに言葉が出せず、北国からこの地に降り立ったわれわれは、ただただ呆然とします。

完全に思考停止。ここもいつかは訪れてみたいと思っていた九州のスポットでしたが、想像をはるかに超えた阿蘇の自然景観に、静かに感動しました。語彙と表現が乏しく、素晴らしい、の一言しか出ませんでした。

◾️天孫降臨の地「天岩戸神社」へ

天庵

イグチさんが運転する車は、外輪山を突っ切って、熊本から宮崎・高千穂へと抜けました。こういうときにこそ、現地でコーディネートしてくれる友人がいるというのは本当に心強いものです。われわれ3人だけでしたら、まだ中洲あたりをうろうろしていたかもしれません。

昼食は高千穂の人気蕎麦店「天庵」へ。セットメニューがお得とイグチさんに伺い、みんなそれを注文です。
蕪の黄身庵、野菜天麩羅、いなり寿司、蕎麦という品々はとても見た目に美しいものでした。
優しい味わいの料理と、きりりと辛い蕎麦つゆの加減が絶妙で、宮崎の食文化のレベルの高さが伺いしれます。

天安河原

そしてついに、神々の里・宮崎県高千穂町にある「天岩戸神社」に到着。この天安河原(あまのやすかわら)は、八百万の神々が相談ごとをしたと言い伝えられるところのようです。

清流・渓谷が美しく、「釣りしてぇな」と釣り師でもあるイクヤさんがぽつり。釣り師なら誰でもそう思うでしょう、自然豊かな光景に心安らぎます。

古事記や日本書紀に記される天照大神が隠れたという神話の舞台。
石で積まれた塔がそこかしこにあり、それがなにかこの世ではないかのような雰囲気を醸し出します。圧倒的な神々しき雰囲気に息を飲み、ひしひしと押し迫るなにものかの存在感に包まれます。

自然と、言葉少なに立ちすくんでいる一行は、厳粛な心持ちになりつつ、「天岩戸神社」を後にしました。

◾️諸塚村「川崎醸造場」を訪問

諸塚村にある「川崎醸造場」まで、高千穂からの悪路のことはこの旅のハイライトのひとつです。
「これがですね、なかなかのものでして、、、」と、九州男児、いつも豪放磊落なイグチさんが口ごもって話しながらハンドルを握っていたのも、通ってみてからわかりました。

悪路を避けられないのだろうかとイグチさんに訊くと、「かなりのロスになるので、これが最短です」とのこと。「川崎醸造場」の川崎さんとの約束もあるのでロスはできない状況でした。

しかも生憎の雨模様で、路面が濡れているところに落ち葉が積もり、その濡れ落ち葉でかなり路面がスリッピーになるという悪条件が重なっていました。

それでも雨と霧で煙る険しい山道を抜け、辿り着いたのが、標高400mのところにある「川崎醸造場」です。

醸造場内

温かく出迎えてくださった川崎さん親子と対面し、そして蔵を見学させてもらいました。昔ながらの仕込み道具と機器に感動します(写真は木製の蒸留機)。
素朴、質素、朴訥という言葉がぴったりくる川崎さん親子と蔵そのもの。ここであの深くて上品に甘くてクセのないコクを湛えた美酒が醸されるのかと思うと実に感慨深かったものです。

ネットでも店頭でも買えず、唯一イグチさんに送っていただいたときだけ、味わったことがある、年間50石程度だけ醸される幻の酒です。
「寒いでしょうからどうぞ」と蔵を見させていただたのち、炬燵を勧められました。

 

雨というのもあるだろうし、標高が高いということもあるでしょうが九州とは思えぬほど肌寒かったので、温かい炬燵と自家栽培の茶葉から淹れた温かいお茶がありがたかったです。

「少し利いてみませんか」と、幻の酒「園の露 手造りかめ仕込み 20度」を舐めさせていただきます。
「このぼた餅が合うんですよ」と、川崎さんにすすめられたぼた餅を嬉しそうに頬張るのはイグチさん。なお、イグチさんはドライバーなので、残念ながら焼酎はお預けでした(本当に残念そうでした)。

そして、たしかに、この焼酎の上品な甘みはぼた餅の餡子とよく合いました。二次仕込みの際に、某有名清酒蔵の酒粕を使うという話などもイグチさんから伺いながら、蔵を後にしました。
蔵のすぐ側の直売所では、幻の焼酎「園の露」が売られていたので、嬉しくなったわれわれは、旅の支障にならない程度に買い求めました。

諸塚村を後にすると、イグチさんはじめわれわれ一行に安堵感が漂います。
「いやあ、さすがに疲れましたよ」と苦笑するのはイグチさん。
朝からドライバーを務めるイグチさん、あの悪路を安全に抜けることに相当気疲れしたようでした。

この日の予定は、あと一つ。イグチさんの故郷であり、今回の旅の一番の目的のである宮崎の夜を堪能するだけでした。イグチさんが来盛されるたびに「次はぜひ九州、宮崎へ」と別れ際に話をしていたから、ようやく宮崎市を訪れることができるということは、心からの喜びでした。

宮崎市に入り、少し時間があるようでしたので、「地元のスーパーを見たい」というわれわれの要望にイグチさんは応えて下さり、地元で有名な地元資本の「フーデリー」というスーパーマーケットに連れて行ってもらいました。

しかし「フーデリー」はすごいスーパーマーケットでした。ありとあらゆる食材や酒が揃いなかなかに濃い店であり、「なるほど、食通のイグチさんが贔屓にするわけだ」と納得して見て回りました。

みょうがや

ホテルにチェックインした後は、イグチさんからその素晴らしさを聞いており、数年来の念願だった「みょうが屋」に足を踏み入れることになっていました。

(4/9へつづきます。)

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