揺れる心の行方
ある秋の午後、山間の小道を歩いていると、ひっそりとした沢沿いにツリフネソウが咲いているのを見つけた。ツリフネソウは、その名の通り、花が船を吊るすように垂れ下がっている。まるで、風に揺れる小舟が静かに波間に漂うような姿だ。
この花には「私の心を揺さぶる」という花言葉があるという。ひとたび聞けば、その言葉が心に染み渡る。私たちの心もまた、風に揺れるツリフネソウのように、時に安定を失い、行き場を求めて漂うものだ。ツリフネソウはその繊細な姿で、私たちの心の奥底に眠る感情をそっと揺り動かす。
思い返せば、人生には多くの揺れがある。人との出会い、別れ、そして再会。どれも心を揺さぶる瞬間であり、その揺れが私たちを新たな場所へと導いてくれる。ツリフネソウが風に乗って軽やかに揺れるように、私たちもまた、人生の風に乗って新たな方向へ進んでいく。
ツリフネソウの花は、決して華やかではないが、その静かな佇まいが心に残る。人生の中で忘れがちな感情を思い起こさせ、私たちに「揺れ」を感じさせる。その揺れこそが、新たな気づきをもたらし、次の一歩を踏み出す力となる。
ツリフネソウの前に立ち、私はそっと目を閉じる。風が吹くたびに花が揺れる音を聞きながら、自分の心もまた、その揺れに委ねてみる。時には揺れることを恐れずに、心の旅を続けていこうと。
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