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アメリカで子育てする: 車の運転篇

アメリカでは、15歳になって筆記試験に受かったら、仮運転免許証がもらえる。本免許を持っている人が一緒に車に乗っていれば、いきなり運転できるという恐ろしい仕組み。しかも、教習所などないので、いきなり公道で運転の練習をする。そして通常、親がインストラクターとなる。恐怖以外の何物でもない。

でも、車社会のアメリカでは、運転しないとどこにも行くことができず、親が子どものための運転手になるので、子どもが免許を取ることは親にとってもメリットがある。子どものための送り迎えをしなくてよくなると、生活がとっても、とーっても楽になるから。そして、それぞれの子どもに免許を取るまでのさまざまなストーリーがあって、そういう話を知り合いとするのも面白かったりする。

息子の場合
息子はなぜかあまり車を運転したがらず、17歳くらいで重い腰をあげてやっと仮免を取った。最初は、ほとんど車が停まっていない大きな駐車場で、ゆっくり走る練習をした。そして、駐車の練習も。息子は何でもすぐにできるようになるタイプなので、数回の練習で、あっという間に運転も駐車も上手にできるようになってしまった。

本免許は、仮免から一年後、実地試験を受けて合格したらもらえる。それまでに本免許を持った人を乗せてたくさん運転の練習をしておく必要があるのに、息子はあまり運転したがらなかった。あまりにも運転する気を出さないので、「自分で運転するなら、私が仕事に行く前に朝バスケの練習に行っていいよ」と言ってみた。いつもより早く起きて、息子のハイスクールのジムに寄ってから仕事に行くのはかなり面倒だったけど、朝バスケの練習にずっと行きたがっていたから。朝早く、まだ暗い中、初めて息子に公道を走らせた時は本当に怖かった。「死ぬ時は一緒」と本気で覚悟していた。

仮免から一年後、息子は一回で実地試験に合格して、無事に本免許を取った。それからは、バスケの練習なども一人で行くようになって、本当に楽になった。息子は後で「よく僕にいきなり運転させたね」と言っていたけれど、大げさでなく、死ぬ覚悟だった。あの朝の「死ぬ時は一緒」という決死の覚悟は忘れられない。

娘の場合
娘は息子と違って、15歳になったらすぐに仮免を取った。運転の練習もとてもやりたがったけれど、これまた息子と違って、上手になるのに時間がかかった。縁石に乗り上げたり、駐車がうまくできなかったりした。他に車があったら絶対ぶつけてるね、という娘の駐車を見ていて、駐車ができないとどこにも行けない、どこかに行っても車を停められず、車から降りられず、ずっと走り続けることになる、と初めて気づいた。

それでも、やる気だけはある娘。めげずに、機会がある度に大きな駐車場で練習し続けて、それなりに上手く運転も駐車もできるようになり、初の公道での運転も危なげなくこなした。長い間練習に付き合わされて、自信がついてから公道に出たせいか、息子の時の経験があるせいか、娘の公道デビューはそれほど怖くなかった。

娘も一回目の実地試験で無事に合格して本免許を取り、今ではあんなに運転が下手くそだったのが嘘のようだ。

アメリカの免許取得制度は、かなり不安だけど、何とかなるものだと学んだ。実地試験会場は、時間外なら誰でも練習のために使えるようになっていて、実地試験会場を通り過ぎる時、若者に縦列駐車や後ろ向きに入れる駐車を教えたり、見守っている親の姿を見ると、懐かしくて思わず微笑んでしまう。そう考えると、親と子が一緒に過ごす時間と思い出を作る良い制度なのかもしれない。でも、初めのうちはやっぱり危な過ぎるし、怖過ぎるから、教習所はあった方がいいと日本人の私は思ってしまう。

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