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映画『路上のソリスト』を見て

『The Soloist (邦題: 路上のソリスト)』は、2009年の映画らしいけど、最近見た。見終わった感想(ネタバレあり)は、現実の話に忠実に描かれたんだろう、ということ。そして、何だかやるせない気持ちになった。

映画として、ドラマチックに人を感動させたいなら、ホームレスで元ジュリアード音楽院生のナサニエルは、新聞にコラムを書くスティーヴに出会って、スティーヴの支援と友情を得て、音楽の才能を再び開花させて成功する、となるところだろう。

でも、この映画ではそうは行かない。少し回り道をしながらも、そうなるのかな、と思ったけれど、結局最後まで現実的なままだった。なぜそうならなかったのか?それは、ナサニエルに精神疾患があったからだ。

ホームレスではなくなったり、精神障害者のための施設で演奏するようになったり、というのは素晴らしい変化だと思う。それだけで十分なのかもしれない。でも、スティーヴは最初、もっと上を目指そうとしていた。そして、ナサニエルは医療診断を受けて薬を飲む必要がある、と何度か施設の人に訴えている。その通りだと思う。その通りだけど、そうはならなかった。

精神疾患があると、本人がそれを認めて、服薬を受け入れなければ何も変わらない。いや、それなしでナサニエルがあそこまで変わったのは、奇跡のようなことだ。それでも、スティーヴはナサニエルを救えない、と嘆いた。それは、ナサニエルの精神疾患が治療されず、ナサニエルの音楽的才能が存分に活かせないから。でも、それが現実だ。

スティーヴは結局、ナサニエルを成功させるのではなく、ただの友人として受け入れた。それでよかったと思う。それでよかったと思うのに、何だかやりきれない気持ちになるのはなぜだろう。その素晴らしい才能が、精神疾患のせいで十分に活かせていないような気がしてしまう。ナサニエルは、そんなことを望んでいないかもしれないのに。

私もスティーヴのように、私の家族をありのままに、精神疾患も含めて受け入れるべきなのだろう。それが家族のためにも、家族との関係にも、一番良いのだろう。たとえ何だかやるせなくても。

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