不要不急のマーケティングを試みたらCVR3倍になった話【旅行検索BOX編】
from:ステイホーム
コロナウイルスの猛威は予想以上でした。観光業への影響は尋常じゃないです。M&Aや事業売却の話もぽつぽつ出始めています。
当たり前ですが今はできることを試して準備して、復活する時を待つしかありません。
そこでぼくも不要不急と言いますか、「どのくらい数字が上がるのか?」が読めないのでやらなかった施策を、とうとう試みました。結果CVRが3倍になりました。
以前こんなことを書いたのですが、この時から気になっていたことです。
なぜ旅行予約の検索BOXは、あの形式しかないのか。
旅行予約には、ホテル予約や航空券予約など色々ありますが、今回はツアー予約を引き合いにした検証です。
ツアーだろうがホテルだろうが、旅行関連の予約に絶対必要な5つの情報があります。
【旅行予約に必要な5つの情報】
①いつからいつまで行くのか
②どこに行くのか
③どこから行くのか
④誰が何人で行くのか
⑤いくらで行くのか
この5つの情報がなければ、予約を完了することはできません。
意外と業界の方でも、この5つを意識してマーケティングしている方が少ないのですが、ぼくはこれしか見ません。
そしてこの5つは、更に2分することができます。
《検索時:既に決まっている》
③どこから行くのか
④誰が何人で行くのか
《検索時:未定の可能性がある》
①いつからいつまで行くのか
②どこに行くのか
⑤いくらで行くのか
ここからが本題です。
この《検索時に未定の可能性がある》①②⑤の情報は、ユーザーごとにバラ付きがあるわけですが、しかし個別のそれを把握することは不可能なのです。
よって現在旅行サイトに散見される旅行検索BOXは、「①日程も②行き先も決まっているユーザー」を前提に、「後で中身や価格を絞って決めてね」と暗に構成されているわけであります。
各旅行予約メディアの検索BOX
やはりどの業態も、①と②は必ず事前に入力しなければいけません。
しかし今回の問題提起は、実際には「①日程は決定しているが②行き先は未定」であったり、「②行き先は決定決しているが①日程は未定」と言うユーザーけっこう多いんじゃない?と言うものであり、それに対する試みです。
「何も決まってないのに検索できるBOX」をつくってみた結果
そこで新たに誕生したのが、「①日程も②行き先も決まってないけど検索できるBOX」なのですが、これが既存の検索BOXに対して、CVR3倍のパフォーマンスを出しました。
※期間:1〜2月 対 3〜4月
※CVの母数:300以上(率の項目のみ開示ですみません)
実際のブツはお見せできないのですが、とにかく 日程と行き先をfixさせてなくても旅行を探すことができるナニカ だと思ってください。時期や行き先ごとに、最安値相場を一覧で把握することができる。みたいな感じです。
※好きな画像を3枚選ぶとピッタリの旅プランをレコメンドする!チャットでおすすめの旅をレコメンドする!的な、話題性だけの機能とは一線を画します。
コロナがはやりだして緊急事態宣言が出る少し前、3月のタイミングから仕込み、実装まではしていました。
新検索BOXと従来の一般的な検索BOXのパフォーマンスの比較がこちらです。
新検索BOX vs 既存検索BOX
※見方:1〜2月 → 3〜4月 (伸び率)
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新検索CVR
∟ 0.88% → 1.64% (+0.76)
既存検索CVR
∟ 0.74% → 0.49% (-0.25)
既存BOXに対して3倍のCVRを叩き出しただけでなく、新検索BOX自体の対比2倍に伸びました。
もう一つ、1人あたりの平均PV数も既存BOX経由を約1.8倍ほど上回っており、こちらもコロナ期間につれさらに増えています。
旅行の予約サイトにおけるPV数の多さは、そのサイト内で「きちんと比較検討が繰り返されている」と考えられるため、優秀である証です。
これは、コロナに強い検索BOXと言っても過言でありません。(過言)
「リアルタイム軸」が旅行予約で重要になる
この傾向から鑑みて、旅行予約の「リアルタイム軸」は強くなると感じました。
そもそも旅行の消費は、「●●に行きたい!しかも最安値で行きたい!」から始まります。余暇市場ですから。
実際に、旅行関連の検索キーワードをみても明らかですが、「エリア名 × 格安」のクエリが大半を占めています。これはホテル検索であっても同様です。
それがゆるやかに、「予算は◯円。どこに行くべき?いつ行くべき?」に移っていくと思っています。
理由は2つあります。
理由①:今回のコロナによって、「あれ、意外といつでも休めるかも」を体感した。今後もさらに企業のリモートワーク化は進み、有給休暇の取得も容易になる。それによって週末や大型連休にこぞって予定していた旅行市場がいくらか分散され、その結果需給のバランスがよりリアルタイムで変動するようになる。
理由②:より動的な「リアルタイムの観光地情報」が購買決定軸に加わり、従来までの静的な観光地情報(沖縄のおすすめ観光地◯選!的な)の価値が薄れる。「情報格差」の対象が、量から鮮度に移るため。
ユーザーの視点で要するに、
「お盆休みに沖縄に行きたい、どこで予約したら一番安いかな」
から、
「来月 ××,000円くらいで2泊するならどこに行くのがコスパ最高かな。まあ今月でも行けるけど」
このくらいフワッとした感じになると言うことです。
これらの変化は既に起こりつつあったものですが、今回のコロナによってより拍車がかかると思います。
「働く」はリモート化し、「消費する」はピア化する。
旅行業もホテル旅館業も、あまりリモートワークを求められない業界でしたが、今回のコロナによって強制的にリモートワークを取り入れられたのではないでしょうか。
ツアー造成、工程表、顧客データの管理、部屋割り、食材の発注、経理など、どこで作業しても成果物の品質が変わらない仕事は、たしかにリモート化するべきです。
しかし個人情報を扱う業務が多いので、よりセキュリティ面への配慮が進んだシステムが必要になります。そこにも市場があると思います。
一方で消費者には、普通に生きてたら意識することのなかった「不要不急」という謎の概念が植え付きました。たしかに、不要で不急なものはあるなと思ってしまっています。
それによって、本当に重要な モノ,コト,ヒト との時間にシワが寄り、より深くて密度の濃い時間が求められることになると思います。(※感性的な表現で恐縮ですが観光業の方なら通じるはず)
人にとっても経済にとっても、観光業は必要不可欠な産業であることに変わりありませんが、元通りになるのはもう少し先かもしれません。今の間にどうでもいいテストは済ませておきましょう。
リクエストと一緒にお待ちしております。