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スズメの餌やり in Battery Park, Manhattan

最近のある夕食後、久しぶりに頭の中を整理するためにNew York訪問時の(自分で写した)全ての画像(静止、動画からの静止)を流してみた。大量にあるので、本当に流しただけだ。
 
その中で、忘れていたわけではないが数年ぶりに見た映像が入った。
それはマンハッタンの「バッテリーパーク」での休憩時に写したものだ。
自分一人で行った時の映像なので、思い当たる年は2015年だ。2002年にも一人旅だったが、その目的は明らかだ。「9.11」が前年だったので、その復旧具合を自分の目で見たくて訪れたのだった。
 
2015年は目的のない一人旅だ。全て出たとこ勝負だ。
そこで、ふと思ったことがある。それは、バッテリーパークで休んだことがない、ということだ。
 
自由の女神に行く選択肢もあったが、私はあえて海を見渡せるベンチに腰掛けてみた。
 
海に向かって右側には自由の女神に行く船に乗るための長蛇の列。その人たちからチップをもらうべく親子がパフォーマンスを披露。私が今まで見た中でも最低な下手糞。パリでも下手はいたがここまでではない。とは言え、子供が一生懸命だからかわいい。

左手にはスタテン島へのフェリー乗り場がある。何人乗りなのかわからないがフェリーがどでかい。私も乗ったことがあるが、2002年の時には、フェリーに機関銃を備えた沿岸警備艇が護衛してくれていた。その年はワシントンDCのホワイトハウス上空をヘリコプターがしきりに飛び交っていたことを覚えている。それまではチェックだけで入れた政府の建物には予約しないと入れなくなっていた。

というわけで、バッテリーパークの海に向かって右側の長蛇の列は、警備のために建てられた大きな白いテント張りの中に姿を消す。中では荷物のチェックと場合によってはボディーチェックが待ち構えている。
 
そんな景色をのんびりと眺めながら最後に遠くに見える自由の女神に目をやる。その右側にはエリスアイランドが見える。そこで撮った画像を「行方不明のスーツケース 1」の中で使ったばかりだ。タイトルにぴったりだからだ。
 
そんなことをぼーっと考えたりなどしてふとベンチの周りに目をやってうれしくなった。
私のベンチの前にはブラックバード、はとなどと一緒にたくさんの雀が何かをついばんでいた。
 
留学中のことを思い出していた。
大学キャンパスの芝生に寝そべっていると、雀が周りで遊んでいてうるさい。日本なら、私が体を動かせば飛んで行ってしまう雀。
気が付けば、アメリカの雀は逃げない。ほかの鳥も楽しそうに動き回っているが、逃げない。
その時に、私は一度でいいから雀に餌をやってみたい、と思ったのだ。しかし、そんなことをしている人がいない。リスにその辺に落ちている木の実をあげたことはあるが、雀はない。
 
マンハッタンのバッテリーパークでの休息のベンチ。
急に雀に餌をやりたくなったのだ。
しかも、手元には昼のために買ったサンドイッチがある。
 
試しにパンをほんの少しちぎっていろいろな鳥がせわしなく動き回っている辺りに投げてみた。

いつの間にかカラスまで遠巻きにしてチャンスをうかがうのだ。
ブラックバードも懐かしい。大学のキャンパスで遊び相手になってくれたりしたことを思い出す一時でもあった。
 
彼らの眼は確かだ。あっという間に私が投げたちっぽけなパンの屑に向かってとびかかった。

これで私は勇気百倍だ。
 
指でパンくずを持って、スズメが来るのを待ってみることにしたのだ。
何のことはない。すぐに3,4羽のスズメがベンチの上に群がる。パンくずが欲しそうだが、戸惑っている。

私がそのパンくずを掌に乗せてみた。 
大成功だ。
スズメがそのパンくずを食べようとしてくれたのだ。
我慢強く静かに指先を動かさないでいると、食べてくれた。
パンくずを口にした途端に、飛び立ったりして地面に降ろして食べたりしたのだ。
 
他の鳥たちもチャンスを捉えては、ホバリングしながら私の指先からパンを食べるのだ。
 
向うの地面には鳩たちが集まってきた。
 
私は邪魔されたくなかったので、鳩の方にもたくさんのパンくずを投げてあげた。
気が付くと30分近くも餌やり遊びを続けていたのだ。

そのうち、私は自分の昼のサンドイッチを食べることにした。
連中はそれももらおうとホバリングしたり、私の足元に近づいてきたりベンチの上でチュンチュン鳴いたり、実に楽しい時間を過ごした。
バッテリーパークはいい思い出のパークとなったのである。
夢かなう。

満足してそのばを離れてみると、小さな看板があった。

「鳥などに餌をあげないでください」

知らなかったとは言え、「ごめんなさい」
アメリカでこんな看板を見たのはこれ一度きりでした。



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