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「子供のために」という呪い

モラハラ夫との離婚をためらう母を持った息子(30代)の話を聞いた。

母は、父と別れて息子に迷惑が掛からないか心配だと息子である彼に相談してきたのだという。息子の立場からすると、なぜ別れないのかずっと不思議に思っていたそうだ。なので彼は二つ返事で離婚に賛成した。

彼が20代の頃、あんなひどい父と離婚する気はないのかと尋ねたことがあるそうだ。すると

「あんたら(息子たち)がいるうちはする気はない」

と言われたらしい。その時点で彼は、母は離婚する気はない(=モラハラなんてあまり気にしていない)のだと判断したのだそうだ。私からしてみれば、その判断自体どうなの?と思うところではあるが、モラハラをされながらもずっと明るく振る舞い続ける母を見てきたせいで、母はモラハラにも負けない強い人間であるのだと思い込んでいたのだという。なので急にモラハラの蓄積が原因で離婚すると言われたとき、驚きと同時に自分たちのせいで母が離婚できず辛い思いをし続けていたのかという気づきと罪悪感がわいてきたのだそうだ。

このケースは、息子が少し鈍感だったのだろうと思う。

モラハラ夫と言ってもさまざまで、離婚の腹いせに自分の子供に危害を加えるようなイカレたクズ野郎も現実に存在するし、単に離婚後経済的精神的に自立する自信がない母が、子供のせいにして先延ばしにしているだけという場合もある。また、夫に長期にわたりモラハラを繰り返された妻が、正常な判断を出来なくなってしまっていることも多い。

彼の母は明るく行動的ですぐ自立できそうということなので、ただただ、今後の人生を自分のためだけに楽しんでほしいと思う。


我が家の話をする。

我が両親は私が小学校低学年の時に離婚した。

しょうもない父親に未練など皆無だった私は、祖父と一緒に役所に離婚届用紙をもらいに行き、母に離婚を促したほどだ。

なので、母にこのよう(お前のために別れられない)に言われた経験はない。

そのかわりという訳でもないが、伯母(父の姉)には「お前のために云々」と、散々言われ続け育ってきた。

なので、子どもの立場として言わせてもらうなら

子どものせいにするな。迷惑だ。
たとえ本当だとしても黙ってろ。口に出して言うな。

ただの呪いでしかない。

本当にやめてほしい。


私の父はどこに出しても恥ずかしい立派なクズ男だった。
離婚後、私は母に引き取られたが、父の実家とは頻繁に行き来があった。
そんな中、父が問題(借金・他人への暴言など)を起こすたび、伯母が尻ぬぐいをしてまわっているのを間近で見てきた。

幼かった私は伯母に対し、なぜ面倒を見るのか、本人に償わせるのが筋ではないかといったようなことを意見すると

お前のためだ

と言われ続けた。

具体的にはこうだ

★私の意見【反省させたほうがよい】
反省しろと(親や親戚が)叱る→父、暴れる→近所に警察をよばれる→父、捕まる→お前(私)は犯罪者の子供になる(強く注意しないのはおまえのため)
★私の意見【お金をわたさない方がよい】
お金を渡さない→父、よからぬところから借金する→父、返せないので逃げる→お前の所に借金取りがくる(仕方なくお金を渡すのはおまえのため)
または別バージョンで、
お金を渡さない→父、銀行強盗に入る→父、警察に捕まる→お前は犯罪者の子供(仕方なくお金を渡すのはおまえのため)

何を言っても、すべて上記のようなパターンで済まされてしまう。
私は犯罪者の子供になってもいいから、父が罪と向き合い、罪を償うことの方が大切だと思うというと

「おばあちゃんを犯罪者の親にしたいのか」

と言われた。(別に既に子育て失敗しているのは自明なんだからいいじゃんと思っていたけど口には出せない雰囲気だった)

納得いかなかったが、反論できるような話術も頭脳もない子ども(小学生)を黙らせるには十分な言葉だったと思う。

最初は伯母の家庭をも巻き込んで問題を起こし続ける父を断罪したいと思う気持ちや、伯母の家族に対して申し訳ないという罪悪感が主だった。だが次第に、父を甘やかす伯母や親戚に対しての怒りの感情も芽生えてきた。中学に上がるころには、父を完全犯罪で消し去りたいとか、父方の親戚全員がバスに乗っているときに事故って全員死ねばいいのになどと思うようになっていた。

ここでは割愛するが、伯母を始めとる親戚が、父に対して強い態度をとれない(彼らなりの)理由があった。しかし、その理由というのは、私には到底理解不能なものだったので、なおさら父や父の親族に対する憎悪が募った。

「お前のために」

そう言わざるを得ない事情を抱えた人もいるだろう。

でも、言葉として吐き出す前に、この言葉は子どもへの呪いにもなるという事に気が付いてほしい。追い詰められて、そんなこと考える余裕がない場合も多いだろうが、心の隅に留めておいてほしい。

「お前のためを思って」「お前のために」
が、
「お前のせいで」

に変わる瞬間が、ある日突然やってくるかもしれない。

そしてこどもはこう思うだろう。

自分さえいなければ

自分さえいなければ、自分さえ生まれてこなければ、母(対象となる大人)は苦しまずに済んだのに。
自分さえいなければ、母は逃げ出すことができたのに
自分さえいなければ、皆が苦しまずに済んだのに……

私が子供ならこう言ってほしい

「一緒に頑張って乗り越えよう」「一緒に逃げよう」と。

「一緒に考えて」でもいいと思う。

私自身、本来必要のない罪悪感を植え付けられ、本当に辛かった。30歳くらいまでずっと辛かった。

子供の心は脆い。でも、決して弱いわけではないと思う。
だから、一緒に乗り越えられる場合も多いと思う。

ただ、子供には決して背負わせてはいけないものもあるだろう。

そして、子供のために耐える、乗り越えると決めたのなら、どんなに辛くても子供の前で呪いの言葉を吐いてはいけない。(態度もだけど)
※弱音はOKだとおもう

今は、こうしてネットにどんな愚痴だって書き込める時代だ。どんどん書き込めばいいと思う。子供に呪いを吐くくらいなら、ネットの便所に落書きしている方がまだましだ。

家族や友達がいなくても、ネットには必ず似たような境遇の人や、助けになってくれる人、ヒントをくれる人がいるはずだから。


それにしても、親って大変なんだね。

あと、バカな親を持った子供も大変。
(うちは母もかなりのアホだったから大変だった)


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