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幹事は雑用じゃねえ。会食や接待を舐めるな!〜店選びと手土産選びはプレゼン、「昭和のノリ」でオヤジを転がせ!

12/18発売にされる田端信太郎の新著【これからの会社員の教科書】から抜粋です。季節がら、社内外との忘年会の幹事等を若手社員が担当することになるケースは多いと思う。単なる雑用と思って、舐めてかかると、とても損します。幹事こそ、デキる人間の仕事です。

幹事を経験することで 得られるもの 

飲み会の幹事を経験することで得られることはたくさんあります。
きちんと幹事をまっとうすることができれば、みんなから感謝とリスペクトを得ることができます。そしてなにより得られるのは「影響力」です。

「権力」と「影響力」は違います。

権力とは、相手が服従せざるをえない命令を出せることです。一方で、影響力というのは、自発的に相手が感じ取り、従いたくなる魅力のことです。
たとえば、ぼくが直属の部下に「こうしなさい」と言ったら従うでしょう。これは 「権力」です。一方、ぼくの部下でもない関連会社のエンジニアから「田端さんの言 うことは正しい気がするから、この人の方針についていこう」と思われる。この場合 は「影響力」です。


いい飲み会は、この「影響力」が利いています。幹事にユーモアや適切な仕切りがあると、いい影響力を及ぼすことができます。一方、偉い人が「今日は盛り上がろう ぜ!」と言って、みんなに無理に飲ませて盛り上がる宴会なんかは、超寒いわけです。 

飲み会が盛り上がっているときのグルーヴ感というのは、権力関係の中では決して得られないものなのです。みんなが「今日は楽しかった」「盛り上がった」と思って帰ったとしたら、結果的 に幹事は参加者に対して、ものすごく「影響力」を発揮したことになります。幹事に は影響力が必要だし、裏を返せば幹事をやることで影響力が身につくともいえます。 


ダメな人ほど、幹事を命じられたときに「よくわからない雑用を押しつけられた」 と思って「いつもの居酒屋でいいでしょ?」と適当にすませてしまいます。「幹事さ んおまかせコース3500円」みたいなものを選んでしまう。これは幹事の大切さを わかっていない人の行動です。
頭脳労働の仕事が増えてきて、組織の階層がピラミッド構造でなくなるにつれ、いわゆる「権力」より「影響力」のほうが、リーダーシップをとるうえでも大切になってきます。

幹事とは、「DJ」であり、おしゃれに言えば「パーティオーガナイザー」です。 そこで適切に盛り上げられることは、その場をうまくプロデュースできているという こと。それは最近の知識労働ビジネスにおけるマネジャーの役割にこそ必要な力です。 幹事の仕事は、もちろん出欠確認などの最低限のことは必要ですが、そのうえでど うするか、が問われています。すごく難しい仕事ですし、新人に宴会の幹事を任せる というのは「こいつどうかな?」というお手並み拝見をしているわけです。


では、具体的にどういう飲み会、宴会がベストなのか。そこに客観的な唯一無二の正解はありません。ぼく自身、どんなにうまくやったつもりでも、もっといい答えがあったのではないか、と思うことばかりです。
幹事は雑用に近いけれど「不定形業務」の最たるものです。目的もハッキリしているものとそうでないものがあるので、自分なりに定義したほうがいいでしょう。


ぼくの持論は「いかにうまいものを食べさせられるか?」という部分が大きな割合を占めているということです。人は生物としておいしいものを食べさせてくれる人についていきます。まずいご飯は絶対にテンションが下がる。まず、おいしいものを用意したうえで、さらに、そこにどういうメッセージを乗せていくか。そこに幹事のセンスとスキルが問われていま
す。

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会食や飲みの席での振る舞い


まず「お酌をどちらがするか」問題があります。最近はお酌のカルチャーも減ってきていますが、お酌をしてもらって悪い気がする人はいません。基本的には四の五の言わず、目上の人には、自分からお酌をすればいいのです。
よくおじさん同士で飲みに行くと、どちらがお酌をすべきか迷ったりするものですが、ぼくの場合はなるべく自分からするようにしています。「どちらが上か」なんてことは考えずに、シンプルに自分からすればいいのです。それをやっておくと、他の場面で好き勝手やっていても「あいつは悪いやつじゃない」とかばってもらえるようになります。いやらしい話、保険がかかるのです。

そこで、変に今どきの論理を持ち出さないことです。「お酌をするのは古い」とか「自分は誘われた側だからやらなくていい」など、気持ちはわかりますが、もう中2ではありません。「昭和なノリ」で得するのであれば、さっさとやっておけばいいのです。


世の中には、礼儀を大切にする人もまだたくさんいます。そういう人は逆に言えば扱いは楽なのです。わかりやすい。形式的でもいいから礼儀を守っていれば嫌われないからです。年長者にお酌に行くなんて簡単なことです。さっさと自分から懐に飛び込んだほうがいい。腹を見せたほうがいい。「なんであんなおっさんに媚びへつらわないといけないんだ」といってお酌に行かないのは損です。別にそんなに複雑なことは求められていないのです。
若い人ほどそういう、昭和の礼儀のようなことをやりません。だからチャンスなのです。敬語を使う、お酌をする、おごってもらったら御礼をする。簡単なことでも、それを徹底するだけで一目置かれます。


あたりまえですが、先輩・上司からおごってもらったらお礼をすべきです。
別におごり返す必要はありません。翌朝、ひとことお礼を言う。会えないのならメールでお礼をすればいいでしょう。あとは、先輩・上司が困っているときに助けるなど、仕事で返すことです。
あるいは、英語で「ペイフォワード」と言うのですが、自分が先輩になったときに「ぼくも○○先輩におごってもらっていたから」と名指しにしながら、後輩に対して同じことをすればいいでしょう。これがいちばん美しい対応です。ぼく自身、そういう先輩ばかりだったので、後輩と会食に行くときは自分が支払います。

新社会人はおごられることに慣れていないかもしれません。
ただ、おごる側の先輩も深く考えていなかったりします。「何か具体的な見返りを求められているんじゃないか?」と思うかもしれませんが、そんなことはないでしょう。年をとるとわかるのですが、若者が「めっちゃ、おいしいです。こんなおいしい肉はじめて食べました!」ってむしゃむしゃ食べてくれたら、おごる側のおじさんは、すごく気持ちがいいのです。

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店選びと手土産選びはプレゼンテーションの舞台

「取引先との会食で、どちらがお代を出すか」という問題もあります。
いわゆる「接待」なら関係はわかりやすいので、どちらが払うかは明快です。ただもう少し対等な関係のときは、慣例的には店を予約したほうが払います。「今度、食事しましょう」という話になったとき、どちらが店を予約するか。ここには剣豪同士の間合いのような読み合いが実はあります。


もしこちらが出してもおかしくないような関係性なのにおごられてしまいそうなら、手土産を持っていきます。店を予約された時点で相手にお代を出されるとわかる。その場合は、借りをつくらないよう手土産を用意していくわけです。このあたりは、将棋の読み合いのような奥深さがあるのです。


おごられたら翌日に「ありがとうございました」とメールをするのはあたりまえです。ただ最近は、これがあまりに形式的な儀礼になっています。もちろんやらないよりはいいのですが、やりさえすればいいのかというと、そうではない。
とにかくイマジネーションを働かせましょう。その状況の中で「こうやったらこう思われるに違いない」と想像して、どうやって相手に「こいつやるな!」「一味違うな!」と思わせるかが重要です。
お礼をすることはいいのですが「とにかく手書きのハガキを出せ」とかいうのは本質ではありません。「ほとんどの人がメールやLINEでお礼をするはずだから、手書きのお礼状は印象に残るだろう」というような発想の仕方が大切なのです。手書きのお礼状をみんなからもらっているような人だったら、もしかしたらぜんぜん違う方法をとったほうがいいかもしれません。
「会食の店選び」と「手土産選び」は、大切なプレゼンテーションの舞台です。これらについて書かれた本もいっぱいあります。ただ、変に仕事ができる若者ほど「どうでもいい」と思っているふしがあります。


たとえば忘年会シーズンで、相手は毎日会食が入っているような場合。会食で疲れていそうならあえて健康ランドに行き、サウナとマッサージからビールを飲んでみるのもいいかもしれません。相手がうれしいことでないといけませんが「いかに印象に残せるか」のイマジネーションこそが重要なのです。


人間にはいろんなタイプがいます。たとえば海外出張に行った日本人でも「和食が恋しい」という人と「せっかくだから現地のものを食べたい」という人がいる。どんなときも普遍的な正解はないのですが「この人はきっと毎晩フレンチばかり食べているだろうから、煙がもくもくしているような庶民的な焼き鳥がいいんじゃないか」と考えることが大切なのです。


島田紳助さんが言っていましたが、たとえばきみがM‐1グランプリの予選に出るとしたら、どういう話をするでしょうか? 1組あたり2分ほどのネタ。審査員は延々と半日くらいネタを見せられている。自分の出番は、予選が始まって4時間くらい経ったころ。その状況をいかに前向きに捉えるかが大切です。「審査員のみなさんお疲れでしょ?」みたいなことを冒頭に入れて、これまでのすべてのグループのネタを自分たちの前フリとして利用することができれば、審査員から見て「こいつ、やるな!」と記憶に残るでしょう。


お店選びはプレゼンテーションです。
相手の状況をきちんと把握して、どういうものを提示すると驚いてもらえるのか、よろこんでもらえるのか、を考えるのはつねに仕事の本質です。

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