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感想「アナイアレイション -全滅領域-」〜見たいものを見せてあげる〜

「MEN 同じ顔の男たち」のためにアレックス・ガーランド監督作を予習。

ナタリー・ポートマン、オスカー・アイザック、テッサ・トンプソンにベネディクト・ウォンまでMCUのキャストが共演。


生物学者レナのもとに、1年前に極秘任務へ赴いたまま行方不明だった夫ケインが突然現れる。

彼は記憶が曖昧になっていて、いきなり吐血すると危篤状態に。

ケインは謎の領域「エリアX」から戻った唯一の生存者らしい。

レナは夫に何があったのか知るため、エリアXの調査隊に志願する。


美しい地獄と言いましょうか、禍々しい楽園と言いましょうか…見事な世界観!

静かなる傑作でした。


以下ネタバレあり。



1つの株から幾種類もの花を咲かせる植物、サメの歯が生えたワニ(1歩間違えたらZ級なのに美しい!)、腸がウナギになった人間、殺した人間の断末魔を鳴き声としてコピーする頭蓋骨丸出しのクマ…

もう目が離せませんでした!

エリアXを覆う光「シマー」も稀有な魅力を放っています。

シマーがしばしば人に見せて惑わせる幻。時に美しく時におぞましい、目が離せなくなる光のトリック。それはまるで映画のよう。


エリアXは人を死に導きますが、調査隊のメンバー(ケインのことを知っているレナ以外)は生還者がいないと聞いた上で志願しています。

それぞれ愛する人の死や病によって生きる気力を失い、死を覚悟で各々の専門分野の発展に貢献していると。

クマは人の声をコピーし、映画は人が目を離せなくなる、見たがるものを見せ、シマー(エリアX)もまた人の意思に沿っているだけ。

そこで最後に向かい合うのはもちろん自分自身です。


そんな終盤で「フランケンシュタイン」の怪物を思い出しました。

突然変異で生まれ、人を恐怖させたものの、彼らのおぞましさを映し出しているに過ぎなかった彼。

「フランケンシュタイン」は三重の入れ子構造になっていて、フランケンシュタインと出会ったウォルトンが姉に宛てた手紙という形式です。

そこでフランケンシュタインが怪物について語り、さらにその中で怪物が自分の経験を話します。

本作もまた調査から戻ったレナが体験を語り、その中で前の調査隊が残したビデオを見ていました。

そして、観客がそこに見たいものを見出すことで三重の入れ子構造が完成するのです。


意味深なラストをどう見るか。最後に向かい合うのは自分自身。

同じ顔の男たちを描くアレックス・ガーランド監督の新作が楽しみです。

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