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上書き保存か、名前をつけて保存か
よく言われていることだけど、ワインは“誰と飲むか”がやっぱり大切なのだと。思い出を振り返っても、ふつふつ湧き上がってくるのは、大切な人、もしくはそこから大切になる人、あるいは大切だった人と飲んだワイン。
たまに思い出す、ブルゴーニュワインの世界に確実に一歩踏み込んだ夜の出来事も、その人と飲まなかったら、その一歩はなかったかもしれない。
昔、人に勧められて、行ってみたいレストランがあった。その時の私にとってはちょっと背伸びになる、フレンチレストラン。たまたま行く機会ができて、本当に軽い気持ちで予約をした。
夫婦2人だけでやっているそのレストランは、こじんまりとしたアットホーム感の中にも、背筋が伸びるような、上質な雰囲気がある場所だった。
コース料理もワインも、ほんとにほんとにほんとに美味しくて、アルヌーラショーのニュイ2013、コスラボリ2002を開けてもなお、まだ何か飲みたいと、もう少しこの場所で話をしていたいと、渇望していた。多幸感でもういっぱいなのに。
そんな私たちにソムリエールさんが紹介してくれたワインが、この日のことを一生忘れられない出来事に仕上げてくれた。
Domaine Bernard Martin Noblet
Vosne Romanée 2001
目の前に風が吹き抜けて、ブルゴーニュへの扉が強く開かれた瞬間。
ワインエキスパートの資格を取ったとは言え、ワインの経験値はまだまだだった私。熟成を経ないと現れないこの妖艶な香りは、いままで体感したことがないものだった。多幸感以上の多幸感がそこらじゅうに溢れていた。
目の前にいた人は、シェフとソムリエールに「お客さんもいませんし、一緒に座ってこのワインを飲みませんか」と提案をした。なるほどそんなこともあるのかと、その人のお茶目な提案に別の新しい扉も見えた。
この造り手のワインは、これを含め2回しか飲んでいない。同じく、このレストランMONBOUSQUETで飲んだ同じ場所の2007年。その時は、その人とはもう飲めなかった。でも、本当に素晴らしいワインだった。
そしてその造り手のワインが3、4年ぶりに目の前に、2本やってきた。ブルゴーニュルージュで、エチケットは違うのだけれど。
さぁ、いつ飲むか。どう飲むか。上書き保存か名前を付けて保存か。
この答えは、この外出が憚られる世の中が落ち着くまでは出ることはないんだろうなあ。
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