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3/8国際女性デーに読みたいフェミニズムの本 2024年版

3月8日は「国際女性デー」。女性の自由と権利を謳い、達成してきた成果を認識する日とされています。フェミニズムの長い闘いの歴史を確認する日だといえるでしょう。

タバブックスでは日本、韓国のフェミニズム書籍を刊行してきました。女性蔑視、ジェンダー格差、性暴力、フェミサイドなどに対する女性たちの行動、また最近では性の自己決定権、女性労働表象、女性議員を増やす取り組み、差別や抑圧を最小化する取り組みなど、フェミニズムに関わるテーマを幅広く取り上げています。ぜひこの時期に読んでいただきたくご紹介します。

セーファースペース(ZINE)

編著 皆本夏樹+gasi editorial

緑のツタのような線が交差しているデザインの表紙。タイトル SAFER SPACE セーファースペース

ジェンダー、セクシュアリティ、障害の有無、人種、国籍、階級、年齢、能力などに基づく差別や抑圧、ハラスメントや暴力をできるだけゼロに近づけ、さまざまな属性を持つ人がお互いを尊重し合える空間をつくる試みを紹介。あらゆる空間をより安全にしていくための一冊です。
差別や抑圧を再生産しないように、みんなで失敗や反省を繰り返しながら空間を作っていく過程には、交差的な視点を持ったフェミニズムが不可欠であることがよくわかります。

このZINEを作るきっかけになった書籍が、堅田香緒里さんの『生きるためのフェミニズム パンとバラと反資本主義』です。

生きるためのフェミニズム パンとバラと反資本主義

著 堅田香緒里

Feminism、正義、Dignityなどと書かれた布のパッチワークが背景の表紙。タイトル 生きるためのフェミニズム パンとバラと反資本主義 堅田香緒里 私たちはみな、資本主義という恒常的な災害の被災者である

この本は、家父長的である資本主義に奉仕するような、特権的な1%の女性のためのネオリベラルなフェミニズムを拒否し、99%が尊厳を持って生きるためのフェミニズムのあり方を教えてくれます。
同じ女性であっても、性差別と人種差別などが互いに重なりあって作用するため、経験が異なりうるという差別の交差性について書かれています。

人種やジェンダー、セクシュアリティ、障害などをめぐる複数の抑圧がお互いに交差し、差別と従属の構造が形づくられているのである。

インターセクショナリティ(交差性)の視点

労働系女子マンガ論!

著 トミヤマユキコ

青い背景に花や髪の毛や腕などの絵が描かれた表紙 タイトル 労働系女子マンガ論! トミヤマユキコ

働く女子が出てくるマンガ=「労働系女子マンガ」。ライターで研究者の著者が「女性と労働」の視点からマンガを読み、男性中心の職場、仕事と恋愛、セックスワーク、就職氷河期、主婦の労働といったテーマを拾い上げながら論じています。働く女性たちの悩みには、労働系女子マンガが答えてくれるかもしれません。

取り上げられている労働系女子マンガ:『ベルサイユのばら』『美少女戦士セーラームーン』 『動物のお医者さん』 『ハッピー・マニア』 『ちひろさん』 『重版出来!』 『娚の一生』 『椿荘101号室』 『海街 diary』 『愛すべき娘たち』など

透明人間 Invisible Mom

写真・文 山本美里


学校の中で息子の後ろに白い布をかぶって隠れている母親の写真の表紙 タイトル 透明人間 写真・文 山本美里

重い障害を持つ「医療的ケア児」の通学には、当然のように母親が付き添いが要求され、週のほとんどを学校に拘束されます。その間は仕事に出ることもできないし、家事もできません。さらに「お母さんは気配を消していてください」とまで言われた著者は、「私はここにいる」と言うように自分の姿を写真に撮るようになります。
30年前から変わらない制度に対し、母親が自分たちの人生を自分たちで選択できる未来への強い願いが込められた一冊です。
ユーモアに溢れた写真の横で、率直な言葉がぐさっと刺さります。

「もしも、あなたに私の姿が見えるなら、見て見ぬふりをするのはズルいよな。」

「透明人間 Invisible Mom」より


ティンダー・レモンケーキ・エフェクト

著 葉山莉子


ピンクとオレンジのグラデーションの表紙 タイトル ティンダー・レモンケーキ・エフェクト 葉山莉子

Tinder上で「日記」と名乗り、マッチした100人以上の男性たちに日記を送った著者の、実際の日記です。著者が恋をした相手の男性の日記も掲載されています。
その日食べたご飯や観た映画の話、仕事の話をするのと同じテンションで、セックスの話や性病の話、女性差別の話も書いています。痛快な日記です。

八月三十一日(水)

セックスは最大限のコミュニケーションであるから、話が通じない人に自分の身を委ねることはない。男性と一対一になったら、女であるわたしはどうやったって勝つことはできない。だから、自分にいやなことはしないだろうという安心があるかどうかが、かなり重要なチェック項目になると思う。それにまともに会話もできないような人間が、相手に快楽を与えることはできないと思う。
セックス、なめんな。

本文より

書籍化の前にZINEとして制作した際の、著者のnoteもぜひ読んでみてください!

PINK BLUE ピンク&ブループロジェクト

写真 ユン・ジョンミ
文 ソ・イオン
訳 小山内園子

ピンクの服や小物で埋め尽くされた子供部屋の中心に少女がピンクのドレスを着て立っている写真の表紙 タイトル PINK BLUE ユン・ジョンミ写真 ソ・イオン文 小山内園子訳

韓国の写真家ユン・ジョンミによる「The Pink & Blue Project」は、子どもたちに好きな色を質問し、その色のものだけを集めて撮影、成長してからも継続していくというものです。
ピンクの品々に埋もれる女の子。青い品々に埋もれる男の子。成長するにつれて好きな色が変わっていったり、変わらなかったりする様子も写真で見ることができます。色とジェンダーの関係をはっきりと視覚で感じられる写真絵本です。

誰も、私たちの色を決めることはできません。実は私たちは、とっくにわかっているのです。世界には女の子の色も男の子の色も、ないことを。世界にはピンクとブルー以外の色も、たくさんあるということを。

本文より

女性議員を増やしたい ZINE

著 濵田真里

赤、黄、青の幾何学的な図形が花のように配置された背景の表紙 タイトル 女性議員を増やしたいZINE 濱田真里

日本の政治分野のジェンダーギャップ指数は、146カ国中139位。衝撃的な数字ですよね。圧倒的に女性議員が少ない背景には、政治は男性のものという意識があること、家事や子育てや介護などを女性が負担していること、そして有権者などからの悪質なハラスメントがあります。
このZINEではそうした現状に対して、女性議員を増やすためにできる具体的なアクションも教えてくれます。立候補した女性をサポートし、ハラスメントを抑止するバイスタンダーになる方法も書かれています。ぜひ手元に置いて、選挙のたびに読み返したい一冊です。


タバブックスからこれまでに刊行してきたフェミニズム本はこちらにまとまっています!


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