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小説 避難訓練・後編/兼桝綾(仕事文脈vol.11)

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 事務センターの避難訓練は各区画毎に、避難完了までのタイムを図って、タイムが短いと表彰されるので、私は張り切ってスムーズに、全員を誘導したのに問題が起こった、ぬったんが、避難口を通り抜けられなかったのだ。大型のカゴ台車、しかも書類のぎっしりつまったダンボールの積んである、が避難口を三割程、ふさいでいたから。うちの区画が請け負っているデータ入力作業の、入力対象が箱で送られてくるのを、入力が終了したものから返送していたのだが、今月に入って進捗が思わしくなく、どんどん箱がたまっていき、もう壁一面をカゴ台車が埋めているのだった。避難経路の確保は本来、私の仕事だったけど、まあいいでしょって、この隙間から皆通れるでしょって、思っていた。

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