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購買金額との関係は、「NPS・他者推奨」より「愛着度」の方が強かった。(あと、食品・調味料など低関与でも推奨度はあげられる)

推奨度と愛着度(または好意度、熱狂度)。

どっちの指標が購買金額とリンクするのだろうか。

今のところの答え:愛着度。

でもそれだけじゃいろいろわからないよね、というのがこの文章。

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日本では本当にNPSの有効性が低いの?

日本人は他人にお奨めするのを避ける傾向が強いので、NPSが低めになる」というのが、NPS・正味他者推奨比率という指標を日本で使う場合の制約だというのは、あちらこちらで語られている。

※NPSの定義からすると、この表題や上の文章は正確でないはずだけど、あとで探すときとか用にキーワードとして書いてますごめんなさい。

最近読んだヤッホーブルーイングさんの本でも、「他人には奨めないけど、購買も愛着も強い人たち」を、「(語弊はあるけど)内向的なファン」と位置づけて、見落とさないようと注意喚起していた。

そこで、実際のところはNPSが実際にブランドの売上にどんなふうに影響してくるか、実際に複数の食品・飲料についてSnapDishユーザーに聞いてみた(答えてくれた数1000人強)。

複数の商品について、購入している人たちの他者推奨、愛着度、購買金額などをきいて、指標間の関係を調べた。

【愛着度】シンプルで、未来の価値をはかるための選択肢の作り方

ところでSnapDishで使っている「愛着度」という指標は、以下のような項目。

6,人生に欠かせないくらい大好き
5,大好き
4,好き
3,どちらでもない
2,あまり好きではない
1,好きではない

元々は5段階で「大好き~好きではない」をきいていたが、ファンベースカンパニーさんが提唱しているファンベース診断(下記)で聞いている現在の好意度などの項目を参考に、最上位に「人生に欠かせないくらい大好き」が加わって6段階になった。

7,愛があると言えるほど好き
6,大好き
5,好き
4,まあまあ好き
3,好きでも嫌いでもない
2,あまり好きではない
1,正直言って好きではない
https://www.fanbasecompany.com/information/fanbasecheckup.html

ファンベースカンパニーさんのものをそのまま使わなかったのは、知的財産権の尊重ももちろんあるけれど、社内のメンバーから出てきた以下が主な理由。

・もともとの設問と連続性があった方が比較ができること
「愛がある」という表現が人によってはやや選びにくいこと
・「人生に欠かせないくらい大好き」という表現だと未来の価値を内包してて、僕らにとってよりよいと思えたこと

未来の価値については、先日セミナーでご一緒させていただいた石原夏子さんの「ファンとはその商品・ブランドの未来に期待する人」という観点も社内で意見が出てた。

ほんとは未来の観点は別の設問にわけたらよいけれど、ユーザーはアンケートに答えるためにサービス使ってるわけじゃないから、なるべく設問は減らしたかった。

ほかに知られたところだとトライバルメディアハウスさんは熱狂度として以下のような項目を使っている。

5、私は○○にすっかりハマっている
4、私は○○に愛着を感じながら使っている
3、私は○○を好きで使っている
2、私は○○を悪くはないと思いながら使っている
1、私は○○をなんとなく使っている
https://www.amazon.co.jp/dp/B078M7ZRSG/

これも表現が工夫されていて、特に1番下の「なんとなく」という「思い入れのなさ」を引き出す表現とかいいなと思うのだけど、これも解釈の余地がちょっと分かれてしまう部分もありそう。特に4と3あたり。

いずれにしてもSnapDishで使っている設問は、ファンマーケティングの先輩方の着想を大きく参考にさせていただいている。感謝申し上げます。

そんなわけで比較的プレーンな現状の案に落ち着いている。

他者推奨度と購買金額:激レアさんもいるよ

で、本題。

他者推奨度、愛着度、購買頻度の3つを(含む)アンケートつくって、いろんな商品について聞いてみた。

他者推奨は普通に「0-10」の11段階で、家族や友人にすすめる可能性を聞いた。

年間の購買個数は頻度から換算。アンケートを基にしたデータは、実際の購買行動よりはだいぶ多めになるといわれているけれど、他の指標との相関をとる分には傾向がわかればよい。

まずは、推奨度別の購買金額。過去1年以内にそれぞれの該当商品を購入したことのある人たちが母集団。

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右上がりなのは一目でわかる。推奨度6の人を基準にした場合、推奨度10の人は6の人の2.7倍も買っている。

0のところがおかしいけれど、1000人×複数商品の大量のデータの中に推奨度0という回答は6個分くらいしかなくて、そのなかに「他の人にわざわざオススメするまでもなくみんな好きだと思っているからです」「人生に欠かせないくらい大好き」で「毎週買います」というレア系の回答が2人分まじってたのでこうなった。

ちなみにこの6件中5件はシェアがかなり高い商品で、他人に奨めるまでもないという意識が働いていることがうかがえた。ついでに激レアさんは、フリーアンサーの内容もおもしろかった。

愛着度と購買金額:強烈な右肩上がり

同じように、愛着度との関係も出したところ、こうなった。

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基準値の4も、テキストとしては「好き」を選んだ人なのだけれど、愛着度6の「人生に欠かせないくらい大好き」の人の購買金額が圧倒的に高い

6,人生に欠かせないくらい大好き
5,大好き
4,好き
3,どちらでもない
2,あまり好きではない
1,好きではない

この2つのデータを見ると、後者の方が金額との関係が強そうなのはわかる。

そこで一応確認のために2つの指標の関係の強さを定量化したのが、冒頭の相関係数

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ただ、例えば愛着度の方が購買金額との関係が強かったとしても、別のデータと比較する際には推奨度を使った「NPS」の方が標準化されているので使いやすい。

なのでデータの解釈としては、「(日本では)NPSよりも購買金額と相関の深いファン系の指標はありそう。でも推奨度の有効性が低いわけではないよね」というあたりか。

どなたかの仕事で参考になることもあるかもしれないので、まとめておいた。

食品や調味料という「低関与」商材だと、家電などと比べて愛着推奨度があがりづらいとよくいわれるけれど、きちんと体験設計していけば一般のご家庭の生活者でも推奨度も愛着もあがっていき、それに比例して購買量もあがっていく。

このあたりは「体験・理解・交流」という3つの要素を生活者に提供していくと、これらのスコアが向上していくというのが、いま会社でメソッドとしてみえてきているとこと。これについても機会があればまとめたい。

実際にアクションに落としていくために

ただ、これらの数字はあくまで数字なので、実際にデータとして使うにはアクションに落ちなければいけない。まずは定性部分の読み込みや、他のデータとの連結で実際にはとるべきアクションを探していくことになる。

なので実際上は推奨、愛着、購買の関係をみながら、向上要因やエピソードをFAから掘り出すというのがよくある作業。

特に重視しているのは「推奨度」→「おすすめの理由(FA)」→「その具体的なきっかけ(FA)」の3段階の掘り下げてきくと、具体的なファン化のきっかけとなったエピソードが多く出てくるので、ここが宝の山。

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これと実際の料理投稿をみながら、妥当な仮説を作っていく。

あと余談だけど、上でも例を挙げたけれど、外れ値の人の定性データを読むと、外れ値である理由がわかることが多く、面白い

【宣伝】実際に特定ブランドのデータについて、マーケティングご担当にお話をお聞きします!施策との関係、売上への影響など。

・・・宣伝を忘れるところだった。

上記のデータについて、実際に特定のブランドのデータを見ながら、ブランドご担当者に施策との関係、売上への影響などいろいろと具体的なお話をお伺いするセミナーを来週2021年7月20日1に開催するので、気になった方はぜひお申し込みくださいな。

もちろん無料です!

アンケートモニターのデータだと、特定ブランドの購入者を母数にした際に「定性部分が十分な回答が集まりにくい」「裏付けとなる生活が見えない」などの課題があったり、特定ブランドコミュニティのデータだと「他商品と比較が難しい」など課題あったりすると思うので、日常の料理投稿愛着・推奨度高い層との関係づくり両立できるプラットフォームとして、生活者・ブランド双方のお役に立てるサービスでありたいと思ってます。



「SnapDish料理カメラ」というサービスを運営しながら書いています。