迷子になっていた子供が娘になりました
◯:久しぶりに色々買ったな
ここは大型ショッピングセンター
冬物の服が不足していたため買いに来ていたのだ。
〇:(別に彼女がいる訳じゃないんだから着回しでもいいんだけど
そう思いながら適当に歩いているとポツンと1人で立っている女の子がいた
5、6歳くらいだろうと目測し、とりあえず声をかけてみる
〇:どうしたの?
そう言うとその子は悲しそうな顔をして僕と目を合わせる
〇:迷子なの?
?:うん
〇:パパとかママと離れちゃったの?
?:パパもママもいない
〇:(そりゃあ迷子だからな
〇:君名前は?
?:さくら
〇:さくらちゃんか
〇:じゃあさくらちゃん迷子センターに行こっか
さくら:いやっ
〇:え?でもお家に帰れなくなっちゃうよ?
さくら:お家ないもん
〇:パパとママ心配しちゃうって
さくら:パパもママもいないもん
〇: …え?
子供の言うことだ。何かと勘違いしていると思うだろうが、この時の〇〇はさくらの言葉を信じた
〇:さくらちゃんはどこに住んでるの?
さくら:わかんない...
〇:それじゃあどうしようもないな
〇:迷子センターが嫌なら警察に.....
さくら:いやだっ一緒にいたい
そう言ってキュルキュルとした目でこちらを見てくる
〇:(家に連れて行っちゃうと誘拐になってしまうしな...
〇:やっぱり一緒にはいられないよ
さくら:お願い...おねがい
少し潤んだ目でそういうさくら
それにもう耐えられなくなった〇〇は...
〇:あ〜もうわかった。こいよ
(警察にバレたらその時だ
さくら:やった!
控えめな笑顔で喜ぶさくら
〇:(お菓子でも買って帰るか
そしてお菓子などを買い〇〇の家へ
〇:そんなに綺麗じゃないけどごめんね
さくら:うん......
〇:(さくらちゃんはどこに住んでるんだろ?
〇:とりあえずさくらちゃんお風呂入る?
さくら:うん
〇:1人で入れる?
さくら:うん!
〇:偉いな
そして服を脱がせると.....
〇:(あれ?なんで傷があるんだ?
背中の方に2箇所、アバラ辺りに1箇所アザがあった
〇:さくらちゃんこれ痛くない?
さくら:いたい...
〇:そっか。お風呂上がったら薬塗ってあげるよ
さくら:ありがと
そうしてお風呂に入っていくさくらちゃん
〇:今のうちに飯作るか
〇:(でもなぁ...やっぱりあの傷にしても迷子になってたことも...そして何よりさくらちゃんが常に辛そうな顔をしているのも気になるんだよなぁ...
晴れない気持ちを抱きながらキッチンへ
そうしてあれやこれや作っているとさくらちゃんが上がってくる
〇:さくらちゃんおかえり
さくら:ただいま
〇:さっき買った服そこに置いてあるからね
さくら:わかった
それから〇〇は料理の最終仕上げを行い...
〇:さくらちゃん出来たよー
さくら:はーい
さくら:これなに〜?
〇:肉じゃがと唐揚げだよ
さくら:からあ...げ?
〇:え...唐揚げ知らないんだ
〇:食べてみてよ
さくら:いただきますっ
パクッ
さくら:!!!
さくら:おいしー!
〇:良かった〜(少し元気そうな顔になったな
〇:でも唐揚げ知らないなんて珍しいね
〇:お肉の料理は何が好きなの?
さくら:あんまりお肉食べたことない
〇:へ〜(これまた珍しいな
〇:でもさくらちゃんが「おいしー」って言ってくれて嬉しいよ
さくら:おいしーもん
〇:よかった
それから凄い勢いで食べ進め......
〇:さくらちゃん良く食べるんだね笑
さくら:へへ
さくら:おなかいっぱい
〇:それじゃあ歯磨きして寝よっか
さくら:はーい
歯を磨いている間に興味本位でさくらちゃんが持っていたバックを開くと......
1枚のメモ帳が出てきた
そこには「××孤児院」と書かれていた
〇:さくらちゃん寝よっか
さくら:うん
〇:俺と一緒に寝ることになるけどいい?
さくら:うん。いいよ!
〇:ありがと
そしてベットが狭いこともありさくらちゃんの顔が近くなると
〇:さくらちゃん可愛いね
さくら:へへ
さくら:〇〇さん好き
〇:ありがと...笑
少し優しめにさくらを抱き寄せる〇〇
さくら:え?
〇:ごめんね、なんか守りたいって思っちゃってね笑
さくら:まもる...?
〇:わかんないか...笑
さくら:うん
〇:大人になったら分かるよ
さくら:へんなの〜笑
さくらが笑顔のまま寝たのはこの日が初めてだった
ー次の日ー
さくら:どこにいくの?
〇:ん〜俺もまだ行ったことないとこ
さくら:へ〜さくいったことあるぅ?
〇:たぶんね
〇:それより今日何食べたい?
さくら:なんでもいいよ
〇:嘘だ〜子供が何でもいい訳ないじゃん
さくら:だって言ったら嫌われちゃうもん
〇:??
〇:どういうこと?
さくら:わがままはダメだもん
〇:俺にはわがまま言っても嫌いにならないよ?
さくら:そうなの?!
〇:うん
さくら:じゃあステーキがいい!
〇:ステーキね...わかった
そうして〇〇達は目的地につき...
さくら:こ、ここはいきたくない
〇:さくらちゃんここに住んでたんでしょ?
さくら: …うん
〇:(やっぱり孤児だったんだ
〇:さくらちゃんに一つだけ約束する
さくら:なに?
〇:今からここに行くけど絶対にさくらちゃんを連れてお家に帰る
さくら:ぜったい?
〇:絶対だよ
さくら:わかった。いく
〇:よし
そうして××孤児院に入ると
「うわーん」
「たのし〜!」
「??くんがおもちゃとったー!」
〇:(何だここ...動物園か?
さくら:ガクガクッ
〇:さくらちゃん大丈夫?
さくら:こわい
明らかにこの場所に怖さを感じていた
〇:すいませんっ
?:はい...
〇:スタッフの方ですか?
?:はい。スタッフの△△と申します
〇:丁寧にありがとうございます
〇:あの...さくらちゃんの事なんですけど
△:さくらちゃん...?あ〜多分この中のどっかに居ますよ
〇:(ん?
〇:あの、さくらちゃんはこっちなんですけど
そう言って〇〇の横にひょこっと出てくるさくら
△:あ、そ、そうですね
〇:もしかして管理の仕方こんなにズサンなんですか?
△:まぁ...はい
〇:昨日の夕方にショッピングセンターで迷子になってたんですけど?
△:あ〜そういえば昨日は何人かでショッピングセンターに行きましたね
〇:それもちゃんと管理してないんですか?
△:はい...
〇:人のことなんだと思ってんだよ
△:いや...その......
すると...
ガラガラガラ
女スタッフ:あ!さくらちゃん!どこ行ってたの?
〇:ショッピングセンターで迷子になってたんですよ
女スタッフ:そうなんですね...すいません私どものミスです
〇:(あれ?この人ちゃんとしてんな
〇:あの...初めて来たようなやつが言うのもなんですが...ここ管理がズサン過ぎませんか?
女スタッフ:そうなんです。すいません
〇:その事とか諸々で話したいことがあるんですけどいいですかね?
女スタッフ:わかりました。それでは応接室に来てください
〇:はい。
△:さくらちゃんそこっちに来ようね〜
そういってさくらを沢山の子供の中に入れようとする
さくら:いやだ!いやー!!
△:わがまま言うな!
さくら:シュン
〇:(これが...わがまま言えなくなった原因か
〇:あの..15分くらいで終わらすつもりなのであっちに入れないでください
△:あ、わかりました
〇:じゃあさくらちゃん行こっか
さくら:うん!
女スタッフ:!!
少しビックリした様子の女スタッフを〇〇は見逃していなかった
ー応接室ー
〇:そういえば名前を言い忘れましたね。〇〇と言います
女スタッフ:白石と言います
〇:まず最初にお聞きしたい事があるんですけど、さくらはここに来るのを嫌がってたんです。
〇:それは何でなんですか?
白石:たぶん...イジメですね
〇:イジメ...
白石:さくらちゃんはあんまり周りと馴染めなくて一人でいることが多かったんです
〇:はい
白石:そしたらいじめの的になってしまったみたいなんです
〇:それを知ってて対処しなかったんですか?
白石:こちらとしても仕事量に対する人員の少なさが著しく、対処できてませんでした
〇:それじゃあ背中とアバラ辺りのアザはイジメのせいなんですね?
白石:さくらちゃんアザ出来てたの?
さくら:コクン
〇:それも人員不足を理由に把握してなかったんですか?
白石:はい...
〇:もういいです。本題にはいります
白石:はい
〇:さくらちゃんをウチで引き取らせてください
白石:いいんですか?
〇:こんな環境で暮らしてる子を見て見ぬふりをする人なんて大人じゃないです
〇:それに僕は独身ってこともあってお金に余裕もあるのでさくらちゃんを迎えられると思ってます
白石:あとはさくらちゃん次第ですね
〇:さくらちゃん一緒に帰りたいよね?
さくら:うん!さく〇〇さんの方がいい!
〇:だそうです
白石:わかりました。至急手続きをします
〇:ありがとうございます
白石:それと
〇:はい
白石:どうやってあのさくらちゃんをこんな笑顔満点にさせられるんですか?
〇:ちゃんと向き合ったから笑顔になったんじゃないですか?
〇:貴方たちには「人員不足」で出来ないでしょうけど
少し嫌味ったらしく言う〇〇
白石: …
そして手続きを終わらせ
〇:よし、これで今日からさくらちゃんはウチの子だ
さくら:やった!〇〇さんありがとっ
〇:あ、その〇〇さんってのよりパパにして欲しいな
さくら:パパ!
〇:フフ
〇:これから一緒だな
さくら:うん!
それからというもの...
ー小学生ー
さくら:パパーかけっこ1位になったー!
〇:みてたよ、おめでとう!
さくら:さく頑張ったからアイスクリームかってー
〇:しょうがないな〜
ー中学生ー
さくら:みて〜賞とった!
〇:ほぉ...なんの賞なの?
さくら:読書感想文!
〇:さくら読書好きだもんね
さくら:そうなの!すっごい嬉しい
〇:よかったな笑
さくら:お洋服買って欲しい!
〇:まだプレゼントやるって言ってないぞ?
さくら: “まだ”でしょー?
〇:こいつめ〜
ー高校生ー
さくら:お父さん志望校に受かったよ!
〇:本当か!?
〇:おめでとう
さくら:ありがと!今日天ぷらがいい!
〇:おう。わかった
いわゆる思春期的なものは少しあったが特に気になるほどでもなかった
そしてとある日...
さくら:お父さん
〇:なに?
さくら:なんでさくを引き取ってくれたの?
〇:まだ孤児院のこと覚えてたんだ
さくら:うん
〇:ん〜でもなんでかって言ったら......可愛かったからかな?
さくら:え、かお!?
〇:嘘だよ笑
〇:今まで何人かいた彼女といる時には思わなかった「守りたい」って気持ちが生まれたんだよ
さくら:守りたいって思わなかったら返してた?
〇:たぶんね
さくら:違う人に引き取られてたらこんなふうにはなってなかっただろうな〜
〇:俺いい親だった?
さくら:いい親に決まってんじゃん!
〇:そっか笑
〇:誕生日だしショッピングセンター行くか?
さくら:いいの?
〇:うん
さくら:やった!
さくら:それとさ...
〇:他にもオネダリ?
さくら:そうじゃなくて...
さくら: 「 育ててくれてありがと 」
〇:どういたしまして
さくらがいることによって告白してもフラれていたが婚約者がいること以上の幸せを味わえた気がする
それに俺もまだ40だ。これから相手を探そう
「 さくら、娘になってくれてありがとう 」
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