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米津玄師2023TOUR「空想」@横浜アリーナ【ほぼ還の徒然ライブ記】

TSUTAYAがまだCDレンタル屋だった頃の話。
店員さんの書いた「〜が好きならおススメ!」的なPOPを見て借りた「Bremen」。(〜には誰の名前が入っていたんだっけな・・・)
米津玄師、よねづげんし?初めて目にする名前だった。

1曲目「アンビリーバーズ」
あー声は嫌いじゃない。どちらかと言えば好きな声だ。
ふーん、意外と売れ線っぽい曲を書くんだな。

4曲目「Flower Wall」
サビの「目の前に色とりどりの花で出来た壁が今立ちふさがる」
ああ、ここのメロディ、かなり好きだ。
ラストの「それを僕らは運命と呼びながら、いつまでも手をつないでいた」
うわ、いいじゃん。

アルバム最後の「Blue Jasmine」
ライナーノーツには、ラブソングがないので急遽作ったと書いてあった(ように思う)。
「キスをして笑いあって悪戯みたいに生きていこう 全て失くしてもなくならないものを見つけたんだ」
うわ、うわ。

これが私と米津玄師との出会い。
それ以降は「Bremen」をヘビロテする日々が続いた。米津のアルバムの中では、今でもこれが一番だと思う。


米津玄師2022TOUR「変身」は悉く抽選に外れたので参戦が叶わなかったが、
今年の「空想」は運よく横浜アリーナのチケットを取ることが出来た。
前置きが長くなったが、今回はこのライブレポートをお届けしたい!

実は、米津のライブは今回が初めてではない。
仕事で台湾に住んでいた時があって、そのときに米津が台湾に来たのだ。脊椎オパールツアー、かな。
チケットサイトで高いお金を払った。
会場は台北市内の大学の体育館だったか、オールスタンディング。台湾人のファンで会場はいっぱいだった。
そして台湾人は歌うのだ。Let's sing along!どころではない。ほぼ全曲歌う。しかもしっかり日本語で。
「Lemon」を隣で大声で歌われた時には、怒りを超えて笑ってしまった。

7月2日、日曜日、横浜。
昨日までの雨が嘘のような晴天。
ツアーファイナルに相応しい。
だが暑すぎる。

グッズ販売の整理券を取り忘れた私は、14時からの一般販売開始の列に並んだ。
隣の中学生くらいの男の子、私に遅れを取るまいと早足で進むが、しきりと後ろを気にしている。はは〜ん、さてはお財布持ってる母親とはぐれたか。
しばらく進んだ先で再び合流すると、おお!母親じゃなくて彼女連れかよ!
中学生で米津玄師のライブでデートって、どういうことよ!?

ま、ま、良いんだけどな。

今回のツアーは入場するまで座席がわからないシステム。少しドキドキしながらチェックイン、お、アリーナB5列目!
段差があって視界が遮られない良い席だ。

光り物一切禁止のため、会場が暗転すると真っ暗になる。ライブでこの感じは逆に新鮮だ。

ステージが青いライトに照らされて、静か目のBGMが流れる。そこからアップテンポのイントロに変わり米津が登場、「カムパネルラ」でステージは開幕した。

あぁ米津の生歌だ。

アルバム「STRAY SHEEP」の1曲目に収められているこの曲は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフとしている。カムパネルラはその登場人物の名前だ。
ステージ後方の大スクリーンには、銀河鉄道の列車が星の煌めく夜空へ登っていく映像が流れる。

続いて「迷える羊」。
サビの「千年後の未来には 僕らは生きていない」というところは、米津の左目が見えたことでバズったCMで耳にしたことがあると思う。
カロ〇ーメイトだったか。
そしてこちらもバックスクリーンには、まるで映画のような歯車の映像が。
歯車なんて極めてアナログなのに、なぜか未来的なものを感じさせるそれは、ジブリの世界観か。
そういえばスタジオジブリから花が届いていたようだ。

3曲目は「感電」。
横浜から合流したという4人のホーンセクションが鳴り響くと会場からは歓喜の声が上がる。
生ホーンは格好良くて心地よい。
また映像の話で恐縮だが、バックにはまるでゲームのムービーのような、戦火の広がる中世と思しき街並みが流れる。
そう、スクエニのゲームのような。スクエニの出番はまだ先か。

「横浜、元気ですか?」
「今日がツアーファイナルだけど特別なことはしない、いつも通り楽しんでいこう」

あれ、特別じゃないんだ。

短めのMCに続いて「街」。
当時21歳の米津のファーストアルバム「diorama」の中の曲だ。
今改めて聴くと米津節で溢れている。どこをどう切り取っても米津玄師だ。

「優しい人」
サビが美しい曲。米津のファルセットヴォイスが光る。もともと下手ではなかったけれど、本当に歌が上手くなった。
「海の幽霊」辺りからファルセットじゃないと歌えない曲がふえてきた。悲しい。

「Decollete」
どこか懐かしいメロディ。歌謡曲っぽいかもしれない。バンドネオンの響きがそれをより感じさせる。

イントロから始まる「Lemon」。
客層は結構広く、私よりも年上と思しきお年寄りが結構多くて驚いた。
紅白でこの曲を聴いてファンになった人たちなんだろうと思う。もしそうでなければそれはそれで凄い。

「ウェイ」もしっかり再現されている。

そしてこの曲と言えば菅原小春のダンス。今回スペシャルゲストとして参加してくれた。
紅白のときは動きが凄すぎて批判もあったが、ステージから延びる花道に登場した彼女のダンスは本当に命を絞り出すかのようだ。
曲終わりに倒れこんで動かなかったのは、きっと振り付けではなかったのだろう。

ステージを照らしていた光が天井に集まって、ひとつのLemonになった。
やがてそのLemonは光を放ちはじめ、ひとつの星に変わる。
「M八七」
ウルトラマンシリーズと言えば「ワンダバ」だが、この曲にはその「ワンダバ感」がしっかりあって、私たち世代には響くものがある。
斯様にウルトラマン愛が溢れている曲なのに、シン・ウルトラマンでは最後にとってつけたような使われ方でがっかりした記憶がある。

ここでMCタイム。

「楽しい話を少し長く話してもよいか。」

米津がこんなにも饒舌だったとは。

何が楽しいって、今更PCゲームのMine Sweeperに嵌まっていると言う。

ハチの公式インスタより
これはもう運だ


1日12時間ぶっ通しでやったこともあるくらい嵌まっているそうだ。
最初は曲作りの合間に休憩程度に遊んでいたものが、徐々に曲作りの時間を侵食してゆく。
町中のタイル壁の格子模様を見ると爆弾の位置を探してしまうほどになった。

名古屋2日目のインスタより
これのことか


とにかく自分はいっつもこうだ。
いっつも通りの通り独りだ。
こんな日々最早こりごりだ。
あ〜そんな歌詞の歌あったっけなー!?

「Loser」!

何この見事な流れ。

この曲から会場の雰囲気が大きく変わったようだ。
米津自身やバンドによる煽りもなく、正直どのように乗ったらよいか、観客の中にも戸惑いがあったような感じがしていたが、この流れで会場は一気に盛り上がった。
この高速ラップ、当時無茶苦茶練習したおかげで、今でも歌える。

「Nighthawks」
「ひまわり」
と、ギターが格好いいストレートなロックナンバーが続く。
「Nighthawks」では、BUMPの天体観測のギターリフがアレンジされていたらしいのだが、全く気が付かなかった・・・。

「ゴーゴー幽霊船」
初期の米津玄師を代表する曲。ボカロPのハチが本名の米津玄師を使って発表した曲というのが正しいようだ。あんまり急に笑うので。

「KICK BACK」
ステージが照明で真っ赤に染まり、チェインソー・マンの世界観が一気に広がる。
努力!未来!a beautiful star!
マスク越しの大合唱。


再びのMC、ツアータイトルの「空想」の意味について、米津がとつとつと語る。
先程のMine Sweeperの話のときとは違う真面目な口調で、皆彼の話に聞き入っている。

子供の頃から空想することが好きで、その空想の世界に閉じこもりがちだったこと。人と接するのが苦手だったこと。
でもその空想の世界で絵やキャラクター、そして音楽が生まれて、そのおかげでこんな舞台に立てるまでになったこと。空想があったからこそ、こうして皆んなと関わりあえたこと。
そして、もし今日来ている人の中で昔の自分と同じような人がいたら。
周りと同じように盛り上がれないとしても、大丈夫だよ。
人生、そんなに悪いもんじゃない。


「空想」という名前の付いたゲームのテーマソング、という紹介があって、
「月を見ていた」が披露された。

バックスクリーンに大きな月が浮かぶ。
やがて月は海へと落ちてゆき、真っ赤な炎を放って燃え尽き、また月として還って行く。月を舞台にすることが多い、いかにもファイナルファンタジーらしい。

米津画伯によるトルガル@FF16

ゼルダの伝説ティアキンがまだまだ終わる気配がなく、FF16には手が付けられていない。

最初曲を聴いた時には正直ピンと来なかったが、ライブで聴くと、何が違うのだろう、凄く染みた。生声の力なのか。
ラスボス手前あたりで流れると痺れそうだ。

ここからは私のカラオケのレパートリーが続く。お得感が凄い。

「打上花火」
「月を見ていた」から続く、寄り返す波の映像とともに。

「灰色と青」
スペシャルゲスト菅田将暉の登場を期待したのは私だけではなかったはず。

「かいじゅうのマーチ」
かいじゅうと言えば今やVaundyだが、こちらのかいじゅうもとても可愛いらしい大好きな曲だ。
「人を疑えない馬鹿じゃない 信じられる心があるだけ」
なんて優しい。

「馬と鹿」
「これが愛じゃなければ、なんと呼ぶのか僕は知らなかった」
これ以上の、日本語がキレイにメロディに乗った曲はないと思う。あとはYOASOBIの「あの夢をなぞって」の「もうちょっと どうか変わらないで もうちょっと」くらいか。
米津がダンサー達と一緒に花道に進む。最後は絞り出すように歌い上げ、本編の幕が下りた。

やっぱりツアーファイナル、めっちゃ気合い入ってたように思う。
なんだ、特別じゃなくないじゃん。


アンコールを求める歓声の中、再び現れた米津は、未発表の「新曲」でステージを再開させた。
スクリーンには森から草原を望むような景色に鳥が飛ぶ映像が映し出された。
その映像をバックに優しいメロディが流れる。
いつか音源にするかもしれないけど、とのことだが、きっとジブリの新作のテーマソングに違いない、とファンたちは思っている。

ここでメンバー紹介。
裏方スタッフへの感謝も述べるところは、先のMCで語っていたような思いがあるからなのだろう。

ちょっとした寸劇を見せられた後、ホーンセクションやダンサーたち全員が舞台に集まり、さぁラストスパートだ。

「POP SONG」
もともとハチャメチャな曲だ。
ダンサーたちが阿波踊りを踊っても全く違和感はなく、むしろ世界観にハマる。
要所で鳴るホーンがカッコいい。

「Flamingo」
この曲の何気に凄いのは、サビ以外の歌詞が全部「い」の音で韻を踏んでいるところ。だから聴いていて心地よいのだ。

「春雷」
この曲人気あるよね。
疾走感あるAメロからドラマチックなサビへの展開は盛り上がらないはずがない。

「春雷」の後、一瞬間が空いて、会場が静まった。う、終わりか。

暗転したステージに、ピアノの音と共に、横断歩道のような白線が走る。
「LADY」だ。
真っ青な背景と真っ白な線のコントラストが米津の歌声と合わさって、会場全体が爽やかな雰囲気に包まれた。

ピアノのアウトロが終わり、米津が深々とお辞儀をする。本当に深く。

すると、バックスクリーンには最初の曲「カムパネルラ」で登場した銀河鉄道の列車が現れ、米津は踵を返し列車に乗り込んだ。
米津を乗せた列車は、煌めく星空に吸い込まれていった。

伏線回収もお見事、とても余韻が残る素敵なエンディングだった。

米津が消えた後、スクリーンにはエンドロールが映された。
数多くのスタッフの名前が流れて、END of ENDに
「GENERAL DIRECTOR 米津玄師」
の文字。


なんてプレミア感溢れるライブだったろう。ああ感嘆文の翻訳みたいになってしまった。
どんな言葉を紡いでも陳腐に感じられてしまうな。

「空想」から生まれる次はなんだろうか。またぜひ同じ空間を共有したいと強く思う。

ああ、ここまで長くなるとは思わなかった。書きたいことが多すぎて。

最後まで読んでいただいた方々、お付き合い頂き本当にありがとうございました。
次のライブ記でまたお会いできれば嬉しいです。

横アリからの帰り道 月を見る


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