深煎り入学式

体育館に入る前、新入生全員に真っ白のコーヒーカップを渡された。
持ったまま入学式が始まり、新入生達は困惑している。
カップの中身はブラックコーヒー。
白い湯気が立ち上っていて、熱そうだ。
新入生達が並ぶ前で、校長が挨拶を始めた。
「新入生の皆さん。入学おめでとう。今手に持っているコーヒーカップが気になっていますよね。そろそろ飲みやすい温度になっているので飲んで下さい」
新入生達はコーヒーを一口飲む。
眉間にシワを寄せ、苦い顔をしている。
「皆さんが飲んでいるのは、深煎りコーヒーです。今は苦いと思いますが、三年後の卒業式では感じ方が変わっているでしょう。今の苦味を覚えておいて下さい」
校長は胸ポケットからミルクとシュガーを出し、コーヒーカップに全て入れて混ぜる。
「もし変わらなくても大丈夫。苦ければ私のように甘くして飲めばいいのです。甘味が必要な時もありますからね」
新入生達と校長は、コーヒーを味わって飲んだ。


たらはかにさんの企画に参加させていただきました。
以下の記事に詳細あります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?