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シリーズものの難しさ
比較的厚い文庫本が2冊。
「解剖学」という概念がようやく生まれ始めた、その最前線の時代を舞台にしたイギリスの時代×ミステリー小説。
『開かせていただき光栄です』『アルモニカ・ディアボリカ』
どちらも変わった状態の遺体が、変わった状況で見つかり…という状況は同じで、あらすじを読めば、刺さる人には刺さる(とおもう)
1巻目が予想していたよりもずっと面白かったので、改めていそいそと2巻目を手に取る。
当然期待値は1巻目のそれよりもうんと高い。
結論からいうと、どちらも等しく大変面白かった。
ただ、1冊目の「えー、こりゃもう無理やろ…」という状況を覆す見事な大団円(と呼んで差し支えない解決)&不思議で不気味で幻想的な世界を期待してしまっていた自分には、2冊目は大分しんどさが勝った。
途中、あまりにショックでしばらく続きを読めなかったところが割と序盤にあったし、何とか勇気を出して読み進めても、いっそ1巻目までで終わらせておいて、自由に「その後」を思い描いていた方が良かったのでは…?
読まなかった方が良かったのでは…? と思い悩んだこともあった。
だって、1巻目の時と違って、あまりに誰も報われていない。
いや、因果は応報し、人の幸せは他人には計り知れないのかもしれない。
しかしそれにしたって、ぎりぎり首の皮一枚繋がっているくらいなもので、それまでのことを考えたら、全然足りない気がしてしまう。
もうちょっと…こう! と求めてしまう。
そのうえ、物語の中で苦しめられた様々な社会的制度的問題も、多くが解決できないまま山積みだ。読了後ずっとモヤモヤして、今も思い出してはモヤモヤする。
…ただ、しばらくモヤモヤしているうちに、このモヤモヤは、この時代、この国の気分にぴったりのものなのではないか、という気がしてきた。
しかもこれは現代においても、何なら日本においても通じるものがあるようにすらおもう。
そう考えると、最後のシーンのほんのわずかな希望や細やかな願いが実に尊く、美しいものに見えてくる。
当時のリアルな空気を今のリアルに繋げる…時代小説ならではの妙だろう。
ともすれば全てがファンタジーになりかねない外国の時代小説に、これほどの説得力を出せる筆力というのは、考えるだに恐ろしい。
2巻目まで読んでしまったことで、生じたモヤモヤは消えそうもない。
でも、2巻目まで読んだからこそ、より深く考え、味わうことができた。
このモヤモヤは、しばらく大事に抱えていたい。
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