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『極悪女王』雑感。※ネタバレあり

※この雑感はネタバレを含みますのでご注意ください。
 最初にネタバレにならない程度の前置きを書きますので
 その前にブラウザバックか閉じるなどの自衛をお願いします。

このドラマを見終えて、
どう雑感を書くかの方向性でちょい悩みました。
実在の人物達の話を元にしているので、
客観性が無いとかなり歪になりそうなのを感じ取ったから。

そのため今回ドラマを見たあと、こちらの著作で比較をしました。
あと各選手のWikipediaなども参照にしています。

監督は『凶悪』『孤狼の血』などで有名な白石和彌さん。
意識したつもりはないけど割とこの監督の映画は見ているので
その辺はあまり不安ではなかった。
脚本は鈴木おさむさん。まぁ有名な元放送作家ですね。

エピソードトークがどれもレジェンダリーレベル!
こんな人が企画し、脚本を書いていますので期待は高まりますね。

公式の相関図。助かる!

ではここからネタバレ全開で進みます。
未見の方は本当にお控えください。


ビューティ・ペアが「かけめぐる青春」を歌いながらドラマが始まる。

当時のわかりやすい映像があったので見てみましたが、
誇張抜きで盛大な人気があったことを伺えます。
後のダンプ松本こと松本香はビューティー・ペアの熱烈なファンでした。

熱烈に応援する香。

ダンプ松本『ザ・ヒール』にもハッピを着ていた
当時の写真が掲載されていました。

ただ、描かれなかったところとして、
実はその前はマッハ文朱のファンだったりしました。
ただここは省略しても良いところですね。

何と言ってもこれが一番の
変更点なのですが、
プロを目指す前から松本香さんは
ヒールを目指していました。

ちなみに長与千種さんも実際はヒールになりたかったらしい。
まぁドラマだとそりゃ省かれますね。

ドラマでは追い込まれて追い込まれて
ヒールになっていった描かれ方は全部脚色です。

ただ、父親を殺したいという思いや、
父親の愛人の子供に同じ「香」って名前を付けたのが実話なのが重い。

この修羅場の時、実際はもっと幼少期の出来事らしく、
妹の広美もいて香があやしていたそうです。

ドラマを軽く上回るリアル!

あと、パン屋で一時的に働いていた部分も、
実際は川口のベーカリー屋に住み込みの就職が決まっていたけど、
この時点で女子プロレスラーになりたい気持ちが強すぎて
ジャッキー佐藤さんを会場で応援するついでに松永会長が立っている売店で
出逢えばちゃんと挨拶をしていて顔をデビュー前に
既に覚えてもらっていたとの事。行動力の化身ですな…。

まだまだ途中だけど軽く結論を言いますが
第一話だけ総じて話のクオリティが
あまり高くない。

ただ、鈴木おさむさんを責めている訳ではありません。
ダンプ松本さんの半生があまりにも苛烈すぎて、

リアルとフィクションのバランスの取り方が
あまりにも難しすぎるのが要因なのだから。

先程書いた父親の愛人が産んだもう一人の香は、
それ以降一回も出会っていない。
ドラマではあくまで個人的な感想だけど
ベタな味付けにしたなーって感じでもある。

突き飛ばしたら壁が壊れて落っこちたところ。

実際は泥酔した父親が母親を殴ろうとしたが
泥酔のためにガラス窓を割ってしまい畳が血だらけとなり
香が「このまま放っておけば死んじゃうから救急車を呼ばなくてもいいよ」
と、母親に泣いて縋ったとの事。
ただ近所の人達が騒ぎに気が付いて救急車を呼んだために
父親は結果的に助かったが、あの時死んでいればよかったのにと、
しばらく思っていたそうな。

重いわ!

正直改変したくなる気持ちが凄くわかる。
ただドラマ見ただけじゃ何かここだけ妙にコメディっぽいなと
あの場面だけ思ったけど実際は上記の通りである。

だが、そういう改変を重ねた結果、それらが歪となって
なんか違和感を感じる人は感じてしまうのである。

あと、これも正直どうでもいいかもしれないけれども、

実際松本薫が練習生となって
一番最初に仲良くなったのは
長与千種じゃなくて
ライオネス飛鳥の方が先だった事。
  

これもまぁ改変しても良いかもって感じではあるけどね。


阿部四郎との出会いはストーリー上の都合だけど、実際免許を持っていたので営業部に回された。

白石和彌監督作品の常連。音尾琢真さん登場である。
個人的には目と目の間が離れていても、アナタの心は離さないって
ワードが出せるぐらいには『水曜どうでしょう』ファンです。

阿部四郎さんは後に極悪同盟側に加担して、
凶器を見逃したりフォールの早さを調整したりする
実業家であり悪徳レフェリー。

しかし実際の素の部分ではダンプ松本自身も
「優しくて人柄は最高だった」とべた褒めするぐらいの
人格者だったとのこと。それがこのドラマでも良く描かれている。

少し脱線しましたが、この宣伝カーはドラマではイヤイヤでしたが
実際は営業部の社員になれるとのことでチャンスと思ってたらしい。
なぜなら社員に自分の顔を覚えてもらえれるから。
しかも女子プロデビューしても初任給5万の時代に
営業だと7万貰えるのも良かったとのこと。

財布が盗まれたという冤罪事件も実際にあった出来事との事。

遠征先の旅館で起きた事件だったけど、
長与千種が犯人にされた理由が食事中の時に旅館に集められて
この事件を切り出された時、たまたま千種が下を向いて
無邪気に茶碗蒸しを食べてただけどいう
あまりにも酷い理由だったとのこと。
その後私物を調べ上げられたのではないかという文章が書かれている。
ただ、このシーンちょっと唐突なのである。
起こりがなくいきなり長与千種が追求されていたから
余計にそう感じるのかもしれない。
いくらこの後に千種の両親のやり取りがあるとは言え、
少し強引に繋げすぎかなと思った。

ディスコは実際に長与千種と行ったとの事。

ただ行った理由が
「あまりにもヒマだから」と「1000円で飲み放題食い放題」という
理由であり、ビールは頼んでいなくて
ひたすらジュースを飲んで食べていたとのこと。

この後ぐらいに松本薫はデビル雅美率いるデビル軍団へ
長与千種もライオネス飛鳥とクラッシュギャルズを結成

クラッシュギャルズが大ブレーク!

この辺はドラマも半自伝もほぼ同じな感じ。
デビル軍団であまり結果が出せない香と
クラッシュギャルズで大化けする長与千種とライオネス飛鳥。

「炎の聖書~バイブル~」

ネトフリのイベントでみんな一緒に歌ってました。


そして1984年1月にダンプ松本に改名する。

いままで何処か垢抜けない、ゆりやん感が残っていた香が大変貌を遂げる。

丁寧にダンプ松本になっていくエグい精神攻撃的な
導線が描かれていたが上記でも書いた通り、

もともとヒール志望だったので
あれらはドラマ用の脚色です。

ただ、金髪は会社に内緒でいきなりやりだした。
怒られるかなと思ってたらしいが
松永会長が「あっ、やっちまったか!」
程度の感想でお咎めはなしだったとの事。

そして金髪に染めた日本人女性レスラーは
ダンプ松本さんが初との事。

本読んでいてこっちの方が驚いた。

ただ会社側から互いに身に覚えのない悪口を焚きつけられ、
一時期は長与千種、ライオネス飛鳥とは
険悪な雰囲気になっていたのは事実。

後になって仕組まれてたことが判明して誤解が解けたとのこと。

長与千種さん自身がギスギスさせられてたことなどを言ってます。

阿部四郎に言わせているけど、実際は観客が言った感想と印象が、
『ダンプ松本』の命名に繋がった。

これあまりにも有名すぎる話ですが、
松永会長はこのエピソードを引き合いに出して
「スターはお客さんが作ってくれるんですよ」と語ったことがある。

個人的にはこの話を活かすようなドラマ内容を事前に予想してただけに
エピソードが少し弱くなってしまったなって感じも何処かでした。

ちなみに当初は出身地からダンプ熊谷と命名されたけど
さすがこれだと建設会社みたいとの事で
ダンプ松本になったとのこと。


『ダンプ』で有名になった結果、家族に迷惑や変貌が表れ始める。

が、ダンプ松本『ザ・ヒール』でも
妹が不良になったという文章が何処にもない。
本ではあそこまでエグい内容が掲載されているのに
その記述がないことと、
いままでの鈴木おさむさんの脚本の書き方を見るに
おそらくこれも脚色だと確証はないけど多分そう思った
ちなみに妹さん。ダンプさんが引退して芸能界入りした後、
マネージメントの手伝いをしてたとのこと。

ただ、それとは別に4話から
ゆりやんレトリィバァの眉毛もちゃんと整え始め、
平時でもダンプ松本にちゃんと寄せている
これを予告編でも伏せていたのは良き!
って個人的に思った。余計にダンプ感が強まったから。

ダンプになった代償として金銭面で豊かになりつつも
家や車などに落書き、中傷、脅迫などはかなり増えている。
実際の被害例や被害額などが
ダンプ松本『ザ・ヒール』に書かれているので
興味のある方はぜひ本を買っていただきたい。


この『夕やけニャンニャン』感
初期の頃は出ていたとの事。やられてるのはおそらく鶴ちゃん。

ググっていたらファンブログが見つかりました。なるほどね!

4話あたりは割と事実通りというかブル中野が加入したり、
クラッシュギャルズなどのベビーフェイスとの抗争が激化したり
クレーン・ユウがレフェリーに転向したりなどしている。

ブル中野の髪の毛を強引に切ったのは本当。

今となっては優しい性格で知られているが、
悪役として、極悪同盟としての仕事が関わると
どうしても非情になってしまう。

クレーン・ユウがレフェリーに転向したのも
人の良さを隠しきれなかったからダンプ自身が切ったとの事。

「実は良い人」が致命傷だった時代背景もそこにはあり、
それがバレると極悪同盟そのものが共倒れになってしまうのを
ダンプ自信が危惧した結果であった。


これも実際生きた鶏を入手できなかったらしくて失敗したらしい。

再現度高すぎてクッソワロタ。

稼いだお金で母親に建てた家。

実際は引退直後に建てたとの事。
自分よりも有識者の方々が指摘していますけど、
そこそこ時系列が入れ替わっていたりしているみたいです。

髪切りデスマッチ時。もうなんというか憑依レベルでダンプさんに似ている。

実際に長与千種さんが坊主になった姿がこちら。
もうここは実際にドラマで見てもらって楽しんで欲しい。
再現度も含めて物凄いので。


突然の引退発表。

ドラマ同様若い頃の先輩たちのいじめ、成功したら嫉妬の嵐。
クラッシュギャルズや極悪同盟で潤った松永一族の乱費。
精神的に相当疲弊していて嫌気が相当差していた。
全日本女子プロレスという会社が相当嫌いになった結果、
会社を困らせるべく引退は突然決めたとのこと。

プロレスは嫌じゃなかったけど相当ストレスが溜まっていたみたい。

ただ、ドラマはこの辺の描き方がなんか甘い。
でも気持ちはわかる。ここはもうダンプやクラッシュギャルズを動かして
ストーリーよりも動きを見せるべき場面であるのも痛いほどわかったから。

引退試合。

ほぼドラマ通りで最初は普通(?)に戦い、
そして5分間だけダンプ&千種VS大森&飛鳥で戦った。
そんな感じでドラマは引退試合を以て終わる。

ただ実際は3日後に、地元熊谷でラストマッチをしている。
対戦相手を選んでも良いとの事で、
ブル中野とコンドル斉藤VSダンプ松本という変則マッチだったとの事。


と、言う感じで『極悪女王』の雑感を書きました。
正直なことを言うと、脚色された部分を
どう感じるかによって少し感想がブレてしまうかも。

ちなみに自伝の方はその後の芸能生活、プロレス復帰、父親の死、
そして現状などが書かれています。

父親の病気関連だけど…。

なんとこの父親ですが「40才までしか生きられない」とか言いながら
2019年に87歳でお亡くなりになったとのこと。憎まれっ子なんとやら。
ロクに働かないわ、家にお金を入れないわ、
他所で女を作って同じ「香」という名前を与えるぐらいの呆れた父親。

ただ死の間際でそんな父親を許せた
ダンプ松本さんの懐の深さは本当に凄いです。

本当に最後ですが、
ダンプ松本『ザ・ヒール』で、
なぜ母親がこのろくでもない父親と
生涯別れなかったのかを
しっかりと書かれています。

意外性もありつつ、物凄く腑に落ちました。
ここでは書きません。是非本を買って読んでみてください。


ここからは余談です。俳優陣が全員凄かった!

剛力彩芽さんと唐田えりかさんがちゃんと
ゆりやんレトリィバァさんに負けず劣らずの
気骨ある演技でした!


脚色部分が気になると偉そうな事を上記で語りましたが

プロレス部分、しっかり面白かった!

そして個人的に影のMVPは
志生野温夫さん役をされていた清野茂樹さんかなって思いました。
声のトーンが似ていて、しかもちゃんと志生野温夫さんを
意識して演じられていたとのこと。

この実況のお陰で物凄く『全女』感が随所に溢れていた試合内容でした。

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