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キミがずっと泣いてるから

なんてことない日だった。
「どうしてこうなったんだろうか」と思った時、ふと声に出てしまっただけで。




「わかんないな」

一人だけの空間で、割としっかりめの独り言を発するなんて相当末期だと思う。



引っ越してきた時、輝いて見えた大通りはその時も変わらずで、夜ベランダから眺めた道路はキラキラと車のライトと信号で光を放っていた。

些細なことの積み重ねだろう。思ってることを伝えられなかった。それで事が済むなら我慢すればいいと思っていた。結局そういうのも、その瞬間こそ円滑に進むが後々効いてくるんだ。あの時の我慢は前借り的なものだったんだろう。
イライラされると怖くなる。何となく雰囲気でわかる。怒ってないよなんて言ってたって、雰囲気でわかる。それが“怒っている”という状態じゃなくても、ピリついていることには変わりないし、それすらも私の中では“怒っている”に該当する。
幼い頃、顔色を伺い親の不機嫌を察知して回避していたあの中途半端な成功体験が大人になって足を引っ張るなんて。
原因が自分にあろうが無かろうが、ピリつかれると怖い。いつそれが自分に向けられるか、何かを言わなくてはと思うのに怖くなって言葉が出なくなる。ピリつく雰囲気と無言に耐えるくらいならいっそ殴られた方が楽だなと思ったりもする。


いろんな要因で、うまく話せない関係になってしまった。
前借りも、我慢も、不信感も。
話し合いができない、信頼が失われた関係は、いずれ終わりを迎えるんだろうなと学びを得た。隠し事も良くないし、これは信頼が失われる前の序章みたいなものだろう。





最近「それをさっきから言ってるの!」と言われることが、度々発生している。
私自身繰り返しているつもりがないので、非常にたちが悪い。ゼロから考えて、私はこう思った/こう考えたを話しているので、至極真面目に喋っている。
これが、「さっきからそれを言ってるの!」に繋がってしまう。そんでもってゼロから喋って故に説明が長い。同じこと繰り返し、説明を噛み砕きまくって長々喋る。私は人を苛つかせる天才だと思う。

もしかしたら、私のこういうところが嫌で、イライラさせてしまったのかもしれないと。過去のことというのは無限に仮説が立てられる。あくまで仮説。真実はわからない。




今でも覚えてる。
キラキラと光が反射する大通りを眺めつつ、「どうしてこうなったんだろうか」とポツリ溢したときのことを。 

『                                                               』

振り返って目があったとき、
心の距離は他人同士のそれで。

愛や思いやりみたいな温かい感情はどこにも無かった。


「この生活は楽しくなかった?」と最後の質問。
多分。思い返すとまともに喋った記憶がない。だから、この会話がフラットなコミニュケーションの最後だったんだろうな。


「こっちに来てから、キミはずっと泣いてる」
その言葉が衝撃的で、息が詰まるような感覚になった。


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