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T-OWNプロローグ

小さな小さな、名のない街の物語。

誰からも知られることのない街。
一人の少年が夢を抱いた。
街のみんなが幸せな時間を過ごせる事を。
みんながずっと笑顔でいられることを。

少年は、街で一番のお金持ちであるお爺さんに尋ねた。
「どうしたらみんなが幸せな時間を過ごすことができると思う?」
お金持ちのお爺さんは答えた。
「皆が幸せになる必要がどこにある?」
「わしは自分が幸せでいることが第一じゃ。
もし、お前さんが幸せになりたいなら、わしが一緒に金を稼ぐ方法を教えてやろう。」

 少年は少し考えた。
「確かに自分がお金持ちになって、みんなに分けることができれば、街のみんなを幸せにすることができるのかな。」
「だけどきっと、ぼくがやりたいことは、お金を配ることじゃないんだ、、、」
少年はお爺さんに伝えた。
「ありがとうお爺さん。でもぼくは、お金持ちにならなくたって、みんなが幸せになる時間、、少しでも幸せになれる時間を作りたいんだ。」
するとお爺さんは答えた。
「そうか、お前さんは馬鹿じゃ。わしの教えを聞いていれば良い夢を見れたものを。」
少年は答えた。
「なんだかお爺さんは、とても寂しそうに見えるね。」
少年は、お爺さんの元を後にした。


 次に少年は、街で一番仲睦まじい二人連れに尋ねた。
「どうしたら、みんなが幸せになれる為のアイデアが思いつくかな?」と。
二人連れは答えた。
「それはね、恋をすることよ。そうするときっと誰かを思いやる気持ちが分かるわ。」
「そうだね、恋をして、誰かを心から愛するんだ。」
少年は答えた。
「恋をすれば良いアイデアが浮かぶかな? ぼくがパパやママのことを好きな気持ちとは違うの?」
二人連れは答えた。
「ええきっと違うわ。あなたのパパやママはね、きっとあなたが何をしようと許して愛してくれる筈よ。でもね、恋は違うの。あなたが誠意を持って相手に接して心から愛すことができないと、相手もあなたに応えてはくれないわ。あなたの言葉や行動が鏡になるんじゃないかな。決して相手を思いやる事を忘れてはだめよ。わたしたちみたいにね。」と、二人は微笑みあった。
少年は答えた。
「ありがとう。恋をして、誰かを愛することって難しいことなんだね。ぼくもいつか誰かに恋をしたら優しくなることができるかな。」
少年は続けた。
「それじゃあ、ぼくは行くね。二人の幸せが続きますように。」
二人連れは「ありがとう」と笑顔で手を振ってくれた。
恋や愛は少年には少し難しく感じた。


次に少年は、街で一番の親友に尋ねた。
「どうすればみんなが幸せな時間を作ることができるかな?」と。
親友は答えた。
「僕は、君といる時間がとっても幸せだよ。」
少年は答えになってないなぁと思いながらも続けた。
「それって、恋?」
親友は答えた。
「ううん、恋じゃないよ。でもね、君と一緒にいるととても心安らかな時間が過ごせるんだ、幸せなんだ。 でも不思議だね、幸せな時間はあっという間に過ぎちゃう。」
少年は答えた。
「恋じゃないんだね。ぼくも君と遊んだり、一緒にお昼寝をしたり、お話をすると幸せな時間になるよ。でも、喧嘩したり、話さない時間だって僕たちにはあるね。」
親友は答えた。
「喧嘩したって話さなくたってかまうものか。僕にとっては、きみとの時間全てが幸せだと感じるんだ。」
少年は、さっき話した二人連れの話がもっと簡単な事に思えてきた。
少年は考えた。
「自分が心を許している存在、友達と一緒に過ごすことは幸せなことなのかもしれない。たとえ喧嘩しても、言葉を交わさなくてもそれも含めて大切な時間なのかもしれない。」
少年は親友に伝えた。
「ありがとう。なんだか、心が晴れた気がするよ。 ぼくはもう行くけど、またすぐに会おう。」
親友は答えた。
「あぁ、すぐにね。君と会えない時間はとても永く感じるんだ。気をつけて。またここで、待ってるよ。」


少年は、"小さな"幸せの答えを心に持ちながら、最後にママに尋ねた。
「ママ、どうしたらみんなが幸せな時間を作れるとおもう?」
ママは答えた。
「ママはね、残念だけど街中のみんなの幸せを願う余裕がないわ。なぜなら、あなたと言う絶対に守るべき存在がいるからよ。だからママは、あなたの幸せを誰よりも誰よりも願ってるわ。だからママの幸せはあなたが幸せでいてくれることよ。」
少年は答えた。
「それって、恋や友情と一緒?」
ママは答えた。
「いいえ、あなたは恋人でも親友でもないでしょ。あなたは家族よ。私の大切な家族。ママがパパと出会って友達になって、恋をして、家族になった。そして、あなたというもう一人の家族が増えた。一生切れない縁よ。」
少年は答えた。
「ぼくには大切な人が沢山いるよ?それは悪いこと?」
ママは答えた。
「いいえ、それはとっても素敵なことよ。あなたには友達がいて、これから恋人もできて、家族ができるかもしれない。でも出会いだけじゃないわ、別れもきっとある。悲しいことも嬉しいことも沢山あるけれど、そのどれもが、誰かと関わることで生まれる貴重な時間よ。」
少年は答えた。
「そっか、大切な人と"一緒に過ごすこと"が幸せな時間になるんだね。」
ママは答えた。
「ええ、だからあなたはこれからたくさんの人と出会って、たくさんの幸せをみつけるのよ。そして大切な人たちに幸せを与えることができる人になりなさい。」

「そうだ、あなたの好きな歌を歌ってあげるわ。ちょっぴり恥ずかしい気持ちもね、歌にすると伝えやすいのよ? 」
少年は答えた。
「ぼくママの歌、大好きだ。」「僕の今の一番の幸せはね、ママの、、大好きな人の歌を聴くことだよ。」
少年は幸せの答えを、見つけた気がした。
ぼくも歌で人を幸せにすることができるだろうかと胸に秘めて。

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