データリテラシー向上を

題目について少し整理した形で説明しようと思います。目次は下記のとおり(今後修正の可能性あり)。毎回記事が以下のどれに当たるかを考えてみます。今回は(a)の概要を説明します。日々私たちが目にする「データ」「情報」とは何か、どのように判断しているかを意識したいと思います。

(a) データリテラシー向上を
デーの成り立ち、解釈、伝聞に注意/発信者の発言目的も意識しよう/わからないことは、わからないということが正しい/人は安心したい、騙されたとは思いたくない/人は自分が正しいと思う(思いたい)情報を探す
(b) 数学・確率・統計がどのように使われているか
全数調査できないから一部を調査/幅のある推定を知ろう/「有効性あり」と科学的に主張するには仮説検定/因果関係と相関関係は別物/直接の因果関係が不明でも統計ならできることがある/人は無意識に数学を使っている
(c) 多くの反論に耐えることが科学だ
反論こそが科学の発展を促した/嘘・捏造・作為的データも存在する/同じ方向を向く結果は信頼できる


デーの成り立ち、解釈、伝聞に注意:データは何処からどのように作られたものなのか。データは誰がどのように処理し、解釈したものなのか。それが私たちの所にどのように伝わって来たのか。これがデータを考える最初の基本です。

例えば昨日紹介した「米ファイザー、コロナワクチン12─15歳の強い長期免疫効果確認」という記事。情報源はロイター、アメリカの記事からの翻訳です。つまりアメリカのロイター記者がファイザーの発表を元に書いたものと理解できます。しかし英語の記事にも詳しい情報、情報ソースの記載がありません。検索すると、やっとファイザーのプレスリリースを見つけることができます。

Follow-Up Data From Phase 3 Trial of Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine Support Safety and High Efficacy in Adolescents 12 Through 15 Years of Age
Monday, November 22, 2021 - 06:45am
Pfizer-BioNTech vaccine demonstrated 100% efficacy against COVID-19 in longer-term analysis, with no serious safety concerns identified
Data will support planned submissions for full regulatory approval of the vaccine in this age group in the U.S. and worldwide

こうして100%という数値はファイザー自信がプレスリリースとして発表していること、ロイターの記事はファイザーの発表のごくごく一部であることがわかります。

続いては、ファイザーのデータ分析に目を向けたくなります。しかし今回は深入りせず、さらに詳しい情報があることだけを確認しておくことにします。注目は、ファイザーと独ビオンテックという企業がデータを集め、分析した、という点です。


発信者の発言目的も意識しよう:上記情報は、ファイザーが中心に集めたデータでした。これをファイザーが発表している訳です。自分で発表するからには、自分達に有益な情報を発信するだろう。これはファイザーだからでなく、どんな企業でも、個人でもほとんど同じだと思います。

誰が発信しているのか、その目的にも少し意識を向けることで、鵜呑みにして騙される、ということを少しだけ回避できると思います。


わからないことは、わからないということが正しい:これはまとめられた情報を発信する側が、何処まで断言しているかを意識しましょう、という意味です。今回のファイザーのプレスリリースは、淡々と結果が述べられているようですが、しっかり読む場合は、現在の不明点をどのように書いているかを意識すると良いと思います。


人は安心したい、騙されたとは思いたくない」「人は自分が正しいと思う(思いたい)情報を探す」は、受け手側の意識に注目しています。騙されたくない、は当然ですが、それ以上に騙されたと思いたくないのが人間です。ですから、私たちは何かを信じている場合に、それが覆されるのを反射的に拒否してしまう場合があります。

例えば「コロナは風邪だ」を信じたら、それを補強する情報ばかりを集めてしまい、その他の情報は嘘だ、自分達だけが正しいことを知っている、と考える心理です。今は情報がとても多いので、少なからず自分が欲する情報を集めることができます。これにより、さらに深みへ。これがエコーチェンバーと呼ばれるものですね。(最近、感染しても死亡に至る人数が減ってきたので、さらにコロナは風邪、が補強されている可能性があります。)

もう1つの例です。ワクチン接種です。ワクチン接種をした人は、当然、感染したくない、人にうつしたくない、重症化したくないなどの理由で接種します。「ワクチンが切り札」を信じ、接種によって安心を得ようとした人も多いでしょう。
その後効果が持続しないとわかってくると、どうなるか。「ワクチンが切り札」を信じた自分が悪かった、とは思わない、思いたくない。だから、そうか、もう1度打てば安心なんだ、と多くの人は考えると思います。

それぞれの人が、自分の信じたい情報だけを集めるようになったらどうなるか。当然分断が起きます。私はこれを危惧しています。


これを回避するために何ができるか。少しでも、このエコーチェンバーが起きるのだということを意識することだと思います。

心理学を少しかじった時、自分が話していることを別の自分が後ろで聞いているように意識すると良い、それによって冷静になれると教えてもらいました。自分でも実践して納得しています。

無意識の感覚が自分の判断に影響を与えることがある。自分の判断を客観的に総括するには知っておきたいことだと思っています。