反・反ワクチン派の印象操作

わからないことだらけ。なのに何故、ここまで決めつけられるのでしょうか。自信過剰な"データサイエンティスト"の記事を読んでみました。

記事はこちら。とにかくタイトルを読んで、これではワクチンを恐れることが悪いことのように感じてしまうと思いました。以前書いたとおり、わからないこと、未知のことを恐れるのは、生きていく上でごく自然なこと。必要なことだ、というのが私の主張です。

画像1

この記事の元になったという情報を探しました。リンクはこちらです。

画像2

という感じで、データを細かく見ることができます。(記事には画像としてリンクがあるだけなので、手打ちで探しました。)

いろいろ言いたいことはありますが、まず、記事が11月4日付であるのに記事内の画像のデータが、9月11日であることに驚きました。(下記が記事内のグラフ)

画像3

ここだけでも、全く印象が違いますね。ここで、何か意図があって情報の一部だけ提示したのではないか、と考えてしまいます。

続いて記載されているデータに関して。全く検証ができない情報しか記事内には記載がありません。

 デルタ株のまん延が始まる前の5月15日時点で、アイダホ州では約58万人が2回目のワクチン接種を完了していた。これは州の人口の約3分の1にあたる。5月15日以降のCOVID-19感染の状況を見てみると、新規感染者ではワクチン接種非完了者がワクチン接種完了者の10倍、入院症例は13倍、死亡者は8倍の多さであった6) 。今、アイダホで起こっているコロナパンデミックは、「まだワクチンを接種していない人々の間でのパンデミック」とも言える。

データとして扱えるかも知れない情報はこれだけです。ワクチン未接種者は接種者の2倍いるわけですから、ここで単に10倍など言っても意味がありません。少なくとも接種人口比で比べなければいけません(イスラエルの例参照)。この補正によって倍率は小さくなります。それでも確かに違いがあるとなる可能性はありますが、決して10倍、13倍ではありません。ワクチンの効果もずっと続くわけでもありません。そしてこれは後ろ向きの評価です。この記事を書いた人は、恐らく静的な統計しかわかっていないのではないか、後ろ向きの評価のことを理解しているのだろうか、と思ってしまいました。

実はこの前に、次の文章がありました。

(2)患者のほぼ99%がワクチン未完了者
 アイダホ州のリトル知事は、アイダホ州のCOVID-19患者と接種状況に関して、2021年1月1日以降の新規感染者の98.9%、入院症例の98.6%、そして死亡者の98.7%がワクチン接種非完了者(ワクチン接種を行っていない人及び2回目の接種を終えていない人)であったことを発表した6)。

これは印象操作そのものだと思います。今年1月1日の時点でワクチン接種者はほぼゼロだったはずです。最初のころの感染者は全員ワクチン未接種者になります。比率が多くなるのが当たり前です。


まとめると、残念ながら
・原因をワクチン未接種者の多さと決めつけ、他の可能性は議論していない
・検証可能なデータの記載がない(勝手に切り取っている可能性が高い)
・「今はまだわからない」という考えさえないように見える
となりました。


以前書いた、情報が信頼できるかどうか、の私の基準
・因果関係と相関関係の違いを理解し、意識して発言しているかどうか
・事象の包含関係を理解して正確に発言しているかどうか
・「今はわからない」と言えているかどうか
・出展を提示しているかどうか
を全く満たしていないと思いました。

真面目に、反ワクチンの問題点が何処にあるのかを理解したいと思って記事を読み始めましたが、この反・反ワクチン記事こそが問題だ、という結論に至りました。

日経メディカルの記事です。残念でなりません。