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たかが通関、されど通関。ー通関の仕事の大切さ

 はじめまして。通関士Tです。国際物流企業で輸入貨物の通関や配送のアレンジの仕事をしています。今日は、通関の仕事の大切さについて考えます。

通関とは

 通関とは、モノを日本から海外へ輸出したり、海外から日本へモノを輸入するときに、税関長から「輸出の許可」または「輸入の許可」を受けることです。20万円以下の郵便物を除いて、輸出入されるあらゆるモノは輸出の許可または輸入の許可を得ています。工場で使われる大型の機械も、スーパーマーケットに並んでいる輸入食品も、すべて税関を通って、輸入許可を得ているものです。もし輸入許可を得ていないものがあれば、それは密輸されたものです。

 貨物は勝手に税関の審査や検査を受けてくれるわけではなく、必ず誰かが申告(輸出申告または輸入申告)をしています。輸入者自らが申告をすることもありますが、税関手続きや納税額の計算は専門知識を要するため、ほとんどの場合は通関業者が輸入者に代わって申告をしています。通関業者が輸出入者からの依頼を受けて輸出入申告をするには、税関長から通関業の許可を得る必要があります。


通関は単なる通過点

 すべての貨物は輸入の許可を得なければ日本へ輸入することができませんが、ほとんどの人は通関のことを意識していません。また、貨物を輸入する人や会社にとっても、通関手続きというが具体的に何をしているのか、どういう意味を持つのかを意識されていないことが多いです。それは、通関が物流の一部の要素に過ぎないからです。

  中国から日本へ輸入される物の流れを書き出してみます。

輸入者(日本)が輸出者(中国)に商品の発注をする(その前に取引先を見つけて契約することが必要ですが、省略します)

輸出者が商品を生産、または仕入れする

輸出者が商品を出荷して、輸送業者に引き渡す。

輸送業者が貨物を中国側の空港または港へ搬入する。

貨物に対して輸出申告が行われる。

税関の審査や検査を終えて、輸出が許可される。

貨物が航空会社または船会社へ引き渡され、航空機(船舶)に搭載される。

貨物を載せた航空機(船舶)が日本の空港(港)に到着する。

航空機(船舶)から貨物が降ろされ、コンテナヤード、ターミナル、上屋などに搬入される。

貨物に対して輸入申告がされる。

税関の審査や検査を経て、輸入許可がおりる。

貨物を配送業者に引き渡す。

貨物が輸入者、または荷受人へ配達される。

 とても簡略化してもこれだけの工程があります。貨物を受け取った輸入者は、その製品を卸売したり、Webや店頭で小売りしたり、製造の原料に使ったりします。その後、顧客から代金を受け取ってようやく一件の取引が完了します。通関は物流、流通の川上から川下の流れの中での、単なる通過点でしかありません。


通過点で引っ掛かる恐ろしさ

 税関は単なる通過点です。ほとんどの貨物は何事もなかったかのように税関という関所を通過していきます。通過するのが当たり前だから、特に意識させることがありません。ところが、いざ関所で止められてしまったときには色んな問題が発生しかねません。

・税関にHSコードの変更を指示され、予定より高い関税を払うことになる。
・税関から商品説明資料等を要求されて、その入手に日数を要する。
・通関が数日止まることになり、予定外の保管料やデマレージ(超過料金)が発生する。
・市場への流通が遅れて、商機を逃す。
・入荷日の遅れにより、顧客や関係各所とのスケジュール調整の手間が掛かる

 このような問題が発生して頭を抱えてしまった貿易担当者、調達担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。税関は「関税や消費税の徴収」と「社会悪物品の阻止」という2大目的を持つ国家機関ですので、止められてしまうことがあることはやむを得ません。税関への申告内容に対して税関が疑問を持った場合、不備があると税関が判断した場合は止められてしまいます。

通関業者の役割

 ただ、通関のプロフェッショナルである通関業者の工夫により、貨物が税関に止められる可能性をより少なくすることは可能です。適正な申告をして、迅速に輸入許可(輸出許可)を得ることが通関業者の担うべき役割です。
 輸入者(輸出者)の扱っている貨物(商品)の内容をよく理解している通関業者であれば、税関に申告する前に、税関から許可を得るために必要な情報がわかります。仮に書類の不備があっても、申告する前に輸入者(輸出者)へそのことを伝えて、できるだけ迅速に通関できるようにします。
 どのような貨物にいくら(何%の)関税が掛かるかも判断できますので、事前に見込みの関税額を計算することもできます。
 貨物が到着後、いつから保管料が掛かるかも把握できすので、逆算していつまでに輸入許可を得なければならないかもわかります。

 通関業者はこれらのことを総合的に判断して、時には色んな工夫を重ねて、貨物が日本へ到着したら(できるだけ)滞りなく通関をしています。


まとめ

 通関は貿易取引における単なる通過点に過ぎませんが、滞りなく税関を通過するためには通関業者の役割が非常に大きいです。事前の準備と計画により、輸入者の希望スケジュールに沿った通関手配を行っています。
 ただし、通関業者ならばどのような手配もスムーズにできて当たり前、というわけではなく、様々な工夫や苦労を重ねて手配をしています。また、荷主(輸入者、輸出者)さんの協力も、スムーズに通関手続きを行うためには必要です。次回以降、通関業者の行っている普段の業務内容、工夫していること、荷主さんの協力の必要性などについて書いていきます。

 ここまでお読みいただきありがとうございました。通関のことでお知りになりたいことがあれば、お気軽にコメントやメッセージをくださいませ。



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