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1.ふじみ野市は昨年、「公共施設等総合管理計画」を改定
 公共施設の集約・削減が進んでいます。高齢化の進展で自治体の財政負担は増していて、維持管理コストの圧縮は不可欠になっています。
 ふじみ野市では、平成29年3月に公共施設等の管理に関する基本的な考え方を示す「ふじみ野市公共施設等総合管理計画」策定しています。昨年3月には、総務省の「公共施設等総合管理計画の策定にあたっての指針」の改定等を受け、令和3年3月に策定しましたふじみ野市公共建築物個別施設計画及び各インフラ資産の長寿命化計画等の内容を踏まえ、一部改訂を行っています。
 長寿命化とは、構造躯体の健全性を維持し、物理的な耐用年数近くまで建物を使用することを指します。では上記計画改訂の中身をみてみましょう。
(先に結論を、という方は、4.今後の公共施設(公共建築物とインフラ資産)の更新費用、をご覧ください)

2.公共建築物の更新費用を長寿命化工事などで見直し
 まず、公共施設の定義ですが、公共建築物の延床面積は、224,859.14 ㎡で、公共建築物の55%が小中学校、5.7%が庁舎となっています。これらの施設のうち築 30 年以上のものの延床面積は131,068.2 ㎡あり、全体の 58.3%を占め、老朽化に合わせて維持補修費などの費用が増加していくとされています。

市HPより

 インフラ資産には、道路、橋りょう、公園、上下水道の各管があります。

市HPより

 計画改定前では、今後 30 年間に必要な公共建築物を維持するための更新費用の総額は 860 億円とされていました。1 年当たりの更新費用としては、直近 5 年間(平成 28 年度から令和 2 年度まで)の平均更新費用の 1.31 倍である 28.7 億円が必要になると推計され、平均更新費用に対して 6.8 億円の増大が見込まれます。市の一般会計予算が500億円弱ですから、更新費用28.7億円は5%以上になります。
 
下の表ですが、公共建築物について、30年で大規模改修、60年で建替えとする場合の費用を計算したものです。

市HPより

下は、これまでの計画で今後の各年の更新費用です。赤色が建替え費用で令和11年から、毎年更新費用が30億円を超える予想です。

市HPより

 改訂計画では、以下のように変更を行いました。条件つきで建替えを長寿命化工事とする。小規模施設は事後保全とする。更新しない建築物については更新費用から除く(定義の変更)、などです。

市HPより

 長寿命化工事をした場合の費用は以下のとおりです。上記の建替えに比べて約2割少ない額になっています。

市HPより

 下は、長寿命化工事など「平準化」した場合の将来の更新費用の見込額です。上のグラフに比べて、費用が低く抑えられています。

市HPより

 3.インフラ資産も更新費用を見直し
 市は、現存のインフラ資産を維持するための更新費用の総額は 499.3 億円として、1 年当たりの更新費用としては、過去 4年間(平成 28 年度から令和 2 年度まで)の平均更新費用の 1.55 倍となる 16.6 億円が必要になると推計され、平均更新費用に対して 5.9 億円の増大となり、インフラ資産につ
いても更新費用が増加していくと見込んでいます。
 下は、インフラ資産の更新費用を計算したものです。

市HPより

以下は、今後の更新費用の見通しです。令和9年から10億円を超える年が続く見通しです。

市HPより

 改定計画では、以下のように変更しました。道路の費用を直近3年間の平均額を基礎とする、公園については、優先・非優先を分けて整備する、上水道は、耐震化と縮小に係る費用を算出する、下水道は、老朽化の進展状況を考慮し、優先順位を設定する、などです。

市HPより

 下のグラフは、平準化という見直しを経た今後の更新費用の見通しです。毎年の費用が10億円を切るように推定されています。

市HPより

4.今後の公共施設(公共建築物とインフラ資産)の更新費用
 上で、公共建築物とインフラ資産の計画改訂前後の更新費用の見通しをみてきましたが、ここで両者を合わせた更新費用をみてみましょう。
 
 市は、計画の改定前、公共施設等を維持するための更新費用の総額は、今後 30 年間で、1359.3 億円となり、過去の平均更新費用※5 の 1.39 倍である 45.3 億円の経費が 1 年間で必要になると推計し、また、1 年当たりの更新費用は、過去の平均更新費用に対して 12.7 億円の増大を見込んでいました。 
 改訂後は、今後 30 年間に必要とされる更新費用の総額は、1097.8 億円で、1 年当たり 36.6 億円の経費が必要と推計し、単純更新と比較した場合には、総額で 262億円、1 年当たり 8.7 億円の縮減を図ることができるとしています。また、1 年当たりの更新費用は、過去の平均更新費用の 1.12 倍であり、1 年当たり 4 億円の増大を見込んでいます。
 計画の改訂により、長期的な財政負担の削減が図られたと考えます。
それでも、一年あたりの経費は、1.12倍かかるとの計算です。過疎地域で生じているように、中長期的には、公共施設の縮小も課題になることも見通しておく必要があると考えます。
 下は、改訂前後の費用の推移を表したグラフです。

市HPより



 


 

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