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潔く終わった期間限定の青春

大学生の頃、よくSとHとつるんでいた。
バイト先で出会った男子2人。
性別は違うけれど気が合った。
そして3人とも金欠だった。

金欠大学生3人は「無名のお茶」をよく買っていた。
本当は綾鷹とか生茶とか買いたいのにお金がないから知らないメーカーの安いお茶を買っていた。それを「無名のお茶」と名付けてお金がないからじゃなく、敢えて買っている感を出していた。

金欠によってインドアになってしまった3人は、会ってもただ話しているだけ。バイトの愚痴を言ったり、頭を使わない会話ばかりしてバカみたいに笑っていた。

バイト終わりに3人で食べたラーメンも、コンビニ飯も何もかも最高だった。
誰かがインフルエンザになったら金欠なのにお見舞いにケンタッキーを買うノリが3人の中で流行ったり、Hの誕生日にはサーティワンのアイスケーキを割り勘で買った。
海やディズニーランドに行くといったわかりやすい青春はできなかった。だけど3人で過ごした日々はわたしにとって特別だった。
これが青春なんだなって思ったしこれからもずっと続くと思っていた。

だけどあっけなく3人の関係は終わる。
大学を卒業して住む場所がバラバラになった。
わたしは就職で県外に出て、Sは大学院進学のため東北へ、Hは留年したからそのままの場所でとどまった。
別れの日、「また会おう」とは誰も言わなかった。
何となく分かっていた。期間限定の関係だって。

別れて6年。
今2人はどうしているんだろうって思うときがある。
噂によればSは結婚したらしい。
Hのことはよく分からない。
また再会したらあの頃みたいに頭の使わない会話で笑えるのかな。
みんなそれぞれの道に進んでいるからもう話合わなくなっちゃったかな。
大学卒業後会ってないから期間限定の青春を特別に感じているのかもしれない。写真も全然撮らなかったから夢だったんじゃないかと思うときがある。

これから3人で会うことはもうないと思う。
だけどもし会えたら「無名のお茶」で乾杯しよう。

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