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「優しさ」でよかった、(藤井風にかけられにいったまほう)

カーナビに映し出されるDVDを観ていれば
あっという間に目的地に着けるのだから
それでいい。

週末のMcDonald'sで
ハッピーセットのおまけのおまけについてきた
リカちゃんかトミカのDVD。

あれとか流してくれたらおとなしくしてるからお願い。
再生してよ。

しつこく懇願する姉弟(6歳と9歳)。


知ってる。


そうしておけばふたりの間の凪がちょっとは長く続くこと。


だけどね…


ハンドルを握っているのはわたしだから

できればラジオとか好きな音楽を流しながら
あるいはそれぞれ思い思いにうたいながら
窓の外の景色を見送るのがすてき、

と思うわたしだから

こちらから求めたわけでもない映像刺激をそばに感じること
それにすらひどくつかれるわたしだから

「あー信号やーごめんむりー」

とかいいながら8割方回避して今に至る。



ほんで、ないならないで、楽しめることはある。

対向車線を見て。

「今から10台目の車、何色でしょうか!
はいおかあさん白ー!1.2...」

「えー!早いよ!黒!いややっぱり白!」「トラック!」

「今からくる車のナンバー全部足して答え出してー!
はい、3+?2+?..」

「わー!だから早いって!」「むりー」

「あ、あの雲、ふかふか。パンみたい!」
「ちがうよ、くじらだよ」

「ほんとだ…あー、りすもいるー。どこでしょう?」

その日は母子3人の意見が一致。
(夫は酔い止め舐めながら本を読んでいた)
藤井風のalbum(HEHN)を流すことに決まり
3人で全力の"何なんw"を演ったあと、

弟の提案により、姉弟はお決まりのしりとりをはじめた。


いつものことだが
そこまで乗り気ではなかった姉がすぐにふざけ始め

いつものことだが
気を悪くした弟がやめろというのに聞いてもらえず

いつものことだが
弟は反射的に姉に向かってパンチを繰り出し

いつものことだが
姉が泣いた。


「いたいー お腹と顔パンチされたあ」

黙っていた夫が振り返り弟を強い口調で叱る

姉にも
「嫌がってたのにしつこくやめなかったのもよくない!」

わたしも口を挟む。

車内の空気は一気に険悪に。

そんなタイミングでこの曲のイントロが始まった。

(この空気よ)

黙っているとおもむろに弟が声を張りあげた。

「いまなにをーみてーいた、あなたのゆーめをーみた、、」

(歌えるんや)


そしてこの世をまだたった6年分しか知らないはずの彼は

※ おそらく「感情どこいったんやねん」(byブラマヨ小杉)な表情のまま

この曲を見事最後まで歌い上げたのだった。


そしてほどなくして。

覚悟を決めたように
低いトーンで声を絞り出しながら


「○○ちゃん。ごめんなさい。」


(え、謝った?)


そこからしばらくの間あって



「わたしこそ、ごめんなさい。」



…すごい。すごいすごい。「いつも」を超えてきたやん。


その後車を降りたあと駐車場で姉がわたしにこっそり


「風くんってすごいね。

△△はさ、やさしさをうたったあと、あやまったよね。

やさしいきもちになったからだよね。

まほうみたいだね」


ちいさな弟が

風くんの歌の力を借りてしぼりだした「優しさ」を

ちゃんと感じて受け取れる、あなたも優しいよ。



そんな「優しさ」にこころ震えた夜なのでした。


風くん、ふたりにすてきなまほうをありがとう。


今日のこのほんわりとした気持ちを抱えたまま

すぐにLAATで会えることがとてもうれしい。

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