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報連相は会社を滅ぼす

書きたいものいや書かなくてはならないものがずっとあって先ほどもタイトルを書いてみたんだが中々書き始められない。
結構な長さになることを覚悟しなくてはならないので考えただけでしんどくなるからだ。

ええい!書き始めてしまえ!

タイトルは「報連相は会社を滅ぼす」。
【報告・連絡・相談】は会社員のやるべきものと言われています。
でもそれが『会社が変わるべき時』または『会社がイノベーションを必要としているとき』には阻害するのだということです。

このことに気がついたのはこれまでに何度も「電波少年って今はコンプライアンスが厳しいから無理ですよねえ」と言われたことから。
最初は「そうですねえ」と答えていたけど「アレ?そうかな?」とあるとき思った。そうではない。コンプライアンスも何も「上司に何も言わずに電波少年作っていた」んだった。そして「報告・連絡・相談をしなかったから電波少年はできたのだ」と思い至ったのだ。

テレビ番組って生産者と消費者が極めて近いところにいて通常の商品の流通と違う特殊事情がある。生放送だと「今喋ったこと」がそのまま視聴者に即時届けられる。産地直送リアルタイムである。ビデオでも作って放送システムに持ち込めば放送時間に視聴者に届けられる。90年代はプレビュー(下見)というのが義務ではなかったから電波少年は誰のチェックも受けずに放送していた。さらに当時僕はディレクターだったんだがプロデューサーにも見せずに放送していたのだ。
最初は違った。でもある時(と言うよりスタートしてすぐ)「首相官邸にアポなしで行く」と言う企画を思いつきプロデューサーに相談した。プロデューサーは「エ?」とかなり当惑したが「土屋がどうしてもやってみたいならやってみればいい。何かあったら責任は取る」と言ってくれた。しかしプロデューサーは聞いてしまったからには仕方なくそのことをチーフプロデューサーに報告した。「土屋がこう言うことをやろうとしています。何かあったら僕が責任は取りますからやらせてください」チーフプロデューサーはプロデューサーがそこまで言うならと「わかった」と答えた。しかしチーフプロデューサーは聞いてしまったからには仕方なく制作局次長に報告した。「土屋がこう言うことをやろうとしています。プロデューサーはやらせたいと言っています。僕もそれは認めたいと思います」局次長はチーフプロデューサーがそこまで言うなら仕方なかろうと「わかった」と答えた。しかし局次長は聞いてしまったからには仕方なく局長に報告した。「土屋がこう言うことをやろうとしています(以下略)」そこで局長がこう言った。「そんな前例がないことをやって何か起きたらどうするんだ!やめといた方がいい」この「やめといた方がいい」が今度は局長→局次長→チーフプロデューサー→プロデューサー→土屋に「やめとけと上が言っている」と降りてきた。その頃には「首相官邸アポなしロケ」は終わっていてとても面白く撮れていた。それは強行突破という非合法ロケではなくカメラは外の公道上から、まっちゃんは秘書官に会えて「アポイントのない人は首相に会うことはできません」という穏やかなもの。でもいやに緊張感もあって面白かった。しかし「上がやめとけ」と言ったものを放送するわけにいかない。そのビデオは泣く泣くお蔵入りした。もう一度言うがそのロケビデオは何の問題も起こしていない。首相官邸からも放送したとしても何のクレームも入らないだろう。極めて紳士的に「会ってもらえませんか?」と尋ねていき「アポイントないと会えませんよ」と言われて大人しく帰ってきているものだからだ。でもそんなことをお笑いタレントがしていること、そして両方とも初めてのことで対応に困り戸惑っている様がいやに可笑しい。でも「上がやめとけ」と一度言ったものは放送することができない。

このことから僕はプロデューサーに報連相をやめた。言うと迷惑が掛かると思った。万が一何か問題が起きた時にプロデューサーは「監督不行き届きだ」とは言われるだろうが、言ったらその報告が上まで行ってどこかで「やめといた方がいいんじゃないか?」となることが分かったからだ。
だから「大臣の椅子に座りたい!」と霞ヶ関を駆け回り、果ては「アラファト議長とデュエットしたい!」とパレスチナまで行ってしまうようになるのだ。もし事前に「アラファト議長とデュエットしようとパレスチナまで行こうと思うんですが行っていいですか?」と会社の報連相ラインに載せたら「あ〜行ってらっしゃい」となっただろうか?必ず誰かが「やめといた方がいいんじゃないか?」と言うのは明らかだ。つまり電波少年はコンプライアンスが厳しくなったから今できなくなったのではない。報連相をしなくてはならないと作り手が思っているからできなくなったのだ。「無名芸人を香港からロンドンまでヒッチハイクで行かせようと思うんですがいいでしょうか?」「芸人を裸にして懸賞だけで生活出来るか部屋に閉じ込める企画をやろうと思うんですが」今考えてもわかる。必ず会社のどこかで「やめといた方がいいんじゃないか」と言う人は出てきて企画は停まっていた。ちなみに「誰にも相談しない」で電波少年を作ることになって僕は非常に慎重になった。本当にできるのか?リスクはどこにあるのか?万が一の展開になったらどう対応するか?でもその基本には「この電波少年をどうしても面白くしたい」があったから「どうやったらできるのか?」を真剣に考えた。しかし現場から遠くになればなるほど『愛情』ではなくて『面倒』が出てきて「やめといた方がいいんじゃない」になる確率が高くなる。
このことは日本テレビだけじゃなくどこの会社にも当てはまるんじゃないかと思ったのがこの「報連相は会社を滅ぼす」の意味なのです。


電波少年はイノベイティブな番組だと言われる。それまでのテレビの常識をいくつも覆して新しいテレビを作ったと。その手法ややり方は今のテレビにもたくさん残っていることは認めてもらえるだろう。そしてそれがテレビを延命させてきたとも言えるだろう。つまりイノベーションを起こすことはその産業を発展・持続させる唯一の方法であることは間違い無いのだ。だから日本中いや世界中の会社が「イノベーションを起こさなくては」と今言っている。
しかし報連相が著しくそのイノベーションを阻害する要因になるのだと言うことを意識しなくてはならない。

最近ある人に聞いたこのことも同じイノベーションを組織が潰した例だと思う。ある家電メーカーの若手社員が20年以上も前に自動掃除機を発案してプロトタイプを作った。奥さんが買い物に行っている間に部屋の掃除をしてくれるロボット掃除機だ。しかしその全自動掃除機は会社の上まで行って取締役会で否決された。その理由は「もし2階で掃除機が動いていて何かの拍子に階段から落ちて万が一子供にぶつかったら誰が責任を取るのだ」だったそうだ。確かにその可能性はあるだろう。でもそうならない装置をつけても一度「万が一」と言ったその取締役は「もしその装置が壊れたら」と言って譲らず結果その商品は世の中に出なかった。そして言うまでもなく何年後に海外からiRobotとして発売され世界中で大ヒットし現在その没にしたメーカーも追随商品として販売しているが当然シェアは取れていない。

イノベーションとはそう言うことだ。それまでの常識に囚われている経験があればあるほどイノベーションを認めようともしないしそれを阻害する。そしてその経験があるのは「会社の上の人」である。
変わらなくていい時代ならそれで問題ない。しかしテレビ局だけでなくあらゆる業種でパラダイムシフトが起きている、起こさなくてはならない時代に「経験」はイノベーションを阻害する。
経験に学ぶのは愚者であり歴史に学ぶのが賢者である。個人の成功体験に基づいた判断をするのではなく歴史全体を俯瞰で見て判断をすることが必要なのだ。
そうやって例えばテレビ業界を見ると「こんなものテレビじゃないと言われるものが次のテレビだった」と言うのが歴史が指し示す真実だ。欽ちゃん然りドリフ然りひょうきん族、元気が出るテレビ、北の国から、トレンディドラマ、ザ・ベストテン。それまでにテレビの常識を打ち破りテレビでイノベーションを起こし続けたから日本では地上波テレビが世界の中でも異常に発達したと言えるのだ。それはテレビ史の中の多くのテレビマンたちがクリエイティブティを発揮しイノベーションを起こし続けてきた結果なのだ。

会社における生産性が世界の中で日本は著しく低いと言うことも明らかになっている。これの要因の一つも報連相であろう。社内での「丁寧な作業」は圧倒的に肯定されている。しかしこれがスピードと生産性を著しく下げていることも意識しなくてはならない。そしてそのスピードが落ちると言うことは途中でそのプランが「腐る」と言うことだ。その遅さの中で削り取られなくなってしまうことが日本のいろんな会社の中で起きていることだ。多分何年かサラリーマンを経験したものなら何度も見ていることだと思う。イノベーションはその遅さによって消滅してしまうのだ。

さてこの「報連相は会社を滅ぼす」ということで「報連相を廃止する!」としてみたと考えてみよう。実験としては面白いしやってみたいことだが中々そこまで振り切ることができる会社がないことも容易に想像できる。でも新規事業部門では少なくともそうするとしたらどうだろうか。新規事業案件はできるだけ決定ラインを下に下げる。何百万か何十億か会社によってその規模は違うだろうが取締役会はその議論をしないで承認だけをするようにする。なるべく現場なるべく若い人間に決定権を与え「経験」のある上の人は口を出さない。そして新規事業なんてスタートアップと同じなのだから「一勝九敗」が当たり前だと覚悟する。

または僕が日本テレビの中で途中からそうであったように「あいつは特別。あいつは勝手にやっていい」と言う人間を何人か認定してしまう。僕は当時のトップからそんなふうに認定されていたと思う。例えて「殺しのライセンス」。ジェームズ・ボンドが女王陛下からもらっていたと言うアレである。こいつはイノベーションを起こす!人間と見込んだらかなりの自由度を与える。するとそいつはその意気に感じて死ぬほど頑張る。そして電波少年だけじゃなく「ウリナリ!」や「雷波少年」を作ったりするのだ。

イノベーションがどの業界にもどの会社にも必要な時代。
でも決定ラインがピラミッド型のままだとそれは起きない。
これまでの経験と報連相はイノベーションの出現を阻害するのだ。

あ〜結局書いてしまった。頑張った!疲れた!

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ありがとうございます!
昔「電波少年」とか「ウリナリ!」を作っていました。2019年ライブイベント『NO BORDER』企画演出、一般社団法人1964TOKYO VR代表理事、映画『We Love Television?』監督、2021年「電波少年W」企画演出(WOWOWでノンスクランブル無料放送)